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2018年8月16日(木)
フォーカス

県内薬局・薬店の奮闘(下)

2014/11/20
【フォーカス・県内薬局・薬店の奮闘(下)】役割 住民の“健康意識”高める

 役割  住民の“健康意識”高める

 症状が軽いうちに一般用医薬品などを使って重症化を防ぐ「セルフメディケーション(自分で健康を管理する)」という考え方が広がる。安易な病院での受診をなくし、医療費の抑制にもつながると期待される考え方で、その啓発の拠点としての役割を担うのが地域の薬局だ。住民が足を運びたくなる仕掛け、処方された薬を飲む意味を理解してもらうためのシステム作りなどを工夫しながら、身近な健康づくり拠点としての存在感を高めている。

患者の“いま”を知る

まなべる薬局で開かれたノートの取り方のひとつ「マインドマップ」講座の一場面。幅広い年代が集い、知識を深めた(まなべる薬局提供)

まなべる薬局で開かれたノートの取り方のひとつ「マインドマップ」講座の一場面。幅広い年代が集い、知識を深めた(まなべる薬局提供)

 刺しゅう体験会、ノートのまとめ術講座、クリスマスコンサート…。まなべる薬局(宮崎市)の30平方メートルほどの店内は年間50回程度、これらのイベントの舞台となっている。映画鑑賞会は、上映当時の新聞コピーを手に入れて時代背景まで知ってもらおうとする手の込みよう。常連さんも増え、「どのイベントにも必ずと言っていいほど来てくれる熱心なファンが4、5人います」と、同薬局代表で薬剤師の髙尾雅仁さんは頬をゆるめる。

 イベントは月平均にすると4、5回。患者の病状などにもよるが「月1回しか薬局に来ない方も、イベントを目当てに複数回、足を運んでくれている。その場で『実は膝だけじゃなくて腰も痛いんだ』と話してくれることもある」と、相談しやすい環境づくりにイベントが一役買っている実情を説く。

 同薬局は、医薬マーケティング会社が選定する、健康長寿や予防などに真剣に取り組み高い業績を上げている「予防分野における全国実力薬局100選」の一つ。予防医学の観点からも「(イベントを通じて)元気なときの顔を知っておくことも大事」と高尾さん。「そうでないと、体調が悪くなったとき変化に気付けない」

 イベント情報のほか、健康に役立つ豆知識や季節に合った健康食の提案などを紹介する「まなべる新聞」も随時発行。地域住民らから好評を得ている。髙尾代表は「薬を出すのは仕事として当たり前。プラスアルファで、ここに来るだけで笑顔になって、癒やされるという場をこれからもつくっていきたい」と話す。

視覚的な説明で分かりやすく

 つかさ薬局(都城市)は、タブレット型端末「iPad」を活用した薬局運営に力を入れる。処方する薬や健康情報の説明、薬剤管理、聴覚障害者の患者向けの筆談ツールなど使い方はさまざまだ。

血管の模型だけでなくiPadを駆使して薬を飲むための理解を深める取り組みを進めるつかさ薬局薬剤師の竹中さん

血管の模型だけでなくiPadを駆使して薬を飲むための理解を深める取り組みを進めるつかさ薬局薬剤師の竹中さん

 「血管年齢の高い人は脳卒中のリスクが高まるんですよ。だから血圧はこのあたりまで下げていきましょう」。管理薬剤師の竹中誠司さんは、血管の絵やグラフなどが掲載された資料をiPadで示しながら、患者へ丁寧に説明する。同薬局では3年前、iPadでの健康情報提供を県内ではいち早く始めた。当時は、インターネットから使えそうなデータなどを取り込んで“教材”を自作していたが、最近では大手製薬会社もタブレット端末などを使った説明の普及に寄与しようと、説明資料を作って提供してくれるようになったという。「視覚的に分かりやすい説明をすることで、納得して薬を飲んでくれるようになった患者さんもいる」と竹中さんは効果を実感する。

 薬歴管理にも役立てている。患者に処方する前に、今回の処方した薬剤の量を写真で記録。飲まなかった薬の確認やジェネリック薬品への切り替えなどがスムーズになった。従来のように紙のカルテに書きとめるよりも作業効率がよく、薬剤師の負担軽減にもつながっているという。「丁寧に時間をかけた投薬説明は、小さな薬局だからこそできること。きめ細やかなサービスや人的管理を徹底することで、大手と差別化が図れる」

 現在、同薬局ではスマートフォンアプリを活用した「お薬手帳」の導入も検討している。処方された薬の詳細や服薬方法の説明、薬剤師への質問などがアプリを通してできるもので、スマートフォンを使える世代が増える今後、普及が期待される。ただ、使える薬局と使えない薬局が混在するのは使い勝手を悪くするため、県薬剤師会の田代和久会長は「導入には薬局間で足並みをそろえる必要があるだろう」と指摘する。

 竹中さんは「お薬手帳は処方の無駄を防ぎ、効き目があったかどうかなどが病院が閉まっていても一目で把握できる貴重なもの。アプリか従来の手帳か、使いやすいものを選べるようにしたい」と話していた。
(経済部・西村公美)

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