みやビズ

2018年6月23日(土)
侃侃諤諤

わが社の成長戦略2(下)/黒木本店社長・黒木敏之さん

2014/08/22

伝統を守り、革新を続ける


 “幻の焼酎”の元祖として全国的な人気を誇る「百年の孤独」をはじめ、麦焼酎「中々」、芋焼酎「山ねこ」などの銘品を世に出した黒木本店(高鍋町)。土地と人と水が醸す地域文化としての焼酎造りを守りながら、既存製品のブラッシュアップ(磨き上げ)など革新のための努力を重ね続ける。人口減少、若者のアルコール離れの傾向がみられる現状にあって、これからの展望をどう描くのか。黒木敏之社長に聞いた。
(聞き手・経済部次長 鬼束功一)


 -1885(明治18)年の創業当時から手づくりの伝統を守っていますが、これまでに会社にとってのターニングポイントは。

「地方文化としての焼酎造りを続けていきたい」と話す黒木社長

「地方文化としての焼酎造りを続けていきたい」と話す黒木社長

 メーカーはヒット商品で変わります。業績が伸び、会社としてのビジョンが明確化していきます。私が4代目社長に就任した後、1985年に百年の孤独を発売してから弊社は大きく変わりました。樫樽(かしだる)貯蔵、高いアルコール度数、ネーミング、パッケージ、売り方など、新しい提案の中で個性をきちんと主張できました。焼酎ブームが終わった後もジワジワと(売り上げが)伸び、発売から30年が経過しますが、おかげさまでロングランとなっています。

 -百年の孤独のヒットでとどまらず、中々、㐂六など次々と新たな商品を発売しました。

 百年の孤独は食後に楽しむもので、焼酎としては特殊なタイプです。ですから、レギュラー商品としての定番焼酎も育てていきたいという思いがあり、中々や㐂六(きろく)という焼酎を全国の市場へ出していきました。売り上げの80パーセントを百年の孤独が占める時期もありましたが、現在は、45パーセントが中々、30パーセントが㐂六、百年の孤独は10パーセントくらい。百年の孤独の生産量は変えずに新しい焼酎を育ててきた結果です。

 続いて、ワインでいえばセカンドラベルという位置付けになる尾鈴山蒸留所を造って、さらに違う個性を持つ焼酎を提案してきました。それが山ねこや米焼酎「山翡翠(やませみ)」などです。同蒸留所は98年に開所して16年がたちました。ビジョンは「人と大地が一体となった生き方とものづくり」。土づくりからリサイクルまで、自然と一体となった焼酎造りに取り組んでいます。

 清酒は国内の原料を使って造られます。焼酎の場合、麦はオーストラリア、ソバは中国、コメはタイ米を使うなど、海外産の原料に頼っている部分もあります。世界のお酒は必ず、その土地の人と土、水で造られています。原点に戻って、焼酎も地域の原料、人、水で造らなければ、世界の蒸留酒として打って出ることはできません。

高鍋町の中心部にある黒木本店の本社事務所。落ち着いた雰囲気が社風にも通じる

高鍋町の中心部にある黒木本店の本社事務所。落ち着いた雰囲気が社風にも通じる

 -海外展開に対する考え方は。

 百年の孤独、中々、㐂六、山ねこを香港やシンガポール、韓国、米国、カナダ、イギリス、フランスへ輸出しています。売り上げベースは1000万円ほどで、まだまだこれからです。和食の認知度が世界的に高まっていますが、すしや懐石料理にとどまり、焼酎と合わせやすい一般的な料理は知られていません。「地鶏や冷や汁もあるよ」というふうに日本の食文化が幅広く知られるようになると、合わせて焼酎文化も広がっていくと考えます。少子高齢化や若者のアルコール離れで消費の縮小が予想される中、市場を海外に求めていくことは意識しておかなければなりません。


 -これからの焼酎造りについて。

 焼酎ブームは15年周期くらいで巡ってくると考えます。しかし、ブームに流されず、粛々と地方文化としての焼酎を造り続ける姿勢が大事です。「好況良し、不況なお良し」で、景気が悪いときは悪いときなりの工夫をして、どう改善・改革をしていくか。「焼酎一筋」の伝統を守り、量的拡大は追わず「土づくりとリサイクル」を賄える適正規模を維持しつつ、より良い焼酎を造るための革新の努力は続けていきます。海外展開と併せ、原料やアルコール度数を工夫した若者へアピールするための新商品も考案中です。焼酎業界として、「こんな食べ物に合う」「健康にいい」などの焼酎の魅力を丁寧に消費者へ提案することも大切なことではないでしょうか。
         
(宮崎経済同友会会員)


【プロフィル】くろき・としゆき 1977(昭和52)年、立教大経済学部卒業後、ソニープラザ入社。80(同55)年4月、黒木本店入社。94年から現職。尾鈴山蒸留所、農業生産法人「甦る大地の会」の代表も兼任。高鍋町観光協会会長。高鍋町出身。53(同28)年10月生まれの60歳。

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