みやビズ

2019年6月25日(火)
東京発 経済人

ウェルネス・アリーナ社長 梶川貴子さん

2011/08/01

スパ事業で地方活性化



 温浴にアロママッサージやフェースケア、食事などを組み合わせた総合的なリラクセーションサービスを提供するスパ。心と体の癒やしを求める現代人のニーズにマッチし、世界的に市場拡大を続けている。都城市出身の梶川貴子さんは経営コンサルタントを経て、ホテル併設型のスパ運営事業を主に展開するウェルネス・アリーナを東京で設立。今年5周年を迎えた。梶川さんに近況やふるさと宮崎を活性化させるアイデアを聞いた。
(聞き手・東京支社報道部長 見山輝朗)


■地方を活性化させるスパ

「自然素材を生かしたスパ事業には、地方を活性化させる要素がたくさん詰まっている」と語る梶川社長

「自然素材を生かしたスパ事業には、地方を活性化させる要素がたくさん詰まっている」と語る梶川社長

 -梶川社長はボストン・コンサルティンググループを振り出しに、国内外各方面で経営コンサルタントとして活躍してきた。特に2000年代前半は、ザ・ウィンザーホテルズ・インターナショナルやリップルウッド日本法人(現RHJインターナショナル)に在籍。北海道洞爺湖のザ・ウィンザーホテル洞爺や、宮崎市のシーガイアの再生に手腕を発揮した。その両方で導入したスパ事業が新たに起業した現在の仕事に結びついている。

 梶川 スパに興味を持ったのは、精神をすり減らす仕事に携わった時だった。疲れ切った状態で初めてスパを体験し、体調の変化を実感。心身を良い状態に保つことは、これから必要なビジネスになると思った。世界で成功しているスパは、フランスならプロバンスやブルターニュ、アジアなら離島とか、自然豊かな所にある。なぜなら、スパに必要な材料がたくさんあるからだ。山や海などの景色、ハーブや野菜などの素材、それらを生かしながら、質の高いサービスを提供していく。スパという業態には地方を活性化させる非常にいい要素があり、ウィンザーホテルやシーガイアではリゾート再生のコア事業になると考え、それぞれの施設で導入した。

 -業態が多様で単純比較はできないものの、国際的にはスパ市場は年率20%程度伸びているとされる。ウェルネス・アリーナを設立した経緯は。

ウェルネス・アリーナの事務所内には、梶川社長が手掛けているスパ施設の写真が額縁に入れて飾られている

ウェルネス・アリーナの事務所内には、梶川社長が手掛けているスパ施設の写真が額縁に入れて飾られている

 梶川 ウィンザーホテルやシーガイアでの経験を通し、リゾートホテルとスパの相乗効果の高さを確信した。しかし、日本国内ではまだ海外のようにはサービスが融合しておらず、事業を成功に導くには、スタッフの質が重要になる。そこで、ホテル内で営業する「ホテル・スパ」で働く人材を育てるアカデミーを06年に開設したのが、ウェルネス・アリーナの始まりだ。その年に、プリンスホテルから経営アドバイザーを依頼され、軽井沢プリンスホテル(長野県軽井沢町)でスパ事業を展開するプロジェクトに参加。プリンスホテル側から運営そのものも頼まれ、コンサルティングから一環して手掛けるスパオペレーション事業を本格的にスタートした。

■国内4施設で運営

 -現在までに手掛けてきたホテル・スパの概要は。

森を感じながら入るジャグジーがついた「スパ・ザ・フォレスト・プリンス」のトリートメントルーム=長野県軽井沢町の軽井沢プリンスホテルイースト

森を感じながら入るジャグジーがついた「スパ・ザ・フォレスト・プリンス」のトリートメントルーム=長野県軽井沢町の軽井沢プリンスホテルイースト

 梶川 森に囲まれた軽井沢プリンスホテルで07年4月、「スパ・ザ・フォレスト・プリンス」を開業。同年9月には瀬戸内海の景観を楽しめるグランドプリンスホテル広島(広島市)に広島県内では初の本格的ホテル・スパとして「スパ・ザ・ブルー・プリンス」をオープンした。東急グループからは、不動産事業の中で付加価値のあるスパ事業を立ち上げたいと相談があり、恵比寿駅前にあるフィットネスクラブ「ラフィール」(東京都渋谷区)の中に08年10月、「スパ・コクーン」を開設した。このほか、オークホテルズ&リゾーツのフォレスト・イン昭和館(東京都昭島市)で「スパ・ガラントリー」を運営している。

 -世の中は景気低迷が長く続き、デフレに苦しむ企業も少なくないが、運営するスパ4施設の状況はどうか。

 梶川 おかげさまで売り上げは着実に増え続けている。象徴的なのは、08年から軽井沢プリンスホテルで始めたデトックスステイプランだ。スパトリートメントやウオーキングプログラム、季節の食材を使い滋養に満ちた薬膳料理を提供するキュイジーヌメニューなどで構成する。2泊3日で10万円というプランで、高額過ぎるという声もあったが、これまでの利用客は1000人を超えた。これは、当社のスタッフだけでなく、企画段階からホテル各方面のスタッフがかかわり、みんなで意見を出し合い、十分な時間をかけてチームワークを醸成させた結果だ。ホテル内のすべてのスタッフが、スパの内容や地取れの野菜、季節の花々、観光の話などを説明することができる。まさにホテルとスパが一体となったサービスだということがゲストに理解され、リピーターが非常に多い。

■セラピストもマーケティング研修


 -スタッフ育成で力を入れていることは。

 梶川 運営4施設で現在、20歳から50歳まで25人の女性社員がいる。一流のアロマセラピストや医師、整体師、栄養士、スポーツトレーナー、マナー講師などの講習があるが、セラピストであっても、技術習得とは別にマーケティング研修をしっかりと行うことが大きな特徴だ。ポーターやドラッカーなどの理論も勉強してもらう。そうは言っても難しい話ばかりをするわけではない。例えば、いろんなタイプのゲストに接した経験を説明させ、そのゲストに応じたサービスをマーケティング理論とマッチングさせる。スタッフは、どうすればゲストが満足するかを考えるようになり、根っこから喜んでもらおうとサービスを改善していく。海外ではマニュアルを徹底させることがオペレーションの強さにつながるとされるが、日本人は自ら考えてもてなすことが好きな民族だ。人と人とのふれあいを大事にして、ゲストが自分を信頼して会うことを楽しみにしていると思えることが、スタッフを成長させ、それが会社の力になる。人間関係が希薄になる中、大切にしてもらうことで人は元気になり、それがリピーターにつながると信じている。

 -今年7月からは通信販売事業にも乗り出した。

ウェルネス・アリーナが7月から通信販売を始めた自然派ボディケアシリーズの商品。久米島海洋深層水をベースに自社開発した

ウェルネス・アリーナが7月から通信販売を始めた自然派ボディケアシリーズの商品。久米島海洋深層水をベースに自社開発した

 梶川 スパのトリートメントで使っている業務用の商品がほしいという顧客からの要望が多く、自社開発した。バスオイルやボディーウォッシュ、クリームなどのボディーケア商品は、久米島海洋深層水をベースに沖縄ならではのモズクや月桃、アコヤ貝などの成分を配合している。また、私は日本を代表する食器ブランド・鳴海製陶のアドバイザーを務めているが、透光性がある同社のボーンチャイナの器に、私自身が森や海をイメージしたデザインを施し、アロマキャンドルとして発売した。軽井沢や大分で生産されたハーブティーも売っている。久米島で製造工場の従業員を増やしたり、軽井沢ではハーブの作付面積を拡大しており、微力ながら地域興しにも貢献しているようだ。ハーブに関してはもっと大規模に取り組みたいと考えており、宮崎でもパートナーを探したい。

■宮崎は高齢者サービス充実を


 -宮崎活性化のためのアイデアは。

 梶川 高齢者サービスの充実を考えてはどうか。例えば、私が以前、研修で訪れたオーストラリアのメルボルンは在宅介護のボランティアが活発だが、1人の人間が何でもやるのではなく、車いすを押す人、食事の世話をする人、マッサージをする人などに役割が分かれ、少ない負担で孤独な高齢者を減らしている。いろんな人と接することで、ぼけ防止にもつながっているようだ。介護を家族だけでなく地域でサポートし、効率的でオープンな社会を実現した。宮崎はそうしたコミュニティーをつくるモデル地区に向いていると思う。また、県民の多くは、観光と自分たちの暮らしを別だと思っているのではないか。地元住民が楽しんでいることに、憧れた外の人たちが来るのが観光地本来の姿だ。農業や森林をもっと活用したいが、できれば集中的に資本を投下する地域を具体的に選び、誰もが思い浮かぶ観光資源に育てたい。(東京都渋谷区のウェルネス・アリーナで)

プロフィル


 かじかわ・たかこ 都城市出身。都城泉ケ丘高、津田塾大英文学科卒。ボストン・コンサルティング・グループの経営コンサルタントとして国内や欧州で経験を積み、日本コカ・コーラなどでも事業戦略の構築に活躍。2003年から2年間、リップルウッド日本法人(現RHJインターナショナル)でシーガイア再生に携わり、温泉やスパ開発を手掛けた。内閣府の「地域再生伝道師」をはじめ、各省庁からの依頼で地域再生に絡む講師を務める。会社役員の夫(47)とミニチュアダックスと都内で暮らす。47歳。

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