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2019年11月12日(火)
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成長企業物語(3)

2013/06/18

 市場ニーズ  「ターゲットの明確化」が鍵

 
 新商品開発や新規参入など、事業を成長させる手法はさまざまだが、事業の行方は、市場ニーズを的確に捉えられるかが左右する。市場ニーズの把握は商品開発の前提であり、当然の取り組みであるものの、作り手の思いだけが先行して市場が立ち上がらず、失敗するケースが後を絶たないのも事実。クリップウェア(宮崎市、小田島潔社長)、三共(小林市、外村公明社長)はそれぞれ、市場ニーズにこだわった事業展開によって、成長のきっかけをつかんだ。

「開かずピンちゃん」の成功
年間60万個以上が流通するヒット商品となったクリップウェアの「開かずピンちゃん」

年間60万個以上が流通するヒット商品となったクリップウェアの「開かずピンちゃん」

 「県内では、置いてない文具店を探す方が難しい」。雑貨の製造、販売を手掛けるクリップウェアの小田島社長が、自信を込めてこう語る「開かずピンちゃん」。服に穴を開けずに名札を装着できる留め具で、年間60万個以上を売り上げ、販売網は全国に広がる。そのヒット商品も販売を開始した当初は、「売れるわけない」と複数の問屋から門前払いの扱いを受ける。

 開かずピンちゃんは、2006年に開発。それまで市場に全くなかった商品の事業性を確かめようと着手したのが、ターゲットを絞った試供品の“ばらまき”である。

 商品のターゲットは明確。名札を使う小学生の子どもを持つ母親たちだ。製造した4000個のうち半分を、宮崎市清武町を中心に無料で配布。反応は良く、商品性の高さを確信する。その地道な市場調査と同時に、宮崎市内の文具店で試験的に販売もスタートさせた。すると、納入した20個は瞬く間に完売。追加の50個も即、売り切れとなった。

 しかし、一方で、「流通の要」と言える問屋からの反応は薄いままだった。雑貨などの商品は、問屋に卸さなければ販売網を拡大するのは難しい。「問屋で裁量権を持つ人は、ほとんどが中年の男性。商品価値を判断できない」。小田島社長はこう考え、「ボトムアップ」の販売戦略にかじを切る。

 流通経路は一般的に、問屋に卸し、そこから小売に流れる仕組みだが、発想を転換。「最終消費地」である小売店に無料でばらまき、末端で立ち上がったニーズを問屋へと吸い上げる戦略をとった。小田島社長は飛び込みで、関東、関西、東海地方の、小学校の近辺にある文具店をしらみつぶしに営業。無料で置いてもらおうとしても、話を聞いてくれる店は10件に1件ほどだ。「売れるという自信はあった」が、「心が折れそうだった」と振り返る。

 努力が実を結んだのは、営業開始から約1年後。狙い通り、文具店から問屋への問い合わせが増え、その問屋からクリップウェアに注文が相次いだ。小田島社長は「ターゲットが明確だったこと。それに、きちんとしたニーズがあり、そのニーズを掘り起こす売り方ができたことが成功につながった」と分析する。

 開かずピンちゃんは、最初の商品開発から3回の改良を加えている。使いやすさはもちろん、パッケージやデザインも変更。「全国で勝負できる商品づくり」を徐々に進めてきた。開かずピンちゃんのヒット以降、類似商品として携帯ストラップやネームホルダーも開発。販売ルート確立へめども付いたが、「ターゲットが幅広く、今後、どうなるかは未知数な部分もある」と見据える。

 小田島社長は、「ニーズに沿った商品を開発できるかどうか。ニーズが明確であればあるほど、売り先や販売方法を間違えることはない」と実感している。

新分野参入で商機
成長市場と捉える木質ペレット事業に参入した三共のペレット製造工場

成長市場と捉える木質ペレット事業に参入した三共のペレット製造工場

 土木、建設関係事業を手掛けてきた三共が2008年、木質ペレットの製造、販売をスタートさせたのは、本業の市場縮小が背景にある。外村社長は「時代を捉えたマーケットでなければ、事業存続は難しい」と強調する。

 建設業界は、公共投資の縮小を背景に新分野への参入が進んだ。参入先で目立ったのは農業や介護分野だ。が、同社は、人口減少や立て替え需要の増加を背景に、廃屋が増えていくとの予測を立て、廃材を受け入れる産業廃棄物の中間処理事業に参入。その理由について、外村社長は「廃屋の解体も絡み、本業である建設業とも関連が深い。異業種である介護や農業ではノウハウや知識がなく、難しいと判断した」と説明する。その後、製材業者の減少によって、将来的な不足が懸念されていた畜産用敷料の製造をスタート。それをきっかけに、JA関係者から園芸作物用のバイオマスボイラーに使用する木質ペレット製造の依頼が入るようになり、事業拡大への視界が開けた。

 ペレット生産量は12年実績で328トン、売上高は約1700万円と、現状は軌道に乗ったとは言い難い。しかし、原油価格の高騰などを追い風にバイオマスボイラーの普及が進み、今期は生産量900トン、売上高5000万円を見込む。

 一方、バイオマス発電の市場拡大で、木質ペレットの原材料である未利用間伐材の価格が上昇、コスト負担をどう軽減するかといった課題も浮上してきた。が、外村社長は「ペレットの需要は拡大しており、手応えを感じている。収益性はまだ低いが、地域に根ざして雇用を生み、将来にわたって継続性があるかどうかが、事業を進める上で重要なことだ」と指摘する。

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