みやビズ

2019年10月17日(木)
インサイド

県トライアル購入事業者認定制度

2012/10/26

新製品の販路拡大を自治体のお墨付きで支援


 中小企業やベンチャー企業の独創的な新製品や技術を、自治体が支援する取り組みが全国で広がっている。本県でも県内の中小企業の開発した製品を県が認定し、試行的に随意契約で購入できる「トライアル購入事業者認定制度」を設けており、これまでにさまざまな企業が認定を受けた。全国の自治体が連携して販路拡大や製品PRを行うネットワークも登場しており、会社の知名度不足や販売実績の弱さなどの課題を克服して、全国に販路を広げる企業も出てきている。

全国の地方自治体で導入

県庁で利用される玄関用のモーブ-マット。トライアル購入事業者認定制度の認定で、全国の自治体などで導入されている(ワールドワイドトレード提供)

県庁で利用される玄関用のモーブ-マット。トライアル購入事業者認定制度の認定で、全国の自治体などで導入されている(ワールドワイドトレード提供)

 貿易商社のワールドワイドトレード(宮崎市、武田博史社長)は2011年3月、県から「トライアル購入事業者認定制度」の認定を受けた。認定を受けたのは、同社が企画・販売する家畜伝染病の防疫を目的とした消毒マット「MOVE(モーブー)マット」。本県で10年に口蹄疫が発生した際、毛布やカーペットなどを消毒用マットに代用していた状況に武田社長が着目して発案した商品だ。

 マットは遮水シート(不織布)製で、道路に素早く取り付けられるようボルトを設置できる穴を施す。現在は玄関、車両用など、用途や大きさによりさまざまなタイプもあるが、商品化した10年には販売実績もなく、武田社長は「畜産関係団体などにアプローチしたものの、なかなか納入につながらなかった。そこで、紹介してもらったのがトライアル制度だった」と明かす。

 本県で07年から始まった制度は、県内に事業所を置く中小企業などが開発した商品を対象に、県や県産業支援財団の職員らで構成する審査会が審査。審査会で認定を受けると、県が最長で3年間は随意契約で購入できるほか、実際に製品を使う県職員らから商品の性能評価や開発アドバイスも受けられる仕組みだ。審査会は年1、2回開かれており、延べ31社の31製品が認定を受けた。県工業支援課は「新製品の場合、販売実績がないとなかなか商談も進まない。県が認定して購入すれば販売実績にもなり、販路拡大にもつながりやすいのでは」と制度の意義を説明する。

 実際に同社も認定を受けてから注文は増えており、大分、熊本県が備蓄資材として購入するなど受注件数も増加。既に県や市町村のほか、これらが運営する公共施設など50カ所超で導入され、累計で約1500枚を納入したという。全国の動物園や空港の検疫施設でも取り入れられるほか、製品を取り扱う販売代理店も現れた。武田社長は「少しずつ認知度も上がって、全国から注文がくるようになった。世の中にない新しいものを作ったなら、まずは制度に申し込んでみてほしい」と同様の悩みを抱える企業に呼びかける。

佐賀県が初めて事業化

 そもそもこのトライアル制度、地方自治体が主導して始まった制度だ。03年に全国で初めて導入した佐賀県。県新産業・基礎科学課によると、「新製品を作っても販売実績がないと門前払いにあう」という企業の声と、「優れた製品を持つが、県からの受注実績の少ないベンチャー企業などへトライアル(試み)発注を行う」とする古川康県知事のマニフェストに応える形で始まったという。その翌年に地方自治法が改正され、随意契約の対象範囲が拡大したことを機に、全国で同様の制度が普及しており、現在は41都道府県で導入されている。

 制度の普及に伴い、自治体間で連携する試みも。佐賀県が音頭を取り、07年に発足した「トライアル発注全国ネットワーク」は、認定を受けた製品や事業を共同でPRする組織。事務局を務める佐賀県によると、本県を含め41都道県が参加しており、「『官公庁への受注を足掛かりに、契約が取れた』、『売り上げが伸びた』という成功事例も出ており、認定を受けた企業同士が連携し新製品も生まれている」(同課)。

販路拡大には売る工夫必要

クリップウェアが手掛ける「留吉」シリーズ。携帯ストラップ用はデザインを一新し、再製品化する予定だ

クリップウェアが手掛ける「留吉」シリーズ。携帯ストラップ用はデザインを一新し、再製品化する予定だ

 ただ販路拡大には、自助努力が必要と指摘する声もある。クリップウェア(旧舞花、宮崎市清武町、小田島潔社長)が商品化した「留吉(とめきち)」は08年、県からトライアル制度の認定を受けた。

 つり下げ名札は邪魔なのでボタンに留めたらどうか-。このアイデアを基に開発した商品はプラスチック製で、ボタンにはめ込むだけというシンプルな構造。両側についたつまみを押せば簡単に取り外せる仕組みで、同年から名札用と携帯ストラップ用の2種類を発売した。多くの企業でニーズがあるはずと期待した商品だったが、店売りでは売れず、最終的に製造中止に。認定だけでは販路拡大の後押しにはならなかったという。

 一方で、自ら顧客を発掘し売り上げを伸ばす商品もあり、服に穴を開けずに名札を装着できる留め具「開かずピンちゃん」はその好例だ。同社によると、開かずピンちゃんは、これまでに市場になかった商品で、バイヤーもなかなか取り扱ってくれなかったという。「展示会出展や問屋への紹介で新製品を売るのは、宝くじに当たるのを期待するようなもの」と話す小田島社長。そこで、学校付近の文具店を1軒1軒回り、無料で商品設置を依頼する飛び込み営業を全国で展開。末端の消費者への売り込みを続けたところ、販売店で人気に火が付き、現在は月に5、6万個を売り上げる同社の主力商品になった。

 開かずピンちゃんのヒットにより、波及効果も生まれている。開かずピンちゃんで取引が始まった大手家電メーカーから、携帯ストラップ用「留吉」をメーカーの販売ネットワークを活用して販売したいという商談も舞い込んでおり、パッケージなどのデザインを一新した商品を再製品化する計画も始まった。小田島社長は「消費者は、全く知らない商品はなかなか手に取らない。新製品はユーザーの口元まで持っていくことが一つの手法で、ものを作るだけでなく売る努力が求められる」と強調している。
(インサイド取材班・山下仁志)

アクセスランキング

ピックアップ