みやビズ

2018年10月21日(日)
インサイド

エシカル消費の広がり

2011/11/11

消費で社会貢献


 震災復興や省エネ、地球環境対策など社会貢献への関心が高まる中、商品を選ぶ基準の一つとして「エシカル」というキーワードが注目されている。エシカルは「倫理的な・道徳的な」という意味の英単語で、具体的には環境破壊や人権侵害、貧困の拡大につながる商品は買わない、一方で購入金額の一部が義援金として活用される商品や伝統的なもの、丁寧に作られたものを正当な価格で買い大切に使う-などの行動が挙げられる。毎日の消費活動を通じて社会に貢献するという点が特徴で、県内でも徐々にではあるが動きが広がり始めている。
安価大量生産、大量消費の対極

国産の無垢(むく)材を使用して作る橋詰家具の学習机。「兄弟や親せきからの口コミや紹介で購入される方も多い」と橋詰社長は語る

国産の無垢(むく)材を使用して作る橋詰家具の学習机。「兄弟や親せきからの口コミや紹介で購入される方も多い」と橋詰社長は語る

 1952(昭和27)年の創業以来、県内産クスノキを中心とした家具の製造直売を手掛けてきた橋詰家具(都城市、橋詰久義社長)。同社では今年から、自社製の家具を「エシカルファニチャー」と銘打ち、販売戦略の要に掲げている。それまで代々続けてきた次世代にまで受け継がれるようなこだわりの家具作りを改めて前面に打ち出した形だ。背景には、中国製を中心とした大量生産の安価な家具の台頭があり、それら製品との明確な差別化で消費者にアプローチする。

 「木が生えて一人前に育つまで早いもので60年。場合によっては100年、200年と気が遠くなるような年月を重ねる。その木を削って刻んで、組み立てるのが家具。木の尊い命と引き換えに家具には命が吹き込まれる。良い家具をそろえて手入れしながら長く使うことに価値を感じてほしい」と橋詰社長。

 同社がここ数年、力を入れているのが子ども用の学習机。県産クスノキや北海道産シラカバの無垢(むく)材を使用し、塗料も自然環境や人体に配慮する。価格は12万~13万円。量販店では安い物で3万円、主流の価格帯が7万~8万円である中で、同社の商品は割高な印象だが、発売以来毎年2割程度ずつ販売台数が増え昨年中は約120台が売れたという。「最近では、一度安価な大量生産品に流れた客が戻ってくる傾向もある。(大量生産品と)値段で勝負はできないが、品質には自信がある。精神的な豊かさや生活の質の向上を優先させる時代の到来で、使い捨ての時代はもう終わった」とこれからを見据える。

「買い支える」という意識

 宮崎市の平和台公園内で営業する「ひむか村の宝箱」。2005年3月に県公園協会が運営を撤退したレストハウスの跡地に同年10月にオープンした。発展途上国の手工芸品や農業製品などの公正な取引を推進する「フェアトレード」商品のほか、県内在住の作家による工芸品や書籍、地産の食品などが広さ30平方メートルほどの店内に所狭しと並ぶ。

 代表を務める池辺宣子さんは「オープンはちょうど県外資本の郊外型大型店が宮崎市内に進出した年。自分が物を購入するために使ったお金がどこに流れて行くのか、ということを考えてもらうきっかけにしてほしかった」と思いを語る。

 安く買いたたくのではなく立場の弱い途上国の生産者と対等に取引し、その生活の自立を助けるフェアトレードの商品は「先導役」と説明。「同じ視点で県内の産品にも目を向け、いわば『国内版フェアトレード』の観点から県内の伝統工芸品や作家、農家を継続して買い支えていきたい」(池辺さん)。

 開設から6年。池辺さんは客の意識の変化を確実に感じているという。「顕著に表れたのは08年ごろから。それまで値段が高いなどしばしば耳にしていたクレームが全くなくなった。商品の背景にあるものまでを考えてより高い満足感を得るという買い方が増えている。インターネットの普及でより多くの情報が入ってくるようになったのも関係しているのでは」と分析する。

売り上げ伸ばす県内発商品も

アイキスパイスが製造・販売するスパイス。可能な限りフェアトレードやオーガニックの原料にこだわる。営業活動は行っておらず、販売店側から取引の依頼を受けることがほとんどだという

アイキスパイスが製造・販売するスパイス。可能な限りフェアトレードやオーガニックの原料にこだわる。営業活動は行っておらず、販売店側から取引の依頼を受けることがほとんどだという

 アイキスパイス(宮崎市)が製造、販売する調味料「アイキスパイス」は、フェアトレードとチャリティーの両面を持ち合わせるエシカル商品で、昨年4月に発売を開始した。特に宣伝活動はしていないものの、口コミで人気が広がり現在は月間約300個を売り上げる。発売当初、宮崎市内の4店舗ほどだった取扱店は全国各地約40カ所に拡大した。

 使用するのは、フェアトレードにより輸入された岩塩のほか、バジルやシナモン、ローズマリーなどの香辛料約20種類。サイズによって680円から980円まで3種類がある。いずれも商品価格のうち39円が、寄付金としてボランティアグループに送られる仕組みになっており、すでにこの寄付金を活用してインド国内に、現地女性のための就業支援施設を整備した。

 代表のジェフリーポールさんは「商品それ自体の味や品質の良さはもちろん、貢献できるのがうれしい、という声が多い。寄付の成果を形で示すことで、購入者の幸福感や満足感をより高めることができる」と話す。

 内閣府の2008年版国民生活白書によると、社会に役立ちたいという意識について、「(役立ちたいと)思っている」の回答と「あまり考えていない」の回答がほぼ同率の状態が70年代後半から続いたが、80年代後半から「(役立ちたいと)思っている」と回答した人が増え始め、91年には6割超に。2008年現在は69.2%と過去最高に達している。

 さらに、東日本大震災を機に、被災地への支援や省エネ活動など、社会貢献に関連した商品やサービスに対する消費者の注目度はこれまでになく高い。消費者は自分が支払ったものに対して成果を実感し、企業側にとっては、新しいユーザーの獲得や売り上げアップのチャンスにもなる。双方にとって利のある「エシカル」の視点が今後、新商品開発のヒントの一つになるのではないだろうか。(インサイド取材班・島田喜恵)

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