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2020年2月24日(月)
インサイド

変化する葬祭ビジネス

2011/06/21

社会に対応し葬儀も小規模化


 少子化や核家族化の進行、地域コミュニティーの希薄化などの影響で、県内でも葬祭ビジネスを取り巻く環境が変化している。これらの社会的要因を背景に、小規模化された「家族葬」など従来とは一線を画すスタイルが登場し、単価引き下げなども進む。県内では今後も老年人口の増加に伴い葬祭場の開設が続き競争激化が予想される中、業者は他者との差別化などで生き残りに懸命だ。

少子高齢化で会葬者減少

エポック・ジャパンが展開している家族葬のファミーユの葬祭場。

エポック・ジャパンが展開している家族葬のファミーユの葬祭場。会葬者は50~60人を想定している

 エポック・ジャパン(東京、高見信光社長)が展開するブランド「家族葬のファミーユ」。「家族を中心に故人に近しい人が集まり、ゆっくり別れを惜しんでもらう」というコンセプトで、小規模ホールの1日1組完全貸し切り制が売りだ。2000年に同市大塚町にオープンしたのを皮切りに、高見社長の父が創業した綜合葬祭みやそう(宮崎市)を吸収合併したこともあり、全国でファミーユ112ホールを展開。県内でも同市内や近郊で街中の利便性の高い場所に12ホールを次々と開設し、今後も増設を見込んでいる。

 ホールの広さは従来の5分の3程度で、小規模のものでは建物面積が約180平方メートル。想定する会葬者数は平均約70人。小ホールの場合は50~60人程度、最多でも約150人としている。価格は40万~150万円の6コースを設定。同社西日本葬祭部の白石哲部長は「少子高齢化で会葬者は年々減り、近年で比べても10~20人は少なくなっている。都市部になればさらにその傾向は強く、1葬儀当たりの会葬者は30~50人程度」と小規模化の現状を説明する。

 小規模化が進んだ背景には、少子高齢化や核家族化などの社会的要因が関係している。具体的には、(1)葬儀を催す親族数そのものの減少(2)収入が少ない高齢者世代が喪主を務める葬儀の増加(3)近所、地域のつながりの希薄化-などがある。時代とともに、故人や親族らを取り巻く環境が変わり、葬儀の規模やスタイルも変化を強いられてきたといえる。

競合回避へ業務提携

 総務省の「事業所・企業統計調査」によると、県内の葬儀社は01年の77事業所から09年には98事業所に増加。葬儀業界雑誌の「月刊フューネラルビジネス」(綜合ユニコム発刊)でも、10年末の都道府県別葬祭会館数で本県は116カ所と公表されている。県内の年間死亡者数を1会館当たりで割った人数は103.4人と全国で2番目に少なく、競争激化の状況もうかがえる。

 資本力のある県内大手として挙げられるのが、県内全域で組合員向けに葬祭場を展開しているJAだ。JA宮崎経済連組織生活課によると、斎場を設置し始めたのは1992年で、現在13市町村に24ホールを設置。組合員のネットワークは強く、年間利用者数(2010年2月~11年1月)は都城市481件、宮崎市432件、延岡市431件に上る。今後のホール展開には「未設置地域での組合員ニーズに合わせて検討する」と前向きだ。

 JAが斎場を拡大する中、エポック・ジャパンは今春、市内3カ所に葬祭場を持ちJA宮崎中央の組合員向けに葬祭サービスを展開しているジェイエイ福祉(宮崎市清武町、森永利幸社長)と業務提携契約を締結。顧客の相互紹介や葬祭場の一部共有を実施している。エポック・ジャパンの白石部長は「全国的に民間業者がJAとの競合で苦労している地域が多い。宮崎では提携によるホールの共有で、競合を避けられれば」と狙いを明かす。

利用者獲得へ独自色

葬祭業の各社が作成しているパンフレット

葬祭業の各社が作成しているパンフレット。利用者に分かりやすいように料金や内容を明示している

 ほかにも県内には互助会系の葬儀社があり、大手の脅威にさらされる地元中小零細の葬儀社は生き残りに知恵を絞っている。1929(昭和4)年創業で、市内に3斎場を所有する宮崎市の老舗・ふじもと美誠堂(同市高洲町)の藤元一生社長は「価格競争では大手にはかなわない。大手と違うやり方で満足してもらわないといけない」と差別化の必要性を訴える。

 業界では、利用者負担を軽減するために葬儀費用の低価格化が進み、顧客獲得へ大々的に価格を明示するようになってきた。これまでは表立って葬儀の内訳を話すこと自体がタブー視され、業界では価格を明示してこなかったこともあり、通夜や葬儀後に予想以上の費用を請求されて驚く喪主らも多かったという。そんな中でふじもと美誠堂は今年4月、追加料金が発生しないよう葬儀に必要なすべての予算をパッケージ化した新料金システムを打ち出した。通常、表示料金に含まれるのは基本的な葬儀品だけの場合が多く、司会進行料や呈茶配膳スタッフ代、会葬者を運ぶマイクロバス手配料金などの追加が次から次に生じ、利用者負担が増えるのが実情だった。

 新たな料金システムでは、これまでの表示料金より高額になったものの、藤元社長は「追加料金がないかを何度も聞かれるが、よりクリーンな料金体系を示すことで利用者に安心してもらえ、長い目で見ればこちらの方が信頼される」と利用者の定着に期待をつなぐ。

 ほかにも各業者とも故人に合わせたスタイルの葬儀を演出したり、生前相談や葬儀前後の家族の精神的ケアを行うなど、各社は利用者獲得にしのぎを削る。県内の14葬祭業者で組織する県葬祭事業協同組合(岩元昭俊理事長)の飯干浩甫事務局長は「資金力のあるJAなどが進出する中では、新たな取り組みをしないと負けてしまう」と背景を説明する。

 県内では既に「飽和状態」にも見える葬祭場だが、厚生労働省の人口動態調査によると本県の年間死亡者数は増加傾向にあり、99年に1万人を突破し、2010年は1万2千人を超えた。日本の将来推計人口(人口問題研究所)によると、老年人口割合も今後30年程度は増加する見通しだ。

 県内の葬儀ビジネスの動向を調査したみやぎん経済研究所の黒木高一郎主任研究員は、業界の将来について「死亡者は約30年は増え続けるので葬儀件数自体は右肩上がり。ただ、葬儀の単価自体が下がっている。各社とも葬儀の前後を含めたフォローや、昔からのつながりを守っていくなど地道な取り組みが必要だろう」と話している。
(インサイド取材班・高森千絵)

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