みやビズ

2018年5月21日(月)
上々企業

英光(宮崎市)

2017/02/07

普段の防災への備えで「イツデモ」安心な社会へ


 大規模な地震災害が発生してライフラインが寸断してしまった場合、公的支援が浸透するまでの間、家族の安全や健康を維持するために何を準備する必要があるだろうか。阪神大震災や東日本大震災など大規模災害の発生をきっかけに社会の備えに対する関心は高まるが、実際に非常持ち出し袋などを用意している家庭は決して多くない。

防災「ITUDEMO」を開始した木村社長

防災「ITUDEMO」を開始した木村社長

 創業50年を迎える金物卸業者の英光(宮崎市、木村英之社長)は、2016年から防災グッズの取り扱いを始めた。以前は教育関連の仕事に携わり、事業承継のために帰郷して7年がたつ2代目の木村社長は「最初は取扱商品を覚えるだけで必死だった」。しかし、人のために役立つ仕事をしようと思い続けていたところ、新事業展開へのきっかけが訪れる。16年4月に発生した熊本地震だ。

 親戚が被災したほか、取引先も損害を被った。自らも救援物資を送り、被災者や物資を送った側の双方から話を聞く中で、被災時に本当に必要なものは何かを深く知ることとなった。飲料水は1人1日3リットルが目安で、保存期間が長く火を通さないでも食べられる食品も必要。ほかにも衣料品、停電時用グッズ、医薬品など多岐にわたる。取引先の社長が言った「おいしいものを食べないと元気が出ない」という言葉にも共感した。一方で前段に書いたように、いざというときを想定した備えはなかなか浸透していない。そこで同社は、普段の生活で防災につながる仕掛けを行い、準備することをコンセプトとした防災事業「ITUDEMO」に着手した。

 普段の備えを無理なくできるよう、加工食品60種類、防災グッズ100種類を超えるラインナップをそろえ、家庭ごとの嗜好(しこう)や生活スタイルに合った備えができるよう工夫。品ぞろえには専門家や経験者の知識を生かした。16年11、12月に宮崎市の若草通りで開かれた街市で、今年1月は同市のみやざき産業祭(宮崎商工会議所青年部主催)で防災関連商品を展示販売したところ、訪れた人から「宮崎にもこんなお店があるのですね。頑張ってください」と勇気をもらったという。今後もいろいろな場所へ出向き、事業のPRと防災の啓蒙(けいもう)活動に力を入れる予定だ。

 本業の金物販売で扱う商品にも防災に役立つものを多数取りそろえており、建物の安全性に関するアドバイスも積極的に行っている。個人との地道な対話を重要視した販売スタイルを貫くことで、現在、自治体や地域公民館などから問い合わせが増えている。

 今、計画を進めるのが、車に載せておけば“いざというとき”に役立つ多機能グッズのセット販売。本県は車の移動が多く、ニーズは十分あると考える。賞味期限に限りがある保存食品を有効活用するため、ゆくゆくは保存食品を食べることができる「防災カフェ」のオープンも構想に描く。

 全国的にも防災専門店は数少なく、「ITUDEMO」が収益事業として軌道に乗るには時間がかかるかもしれない。しかし、大災害はいつ発生するか分からず、備えがなければ、独り暮らしの高齢者や小さな子供がいる家庭をはじめ多くの人々が大変な苦労を強いられることになる。木村社長は「いつもの生活から備えが必要ということを、地味でもコツコツと訴えかけていきたい。それがきっと多くの方々の役に立つことになる」と話している。


英光株式会社
住所:宮崎市大淀2-6-22
電話:0985(51)7403
http://www.eiko-miyazaki.com/
 学生時代は京都で過ごした木村社長。阪神・淡路大震災では学生ボランティアとして災害復旧に参加したのが、防災関連を本格的に開始しようとした原点だという。

 金物を長年取り扱ってきた同社にとって、食品販売は初めての経験で「苦労も多かった」と語る。「地域やお得意さまに育てられてきた当社。次は恩返しの番」と防災関連事業の本格化に取り組む木村社長は、穏やかな表情で将来ビジョンを語っていたのが印象的だった。
(帝国データバンク宮崎支店・小倉祐一)

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