みやビズ

2019年6月16日(日)
東京発 経済人

全日本空輸社長 伊東信一郎さん

2011/06/01

アジアのNo.1目指す

 
 本県出身者として初めて全日本空輸の社長に就任し、3年目を迎えた伊東信一郎氏。リーマンショック後の世界的な不況下から経営を立て直し、2010年度決算では3年ぶりに最終黒字を確保した。しかし、東日本大震災で航空業界も厳しい環境下にある。経営の現状や展望、ふるさと宮崎への思いを聞いた。
(聞き手・東京支社報道部長 見山輝朗)


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黒字転換を果たし、「しっかりと強い体質の航空会社にしていきたい」と決意を示す伊東社長

■3年ぶりに黒字転換

 -全日空の2011年3月期連結決算は、売上高1兆3576億円、純損益が233億円の黒字となり、3年ぶりの黒字転換を果たした。国際線と国内線を合わせた10年度のグループ利用客数は前年度比2.3%増の4305万9622人となり、日本航空グループの4192万3452人を上回った。国内航空会社の年度利用客数で首位になったのは、日航と旧日本エアシステムが経営統合した02年度以降で初めてだ。

 伊東 決算は前年と比して1300億円ぐらい収入が伸び、費用はコスト削減や生産性の向上を図り70億円ぐらいしか増えなかったことで、大きく業績を回復した。東日本大震災の影響は大きかったものの、目標にしてきた黒字復活と復配を達成できた。利用客数は確かにわれわれも増えたが、(会社更生手続きをした)日本航空が減ったからであり、数が多くても、もうからなければ仕方ない。現在は震災の関係で厳しい状況だが、ゴールデンウイークを境に少しずつ戻ってきており、夏以降はしっかり回復をしてくると思う。

■アジアとともに成長を

 -羽田空港に昨年10月、新しい滑走路と国際線ターミナルビルが完成し、32年ぶりに本格的な国際定期便が復活した。

 伊東 羽田の国際線は大きな目標だった。順調に進捗(しんちょく)しており、さらに充実させていく。一方で成田の国際線もアジアのネットワークを充実させていく。(全日空が加盟している航空連合「スターアライアンス」メンバーの)ユナイテッド航空(米国)やルフトハンザ航空(ドイツ)とさらに緊密なジョイントベンチャーを構築して、より競争力を上げていく。アジアがこんなにも成長を遂げる中、日本の多くの産業と同様に、それをわれわれの成長に結び付けるような事業展開をいかにしていくか。われわれのビジョンは品質と顧客満足、価値創造などアジアでナンバーワンになることだ。

 -全日空などが設立した格安航空会社(LCC)は先月、ブランド名を「Peach(ピーチ)」とし、社名も「ピーチ・アビエーション」に変更した。関西空港を拠点に来年3月、新千歳、福岡両路線、来年5月に韓国・仁川空港線を開設し、航空大手の半額程度の運賃を目指している。

 伊東 今後の航空業界は、LCCやアライアンス間の競争が厳しくなり、国内の新規会社も勢力を伸ばしてくるだろう。その中で、どう勝ち残るかが問われる。LCCとの共食いは一定度は出るだろうが、基本的には顧客層が違う。今まで飛行機に乗らなかった方々の利用率が高く、新たな需要をつくり出せる。国内線はもとより、アジアの需要をどうLCCが取っていけるかが課題だろう。

■最新鋭機を世界で初めて導入

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全日空が世界に先駆けて導入する最新鋭中型機ボーイング787(全日空提供)

 -米ボーイングの最新鋭中型機787を世界で初めて導入する。テスト機が7月3日に日本に初飛来し、早ければ9月にも就航する。約300席と400席の2種類の仕様があり、767に比べ燃費性能が約2割改善。11年度に14機、12年度に10機を導入予定だ。

 伊東 待ちに待ったという感じだ。従来の中型機よりも長い距離を飛べる。大型機だとリスクが大きい所にも就航が可能となる。われわれの要望を標準仕様にしており、昨年8月にシアトルでテストフライトに乗ってみたが、非常に乗り心地がいい。先進技術の固まりで、感動ものだった。電子的なシェードを取り入れた大きな窓、耳が痛くなる確率を抑える気圧の調整、快適な湿度の調整など客室内もいろいろな工夫がしてある。

 -全日空が包括的業務提携を結んでいるスカイネットアジア航空(SNA)は7月からブランド名を「ソラシドエア」に変更する。

 伊東 SNAとは九州にネットワークを伸ばしている。仲の良いパートナーとして今後もお互いに協力し合い、シナジー効果を追求できたらいいと思う。

■食や観光情報の発信を

 -宮崎はいまだ口蹄疫、鳥インフルエンザ、新燃岳被害からの復興の道半ばだ。

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ボーイング社の最新鋭中型機787を世界で初めて就航させることを「誇りに思う」と語る伊東社長

 伊東 東北の大変な地震の中でニュースから消えた感があり、非常に気になっている。新燃岳の噴火では降灰の影響で飛行機の欠航も相次いだ。梅雨に入り、土石流が心配だ。全日空グループでは昨年から口蹄疫の復興へ向け、さまざまな宮崎キャンペーンを行い、効果も出ていたが、今度は地震の関係で人の動きが止まり、宮崎路線も厳しい状況。韓国や中国、台湾など外国人客が途絶え、宮崎の観光事業や宿泊関係は大変だ。全日空グループとして需要環境をつくる支援をしていきたい。それがわれわれの使命だ。

 -宮崎のビジネスチャンスをどう見るか。

 伊東 口蹄疫や鳥インフルエンザでは図らずも、あんなにもたくさんの牛や豚、鶏が生産されていることを国民が知った。日本の食料基地として、食を中心としたビジネスを育てていく役割が宮崎にあると思う。観光面も含め、宮崎には隠れたいいものがたくさんあり、常に情報を発信していくことが必要。また、九州の西と東で均衡ある発展が必要。せめて早く東九州自動車を完成させてほしい。

 -最近帰省したのは。

 伊東 母が1人で暮らしており、ゴールデンウイークに2泊3日で帰った。近所の方々と焼酎を飲むのが楽しみだが、タケノコを裏山で掘ったり、都農や川南、高鍋に足を延ばして海のものを食べたりした。西都市の写真家、黒木一明さんから米良の山の美しい写真をいただき、社長室に飾って眺めている。
(東京都港区の全日空本社で)


プロフィル


 いとう・しんいちろう 西都市三納出身で「いまだになまりが抜けない」と笑う。妻高、九州大を卒業後、1974年、全日空入社。社長室事業計画部長や人事部長を経て、2003年に取締役就任。04年常務、06年専務、07年代表取締役副社長を歴任し、09年4月から現職。東日本大震災後は被災地に足を運び、全日空グループとして臨時便や経済的な支援に加え、避難所で風呂を提供するボランティアを実施。趣味は釣り。60歳。

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