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2018年6月22日(金)
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林業の未来図Ⅱ(上)

2013/09/03

 乾しいたけ  消費拡大へ啓発に力


 乾しいたけの入札価格が低迷している。県山村・木材振興課によると、県経済連入札会の2013年6、7月平均価格はとうとう1キロ当たり2000円を割り込んだ。生産量全国2位の本県にとって影響は深刻で、生産者の意欲低下を招きかねない状況だ。消費量の低下に加え、東日本大震災後の東京電力福島第1原発事故に絡む風評被害が背景にあるとみられ、抜本的な打開策は見えてこない。それでも「少しでも消費を拡大し価格向上につなげたい」と、関係者たちの懸命の取り組みは続く。

短期収入源としての役割
原木シイタケの収穫風景。コマ打ち作業から乾しいたけが完成するまで、多くの時間と労力、燃料費などの経費が必要となる(諸塚村提供)

原木シイタケの収穫風景。コマ打ち作業から乾しいたけが完成するまで、多くの時間と労力、燃料費などの経費が必要となる(諸塚村提供)

 シイタケなどキノコ類をはじめとした特用林産物は、山菜類、樹実類、木炭類、竹類など多岐にわたる。木が伐採できるようになるまでに時間がかかる林業において、その長期性を補う短期収入源として、農山村地域経済に活性をもたらす役割は大きい。

 昭和40年代の高度経済成長期に入り、電気やガス、石油などの普及は目覚ましく、それまで中山間地の貴重な収入源だった木炭の需要は、減少の一途をたどっていくことになった。代わりに台頭したのがシイタケだ。栽培技術の向上に加え、消費者の自然食品・健康食品への関心の高まりも追い風となって、生産量は増大していった。

 1990年代後半には、生しいたけ、乾しいたけともに安価な中国産が流入し、県内でも1キロ当たりの平均単価を押し下げた。しかし、残留農薬問題などを受けて国産の安全性が見直され、県経済連入札会平均価格も2002年から上昇傾向に転じ、08年にはキロ4707円を記録した=左下グラフ参照。




若い世代の消費離れ
 ただ、乾しいたけ生産には時間も手間もかかり、乾燥させるための燃料代も必要となる。キロ単価は3500~4000円はなければ、採算性は確保できないという指摘もある。

 08年以降、キロ単価は低下傾向となり、12年には同2854円と、3000円を割り込んだ。さらに13年に入るとその傾向はさらに続き、6月に同1732円、7月は1717円まで落ち込んでしまった。林業関係者の中には「この価格では、生産者が『もう、つくらない』と意欲をなくしてしまわないか」と危惧する声まで出ている。

 11年4月に福島県産の原木シイタケから放射性物質が検出されたことに絡む「風評被害」は否めない。ただ、エリンギなどの登場でキノコ全体の消費は伸びているというデータもあり、“乾しいたけ離れ”が、食文化の変容で味覚が変わってしまったのか、特に若い世代で進行していることも確かだ。

乾しいたけ価格の推移
 「水で戻して食べることを知らない家庭も出てきた」と、ふるさと物産館「海幸山幸」(宮崎市)に諸塚村産乾しいたけなどを届ける浮田宗一郎さんは話す。同館では、食べ方をチラシなどで紹介しながら、世界的な森林管理基準・FSC森林認証を取得して生産した商品をアピール。浮田さんは「大切な食文化として伝えていく取り組みも大切」と先を見据える。


いい味が出せる“脇役”
諸塚村産の乾しいたけなどが並ぶふるさと物産館「海幸山幸」。食べ方の啓発にも力を入れ、消費拡大を目指している

諸塚村産の乾しいたけなどが並ぶふるさと物産館「海幸山幸」。食べ方の啓発にも力を入れ、消費拡大を目指している

 県内でも有数の乾しいたけ生産地の諸塚村では、消費拡大へ独自の「スープ・料理コンテスト」を企画し、開催へ準備を進めている。東京の有名なスープ店とタイアップし、その発信力も生かして、乾しいたけの魅力を広くPRしたい考えだ。

 短期収入源としての役割がある特用林産物産業を守り育てることは、中山間地の経済を活性化させることにもつながる。同村の矢房孝広産業課長は「乾しいたけは食卓の脇役にしかなれないが、とてもいい味を出せる脇役。登場できる場面を少しでも増やしていただけるよう啓発に力を入れていきたい」と話している。

(経済部・鬼束功一)

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