みやビズ

2019年7月21日(日)
上々企業

川崎建具店(小林市)

2014/10/07
インターネット販売で人気を集めているままごと用木製キッチン

どん底からの復活

インターネット販売で人気を集めているままごと用木製キッチン

インターネット販売で人気を集めているままごと用木製キッチン

 「もう工場(こうば)をたたまなくてはならないかも」。1977(昭和52)年から続いて来た川崎建具店(小林市、川崎治行代表)は事業継続を断念しつつあった。同社は住宅用木製ドアや、障子枠などを中心に製造。家族3人が生活するには十分な売り上げを確保していた。しかし、安価な海外製の流入や、家屋スタイルの変化による障子の利用減、長引く景気低迷によって、売上高は激減。各方面から支援を得て、一時しのぎはできた。それでも月に受注がゼロのときもあった。「今後が不安だ」と息子の賢広さんは工場運営に苦慮していた。

 賢広さんは小林高校の同級生だった杉水流哲也さんに相談した。杉水流さんはインターネットでオフィス用品などを販売して成功を収めている「ホビナビ」の運営会社、ジーストリーム(福岡市)の社長。「木製品を作ったら、インターネットで販売を手伝うよ」と親友から心強い言葉をもらい、ままごと用木製キッチンの製造に乗り出した。

 同業者からは取り組みに対して批判的な意見が多く、不安がよぎった。しかし後戻りはできない。これまで培った技術を背景に、子ども用とはいえ本格的な木製キッチンを製造した。2008年10月にホビナビで販売開始。ただ手作りであるため、製造台数は限られていた。

 程なくして杉水流社長より電話があった。「おめでとう、売れたよ」。飛び上がるほどうれしかったと賢広さんは振り返る。第1号の商品には自筆のお礼の手紙を添えた。12月にはクリスマスプレゼント用として注文が殺到。製造が追いつかず、断ったケースもあった。

製造を担当する川崎賢広さん。完全手作りの丁寧な仕事が高い評価を得ている

製造を担当する川崎賢広さん。完全手作りの丁寧な仕事が高い評価を得ている

 当初は材料にキリを使っていた。強度が足りず、変色することから、11年からは抗菌作用も備えたドイツ産モミを使うようになった。安全に配慮して、手作業で角をとり、子どもの喜ぶ顔を想像しながら製造する。「ちょうつがいは子どもの激しい開け閉めで破損する」と聞けば、ねじ式の開閉ドアを付けた。「下開きドアは足に落ちて危険」と聞けば、横開きドアに変更するなど、消費者からの声を反映し、改良を重ねている。

 色やデザインなどを変えた「ままごと用木製キッチン」を取りそろえ、販売価格は1万7496〜3万3372円と比較的高額商品ながら、13年は年間700台以上の販売実績を持つまでとなった。

 完全手作り、日本製である安心感、商品の良さから「楽天市場」4万店舗を超える店舗の中で「SHOP OF THE YEAR 2013」を受賞することができた。

 製造が追いつかず、外注活用するほか従業員を雇用するようになった。販売は好調であるものの、工場が手狭となったことや、保管倉庫が足りないこと、クリスマスシーズンに受注が偏っていること、ままごと用木製キッチンの1アイテムだけで、続くヒット商品が生まれていないなど、課題は山積みだ。

 ターゲットは主に幼児(女の子)が多いため、新商品を開発していく計画。なお、インターネット通販は「ホビナビ」だけが販売チャンネルであるため、自社オリジナルのウエッブサイト構築も予定している。

 賢広さんは「メディア等で紹介されるが、どこで買えるのか問い合わせが多い。小林市内では雑貨店で取り扱ってもらえるようになった。新商品開発と同時に販売戦略も練り直さなければならない」と今後の展望を語る。

 小林市郊外にある小さな工場がアイデアと友情によって、どん底から復活した。賢広さんの若さと情熱、ポリシーを持った自社ブランド展開が今後楽しみだ。

 
設立:1977年1月
本社:小林市細野4080-5
TEL:0984(23)4739
 ままごと用木製キッチンは一人で開始したため、製造から梱包(こんぽう)作業まで行うと、睡眠時間が3時間を切るときもあったという。明確な商品コンセプトを持ち、販売のプロとタッグを組んだことなどが奏功した例だ。楽天市場でランキング1位を何度も取るには大変な努力があったと聞く。木製キッチンは丈夫なため、子から孫へと引き継ぐことも可能であろう。家族の思い出づくりに一役買っている商品を作っている賢広さんの目は輝いていた。
(帝国データバンク宮崎支店・小倉祐一)

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