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2019年1月19日(土)
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県産食材提供 間に合う? 調達基準取得遅れ 東京五輪・パラリンピック

2017/02/27
東京オリパラを輸出拡大の好機と捉える「くしまアオイファーム」の農場=串間市大束地区

東京オリパラを輸出拡大の好機と捉える「くしまアオイファーム」の農場=串間市大束地区

 2020年に控える東京五輪・パラリンピック(オリパラ)で、選手や競技関係者らに提供される料理に、宮崎県産食材が使われない恐れが出ている。大会組織委員会が求める調達基準である農業生産工程管理(GAP)の取得が遅れているため。遅れは全国的なものとはいえ、農業算出額が全国5位を誇る本県はオリパラを、海外に向けた農産物アピールや販路拡大の絶好の機会と捉えており、GAP普及に関し、早急な仕組み作りが求められている。

 県農業経営支援課などによると、食材調達の基準は大会ごとに組織委員会が定め、12年のロンドン大会から食の安全性に加え、持続可能性や倫理、福祉などに配慮した飲食提供の基本戦略をまとめている。東京大会組織委は国産を優先的に選ぶよう求め、昨年12月に基準案を提示。「グローバルGAP」「JGAPアドバンス」、農林水産省の「GAPの共通基盤に関するガイドライン」に準拠し都道府県が確認したGAP(都道府県GAP)を、農産物の調達基準の要件とした。

 農水省によると国内では現在、グローバルGAPを約400、JGAPを約4千農場・産地が取得しているが、全体からすると圧倒的に少ない。県内ではそれぞれ9、8農場・産地(県把握分)とさらに厳しい状況で、鹿児島など5県が運用している都道府県GAPは、宮崎県では認証制度が確立していないため、未対応となっている。

 同課は「オリパラは輸出額が増えている宮崎県農畜産物の良さを世界にPRする絶好の機会。誘致に取り組む海外代表チームの事前合宿などでも大会要件に準じた食材を提供するほうが好ましいことなどを考えると、対策を急ぐ必要がある」と話している。

「県版認証」整備急ぐ 農産物輸出増の好機に

 サツマイモ栽培の盛んな串間市大束地区。同市の「くしまアオイファーム」(池田誠社長)の農場では2月下旬、今期の苗の植え付けが始まっていた。同法人は2012年からアジア向けの、サツマイモの輸出を開始し急成長。2020年の東京五輪・パラリンピック(オリパラ)を販路拡大の好機と捉え、農業生産工程管理(GAP)のうち、JGAPアドバンス、グローバルGAPの取得に取り組む。

 同法人の輸出先は香港や台湾、シンガポールなど。現地にはない高品質で値頃なサツマイモが好評で、15年期(15年8月~16年7月)の輸出量は、前期比4・8倍となる375トンに上った。ただ、近年は現地業者などから国際的なGAPの取得を求める声が強まり、国内の外資系量販店からも「多くの海外客が訪日する東京五輪までのグローバルGAPの取得は必須」と告げられていたという。

 池田社長は「日本の農作物が高品質で安心・安全なのは当たり前で、より海外に浸透させていくにはGAPの取得が欠かせない。東京五輪は輸出拡大のまたとないチャンスとなるので、積極的に食材を提供する」と意気込む。

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 東京オリパラでは大会期間中、選手や競技、報道関係者ら向けに約1500万食が必要と見積もられている。大会組織委員会は16年度内に食材の調達基準を正式決定。17年度に具体的に必要とされる食材の量や料理の提供方法などを示す「飲食提供基本戦略」(仮称)を策定する。

 調達基準の要件となる見込みのグローバルGAPはドイツの民間機関が運営する認証制度で、ヨーロッパを中心に100カ国以上が導入。農作業の各工程などで200以上の細かい適合基準があり、認証を受けるには審査会社による第三者点検を毎年受け続ける必要がある。JGAPはその国内版で、審査基準は少し緩いものの、いずれも毎回の審査に十数万円以上かかるため、一般農家にはハードルが高いものとなっている。

 このため、県は比較的確認項目が少なく、軽費で取得できる都道府県GAPの整備を急ぎたい考えで、17年度当初予算案には「新県版GAP緊急拡大事業」として250万円を計上。12年につくった県版GAPに認証制度を盛り込み、組織委が求めるガイドラインに適合させる方針。

 県内24団体でつくるフードビジネス推進会議(会長・河野知事)は21日開いた会合で、GAP取得を17年度推進方針の最優先課題に設定。県農政水産部の郡司行敏部長は「県版GAPの整備は17年度前半の大きな仕事となる。本県からどんな品目が提供できるかを含め戦略を考えたい」と述べた。

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 すでにオリパラ後を見据えた動きもある。都城市梅北町の農業生産法人「新福青果」(新福秀秋社長)は08年からグローバルGAPを活用し、農作業の徹底した効率化に取り組む。

 同法人は大規模化する中で、雇用する農業者ごとの作業のバラツキが顕在化。品質や収穫量の不安定さ、作業の無駄やミスを抑制しようと、農場ごとの栽培・作業履歴、過去の成功・失敗データの記録をはじめ、徹底した情報の共有化を推進した。同じように作業工程を徹底して管理するGAPの導入は、農作業の標準化に大きく役立ったという。

 新福社長は「GAP取得が加速する東京五輪は、経験や勘に頼ってきたこれまでの農業を、もうかる産業に変革させる機会にしなければならない」と強調する。

 <GAP> 「GoodAgricultural Practice」の頭文字を取ったもので、安心・安全な農作物を供給するための作業管理基準。具体的には、農薬の種類や使用日を記した散布記録の作成、作業場の照明器具が割れても破片が混入しないようカバーを付ける-などがあり、周辺環境への配慮や作業の安全確保などの項目もある。

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