みやビズ

2020年2月25日(火)
インサイド

県内住宅市況(上)戸建て編

2013/02/15

それぞれの強みを生かす住宅業者


 新築、マンション、中古住宅など、ライフスタイルやライフステージに合わせてさまざまな選択肢がある住宅。利便性の高い中心市街地ではマンションの建設が相次ぎ、消費税増税をにらんだ駆け込み需要への期待で、住宅市場はにわかに活気づく。一方、少子高齢化や長引く経済の停滞は業界全体に影響を及ぼしており、各事業者はそれぞれの強みを生かし生き残りを図る。2回にわたって、住宅市場の今をリポートする。

ブランディングに注力する注文住宅

アイ・ホームがオープンした「快護支援モデルハウス」。健康維持増進を目指す同社の新しい提案型住宅だ

アイ・ホームがオープンした「快護支援モデルハウス」。健康維持増進を目指す同社の新しい提案型住宅だ

 「客の選択肢に入るためには、家を造る側も、住まい方に関する提案を行う時代にきている」。注文住宅施工のアイ・ホーム(宮崎市佐土原町)の田村寛治社長はこう強調する。同社が9日、同町下田島にオープンした「快護支援モデルハウス」も新しい提案型住宅の一つで、“在宅介護を可能にする家”がコンセプトだ。段差を極力なくした室内や、車いすも十分に通れる幅のトイレや通路など、随所に介護を想定した工夫が見られる。

 年間約110棟の住宅を手掛ける同社。しかし、メーカー間の競争は激しく、「特に中間層が低価格住宅に流れている」と田村社長。提案型住宅は他社と差別化を図る手段の一つでもあり、競争に勝ち抜くために同社が注力するのが徹底したブランディングだ。スタンダード&プアーズなどが開発した国内の中小企業向け格付けの取得もその一環で、外部機関からの評価を情報発信に活用。家の性能評価につなげようと、家の室温や湿度、二酸化炭素濃度などをタブレット端末で見られる独自システムも開発した。

 「景気低迷で賃金低下が続く中、客の目は坪単価やデザインに行きがち。ただ、注文住宅メーカーとしては性能や品質面をアピールしていきたい」。

デフレ競争にスピード感で対応

マエムラが宮崎市大島町で分譲を始めた「パティオニュータウン大島」の建設現場。低価格に加え、工期の短さも売り

マエムラが宮崎市大島町で分譲を始めた「パティオニュータウン大島」の建設現場。低価格に加え、工期の短さも売り

 注文住宅に比べて工期が短く、見て入って確かめることができるため、注文住宅と人気を二分する建売住宅。マエムラ(宮崎市、前村幸夫社長)は2012年、同市大島町の分譲地「パティオニュータウン大島」(全64区画)の第1期分譲をスタートした。宮崎駅から約4キロという立地で、売価(税込み)は1980万円~2280万円という低価格が売りの一つ。前村社長は「現在は、予約を含めて3分の1ほどが売れており、売れ行きは悪くない」と状況を語る。

 県内で年間約150区画の建売住宅を販売する同社。一方、前村社長は「競争は値引き合戦の様相となっており、まさにデフレ下の競争」と現状を吐露する。実際に住宅購入層の購入単価は10年前と比較し500万円近く下がってきているといい、「建売住宅は利幅が少ない分、スピード感をもって事業を行う必要がある」と強調。現在、パティオニュータウン大島のほかに、パティオニュータウン生目台(全45区画)でも分譲地の提供をスタート。今後も宮崎市清武町で分譲地を手掛ける予定で、数とスピードに力を入れる構えだ。

 
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 各メーカーが創意工夫し、顧客の取り込みを図る戸建て住宅。国交省などのまとめを基に、県内のここ20年の新設住宅着工戸数を見ると、89年度の約1万6500戸をピークに減少を続け、09年度には6000戸を割り込んだ。ただ、11年度は住宅エコポイント制度など各種施策効果もあり、約6290戸まで回復。12年も12月時点では前年同期比9.4%増となる約5370戸となり、一部で持ち直しの動きが見られている。

 田村社長は「宮崎市でマンションが建設ラッシュを迎えていることや、地価の低調な都城市で新築着工が増えていることが影響しているのでは」と推察する。今後についても、消費税増税をにらんだ駆け込み需要による特需が予想されるものの、業界では極端の増加はないとする見方も少なくない。

中古住宅の流通も活発化

大興不動産が社内に設けたリフォームモデルルーム。中古物件を見る前にリフォーム後のイメージを持ってもらう狙いもある

大興不動産が社内に設けたリフォームモデルルーム。中古物件を見る前にリフォーム後のイメージを持ってもらう狙いもある

 若年層の所得低迷などから注目されるのが中古住宅だ。本県の新築や新築分譲住宅購入の平均価格は約2490万円。対して、中古住宅は約1360万円(08年住生活総合調査)と新築の半分というデータもあり、価格面でアドバンテージを持つ。

 大興不動産(宮崎市、中村忠治社長)は12年5月、社内にリフォームモデルルームをオープンした。同社によると、宮崎市内では年間約1100軒の中古住宅が売買されており、同社は市場の拡大を見据えてモデルルームの開設に踏み切った。需要が特に高いというキッチンやお風呂、トイレなどの水回りを中心に展示しており、同社住宅営業課の濱田大輔次長は「中古住宅のニーズは高まっており、購入した約7割はリフォームをしている」と市場の潜在力を説く。

 実際、12年に同社が取り扱った中古住宅の平均単価は1500万円台。これに300万~350万円のリフォーム工事を合わせて行うのが一般的といい、「ここ数年中古住宅の売買は増加傾向にある。今後は若い世代を中心にリノベーション(大規模な改築)の需要も増えてくるのではないか」と濱田次長。

 中古住宅の価格は下落傾向にあるとの指摘も。常盤産業(宮崎市)の小田原義征社長は「昔は安ければ売れたが、今は安くても売れない」と明かす。小田原社長によると、宮崎市内ではかつての新興住宅地域を中心に中古物件が出るものの、動きは鈍いという。そこで、今後期待されるのは、中古住宅をリフォームした上で販売する“再販”の動き。小田原社長は「立地や建物を見る目が求められるが、宮崎でも今後増えてくるのでは」と予測する。

 再販の動きとともに、近年注目を集めるのがホームインスペクション(住宅診断)だ。住宅診断とは、ホームインスペクター(住宅診断士)と呼ばれる第三者的立場でかつ住宅に精通した専門家が、住宅の劣化状況や欠陥の有無、改修すべき場所や大まかな費用などを見極めた上でアドバイスを行う仕組み。中古住宅の流通を促すことで、自然破壊の防止や消費につなげようと、国も着目しており、県宅地建物取引業協会(会長・前村幸夫マエムラ社長、816社)も、ホームインスペクターの育成準備を進める。前村会長は「中古住宅が売れない理由の一つは、消費者が将来の補修費という不安を抱えているから。この不安を払拭(ふっしょく)して中古住宅市場を活性化させるのも業界としての役割」と強調している。(インサイド取材班・山下仁志)

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マエムラ社長 前村幸夫さん(2012年9月24日)
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県内住宅市場・独自の取り組み光る県内住宅メーカー(2011年11月18日)

[紙面記事]
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