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2019年9月16日(月)
インサイド

国際バルク戦略港湾の志布志港

2011/07/08

船舶大型化に対応し穀物を安定供給


 本県にとっても重要な畜産飼料の供給基地となっている鹿児島県の志布志港が5月、国が重点整備する「国際バルク戦略港湾」に選定された。国は世界的な資源獲得競争の中で、輸送船舶の大型化に対応できる港湾拠点を整備し、国際競争力の強化を狙う。計画では2020年には水深17メートルの岸壁が整備される。穀物の安定供給が畜産経営に直結する本県の関係者らからは、輸送コスト削減を期待する声もある。

国際的な資源獲得競争激化

国際バルク戦略港湾に選定された志布志港の全景=2010年3月(鹿児島県志布志市提供)

国際バルク戦略港湾に選定された志布志港の全景=2010年3月(鹿児島県志布志市提供)

 「バルク」とは、ばら積み貨物を指す。国交省港湾局の調査では、08年の世界の海上荷動き量(約82億トン)のうち、コンテナ貨物の占める割合は16%なのに対し、バルク貨物は84%と高い割合を占める。このバルク貨物で運搬される主要品目が穀物、鉄鉱石、石炭。国は今回、この3品目ごとに国内港湾で輸送拠点となる戦略港湾を選定した。穀物では志布志港を含め釧路(北海道)、鹿島(茨城県)、名古屋(愛知県)、水島(岡山県)の5港。鉄鉱石、石炭を含め全10港が選ばれた。

 国が戦略港湾の重点整備を打ち出した背景には、中国などの新興国の急成長で予想される国際的な資源獲得競争の激化が挙げられる。穀物需給の動向について国交省は「中国の生活水準の向上に伴い食肉の消費量が増加し、飼料穀物としてトウモロコシの需給が逼迫(ひっぱく)する」と指摘する。

 国によると、現在国内に輸入されているトウモロコシは97%(09年)が米国産。ニューオーリンズ港などから積み出し、大半の船がパナマ運河を通過する。そのパナマ運河で現在、拡張工事が進められており、完成すれば積載容量が現行の2倍以上の船舶が航行可能となる。このため、輸送コスト削減を狙う中国、韓国などは大型船の接岸が可能な港湾の整備を加速しているという。

 一方、国内では穀物、鉄鉱石、石炭の主要輸入港の多くが高度成長期に整備され、現行の水深13~14メートルの岸壁では輸送船舶の大型化に対応できないのが実情。懐事情が厳しい国としては戦略港湾を選んで投資を集中し、国際競争にも取り残されないための今回の決定だ。

輸送コスト削減に期待

 穀物のバルク戦略港湾に選定された志布志港には現在、トウモロコシなどを保管するサイロ会社3社、家畜用飼料を製造する飼料会社6社が立地し、九州最大の飼料ターミナルを形成。志布志港のトウモロコシの輸入取扱量は国内港湾で鹿島に続いて2位で、本県を含めた九州全域、沖縄などへ飼料を供給している。

飼料、サイロ工場が並び九州最大の飼料ターミナルが形成されている志布志港

飼料、サイロ工場が並び九州最大の飼料ターミナルが形成されている志布志港

 中でも港へのアクセスの良さなどから、鹿児島県で生産される飼料413万トン(08年)のうち、3分の1強の147万トンが本県に供給されている。志布志港に立地する南日本くみあい飼料(鹿児島市)の志布志工場によると、豚用飼料は本県の県西、県南の5JA向け、牛用飼料は県内全JA向けに製造。日高次徳工場長は「トウモロコシ価格は気象条件や投機筋の影響で変動するが、近年はバイオエタノールなどの原料として使用されるなど高止まりの状態。大型船が入ることでコスト削減につながればいいが」と話す。

 穀物の安定供給は本県畜産を支える重要な柱だ。志布志港で輸入された穀物を原料に製造する飼料のうち年間約15万トンを乳牛や肥育、養豚農家に供給しているJA都城。新森雄吾組合長は「穀物の自給は当面国内では考えられず、輸入に頼るしかない。価格が値上がり傾向にある中で、安定供給のためにも港湾が整備され、大型船が入るようになれば輸送コストが安くなる」と期待する。

船舶大型化は不透明さも

 バルク戦略港湾として最大級の輸送船舶の入港に対応するために、国の方針では20年までに水深17メートルの岸壁を整備する。港湾管理者である鹿児島県は8月までに民間と施設計画や管理運営、費用負担などを示す「国際バルク戦略港湾育成プログラム」を作成予定だ。予算措置について国からは明確な方針は出されていないが、同県港湾空港課は「補助率のかさ上げなどを国に要望していきたい」と港湾整備の推進に期待をかける。

 同県の試算では大型船活用による物流コスト削減額は58億7千万円などと算出されている。だが、トウモロコシなど年間110万トンの飼料用原料を荷揚げする全農サイロ志布志支店の乾敏明支店長はバルク港湾の将来性について慎重な見方を示す。「大量に運んでも、それだけの需要があるか分からない。荷主の動向も流動的で、今後どれほど船舶の大型化が進むか見えていない。具体的な実現性はまだこれからだ」。
(インサイド取材班.高森千絵)

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