みやビズ

2019年4月19日(金)
東京発 経済人

テーブルマーク社長 日野三代春さん

2011/09/01

加工食品事業で2000億円目指す


 テーブルマークは、大手冷凍食品メーカーとして知られた「加ト吉」から2010年1月に社名を変更し、新たなスタートを切った。日本たばこ産業(JT)グループの食品メーカーとして、加工食品事業、調味料事業、ベーカリー事業を中核に、培った技術を生かした高付加価値な商品を提供。10月1日からは本店を香川県から東京に移し、さらなる事業拡大を目指す。6月24日付で取締役専務執行役員から社長に昇格したのが延岡市出身の日野三代春さん。事業内容や展望、ふるさと宮崎への思いを聞いた。
(聞き手・東京支社報道部長 見山輝朗)


■JTが旭化成食品事業や加ト吉を買収

 -テーブルマークはJTの完全子会社だ。これまでの歩みを教えてほしい。

品質管理に資金を掛けているテーブルマーク。「安心安全にはこだわりを持っている。製造過程がちゃんとトレースできる物を作ることが大切だ」と強調する日野社長

品質管理に資金を掛けているテーブルマーク。「安心安全にはこだわりを持っている。製造過程がちゃんとトレースできる物を作ることが大切だ」と強調する日野社長

 日野 JTは、1998年に冷凍野菜などを手掛けていた米ピルスベリージャパンを、99年には旭化成工業(現旭化成)の食品事業を子会社8社ごと買収して加工食品事業に本格参入した。さらに、強い製造基盤を持つ大手冷凍食品メーカーの加ト吉に、JTの商品開発力や研究開発力を組み合わせればいい補完関係になると、2000年に加ト吉に5%出資して業務提携した。当時の加ト吉は上場会社としてホテル事業やレジャー事業など幅広く展開し、年間に3000億円の売り上げがあったが、加工食品事業の売上高に限れば1千数百億円。これをJT食品事業と合わせれば2000億円規模になる。08年1月にはTOB(株式公開買い付け)で子会社化した。同年にJTの加工食品事業・調味料事業を加ト吉に移管し、事業を統合。昨年1月、新体制にふさわしい社名として加ト吉からテーブルマークに変更した。

 -08年6月にJT執行役員から旧加ト吉執行役員となり、3年目を迎えた今年6月に社長に昇格した。

 日野 もともとは旭化成工業(現旭化成)食品事業部で主に経理を担当しており、買収先のJTへ2000年に転籍。JT食品事業部長を経て、2008年に加ト吉に来た。その後、山田良一前社長(現会長)の下、JT食品事業と加ト吉との事業統合を進め、取締役専務執行役員として事業全体を担当してきた。加ト吉は本来の食品メーカー機能に専念するため、ホテル事業やレジャー事業など非食品事業の整理を進め、直近の連結ベースの売上高は約1830億円で単体の売上高は約1010億円(2011年3月期)。主要取引先の外食産業の不調に伴う営業損失や、非食品事業の売却に伴う特別損失はあったものの、事業戦略が徐々に社内に浸透し、少しずつだが業績は上向きだ。正直、まだ山田前社長に続けてほしかったが、私が担ってきた食品事業建て直しの目鼻もついてきたので、(社長就任には)順当な時期かとも思う。

■「人財」を育成し力を発揮

 -社長の立場で最も重要視することは。

欧米で販売している天然素材による液体調味料の評価が高く、「味がよくヘルシーでデザインも良い。日本の食は世界に出ていけるのではないか」と展望する日野社長

欧米で販売している天然素材による液体調味料の評価が高く、「味がよくヘルシーでデザインも良い。日本の食は世界に出ていけるのではないか」と展望する日野社長

 日野 企業の財産は何と言っても人だ。当社では「人材」を「人財」と称して育成に努めている。当社には旭化成、JT、加ト吉などいろんなところからきた人が集まっている。専務時代の昨年は国内の工場や支社・支店を回って10人単位のミーティングを重ね、1年間で1000人ぐらいから意見や悩みを聞いた。今年も新しい中期経営計画をまとめた後、海外も含めてもう1回、できるだけ多くの従業員に会うつもりだ。私1人では何もかもはできない。この優秀な人たちをどう束ね、力を発揮させていくか。文章で示すのではなく、会って顔を見て話すことが大切だ。

 -「カトキチ」というブランド名はあまりにも有名だが、新社名は消費者に浸透しているか。

 日野 われわれは「一番大切な人に食べてもらいたい」という思いで事業に取り組んでいる。一家だんらんの場といえば食卓で、英語にすればテーブルだ。「時代のニーズを見据えた食の可能性を追求し、笑顔があふれる食卓のトレードマークでありたい」という意味を込めてテーブルマークという社名を採用した。認知度はまだまだ低いが、人間も生まれたときに両親が思いを込めて付けてくれた名前の意味を、自分たちの生き方でつくっていくものだと思っている。だから、従業員の仲間たちには「自分たちでこの会社の人格をつくっていけるから、やりがいがあるだろう。頑張ろう」と話している。ただ、主力の冷凍うどんに限っては、お客さまにかわいがってもらってきたブランド名として、商品に「カトキチ」を併記している。

■ステープル中心に事業拡大

 -現在の事業の中核は。

焼きたての味が楽しめる新商品の冷凍パン「ベーカーズセレクトクロワッサン」

焼きたての味が楽しめる新商品の冷凍パン「ベーカーズセレクトクロワッサン」

 日野 一番強いのがうどんであることは間違いないが、パックご飯の生産規模は当社が日本一だ。こうした当社の強みである冷凍麺、冷凍・常温米飯、焼成冷凍パンといったステープル(主食)を中心に注力している。2010年10月には、70億円かけて新潟県に魚沼水の郷工場を新設した。小麦粉やコメは最も安定して調達できる原料であり、ここにわれわれの技術を組み合わせれば、まだまだ伸ばすことができる。さらに、9月からは「ベーカーズセレクト」という新ブランドを立ち上げ、新しい家庭用の冷凍パンを発売する。10年もかけて研究し、数多くの特許を基に開発した。焼いた状態で冷凍しているので加熱しても自然解凍でもおいしい。冷凍とは思えない焼きたての味が楽しめる。きっとびっくりしてもらえると思う。また、天然素材による液体調味料も販売しており、特に欧米で評価が高い。現在の売り上げ比率は加工食品で60%、サンジェルマンという店舗を中心としたベーカリー事業で9%、調味料事業で10%、その他21%。非食品事業の整理で全体の売上高は下がったが、加工食品事業だけで統合時の2000億円に戻し超えていきたい。

 -食の安全や環境への対応は。

 日野 過去の冷凍餃子問題を教訓に最高水準の安全管理を推進している。微生物や食味・品位検査に加え、最新の設備により農薬450項目、動物用医薬品100項目をはじめ、食品添加物、重金属類、アレルゲン、DNA分析などの検査を実施。中国では原料を作っている農地に生産管理の従業員が足を運び、輸入冷凍食品の全ロットに対して中国と国内で農薬のダブルチェックをしている。国内外21カ所の自社グループ工場と生産を委託している全ての工場で食品安全に関する国際規格ISO22000を取得している。環境に関しては、冷凍食品の具材を置くトレーや具材を包むフィルムを廃止する「エコ包装」の採用など、食品の容器包装の見直しに取り組んでいる。植林・森林保全活動にも積極的に参画している。

■宮崎に高級デザート工場

 -東日本大震災の影響は。どのような被災地支援活動を行ったか。

テーブルマークの主力商品「さぬきうどん5食」。被災地にも差し入れて炊き出しを行い、被災者たちに喜ばれた

テーブルマークの主力商品「さぬきうどん5食」。被災地にも差し入れて炊き出しを行い、被災者たちに喜ばれた

 日野 事業自体への影響は軽微で工場や人的被害は幸いにもなかった。震災1週間後の3月18日には、私自身が仙台市宮城野区に入り、うどん3万食、カップラーメン1万食を届けた。かなりの余震が発生する中、避難先の小学校で、うどん1000食の炊き出しも行った。当社主力のさぬきうどんを丹精して作って差し上げたが、温かい物を食べたかったのだろう、大変喜んでもらい、1人で5杯お代わりした人もいた。4月にも福島県内2カ所で炊き出しをした。口蹄疫で大変だった宮崎にはJTグループとして義援金をお贈りしたが、個人的に寄付をさせてもらった。ふるさとにはいつも思いがある。

 -本県ではどのような事業を営んでいるか。

 日野 JTが買収し業務用調味料を生産していた延岡市の旭食材工場は今年3月、グループ会社の富士食品工業に機能集約し清算したが、宮崎市佐土原町に完全子会社の日本食材加工がある。従業員は常に地元から採用しており、液体調味料を製造しているほか、あまり知られていないが、ホテルなどに納める高級デザートでは冷凍部門で国内トップクラスのシェアを持っている。

 -宮崎の強みは何だと思うか。

 日野 口幅ったい言い方かもしれないが、自然だって食べ物だって素晴らしく、売りになるものはいっぱいある。ウナギや鳥の刺し身など、本当においしい。日南市酒谷などグリーンツーリズムにいい場所もある。どこにでもある金太郎あめでない個性が宮崎の強みではないか。宮崎の良さをもっと広く世に知ってもらうことが大切だ。
(東京都中央区のテーブルマーク東京本社で)


プロフィル


 ひの・みよはる 延岡市出身。延岡高、西南学院大商学部を卒業し、1978(昭和53)年に旭化成工業(現旭化成)入社。長く延岡生活を送ったが、同社食品事業を買収したJTに2000年転籍。さらに、JTが子会社化したテーブルマークの執行役員に08年6月就任。09年3月から取締役専務執行役員を務め、11年6月24日付で社長就任。3社を渡り歩くも、「おかげで友達が3倍に増えた」。気さくな人柄で「楽天的」と自己分析する。酒席は1次会のみにとどめ、深夜の時間帯は睡眠に充てて健康管理に努める。読書好きで毎朝3時に起きて本を読む。昨年10月に誕生した初孫の男の子をかわいがり、「自分までこんなになるとは思わなかった」と笑う。56歳。

アクセスランキング

ピックアップ