みやビズ

2018年4月23日(月)
お勧めビジネス書&最新ランキング

赤尾誠二さん(都農ワイン工場長) 麻井宇介著「ワインづくりの思想 銘醸地神話を超えて」(醸造産業新聞社)

2017/02/22
 ワインの表示が2018年10月から見直され、国産ブドウ100パーセントを使って国内で製造された果実酒だけ「日本ワイン」と表記できるようになる。これに向けて国産ワインについて見つめ直す動きが醸造家や現場に広まっている。

 著者の麻井氏は本名浅井昭吾(2002年に71歳で死去)。国産ワイン醸造の草分け的な存在として知られている。ワインのインポーター(輸入家)や評論家による著書は多いが、醸造家の著書は非常に珍しい。さらに亡くなる1年前に本書が刊行されており遺作に当たり、国内の醸造家たちのバイブル的存在だ。

志と情熱で宿命を打破する


あかお・せいじ 1974(昭和49)年12月生。高鍋農業高卒。都農町職員を経て都農ワインに入社。2016年から現職。趣味は磯釣り。

あかお・せいじ 1974(昭和49)年12月生。高鍋農業高卒。都農町職員を経て都農ワインに入社。2016年から現職。趣味は磯釣り。

ワインづくりの思想 銘醸地神話を超えて

著 者:麻井宇介
出版社:醸造産業新聞社

e-honで購入

ご注文は「りーぶる金海堂」で

 ワインの表示が2018年10月から見直され、国産ブドウ100パーセントを使って国内で製造された果実酒だけ「日本ワイン」と表記できるようになる。これに向けて国産ワインについて見つめ直す動きが醸造家や現場に広まっている。

 著者の麻井氏は本名浅井昭吾(2002年に71歳で死去)。国産ワイン醸造の草分け的な存在として知られている。ワインのインポーター(輸入家)や評論家による著書は多いが、醸造家の著書は非常に珍しい。さらに亡くなる1年前に本書が刊行されており遺作に当たり、国内の醸造家たちのバイブル的存在だ。

 本書では評価の高いワインが醸造される産地を「銘醸地」と位置づけている。代表的な産地はフランスのボルドーやブルゴーニュ。同時にニュージーランドやチリのように歴史の浅い産地も銘醸地としている。つまり銘醸地の共通点は、ワイン醸造に適したブドウが栽培される土壌や気候といった風土を備えた場所という定義になる。

 翻って日本はどうだろう。日本の風土はブドウ栽培にはほとんど適していない。どうあがいても銘醸地たり得ない。だが、著者は「銘醸地であっても、おいしいワインがすぐに醸造されるわけではない」とも述べている。人の志や情熱があってこそ、銘醸地で銘ワインができたのだとしている。ブドウを収穫するタイミングの見極めなど人が介在しなければ最高のワインはできないとも。

 都農ワインはどうだろうと考えさせられる。歴史や風土で勝る山梨や長野と比べて、雨が多く、収穫時期には台風が襲来する。土壌だってブドウ作りに適しておらず、銘醸地になるわけがない。しかし、本書は「チャレンジしなければ何も終わらない」「宿命的な風土を打破する志を持て」と励ましてくれる。

 志や情熱はフランスや米国カリフォルニアなどに負けないと自負している。著者は「“らしさ”を確立する努力を怠ってはいけない」としている。都農ワインらしさを掘り下げることや地元の人たちがおいしいと思ってくれるワインを醸造することが私にとっての高い志だ。本書は「あきらめなければ終わらない」という原点に回帰させてくれる。

アクセスランキング

ピックアップ