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働く女子たちの今(3)

2013/03/19

 会社経営  人の育成や社会貢献目指す

 自分の思いを形にするために創業の道を選ぶ女性たち。その中には個人事業にとどまらず、事業を拡大するために会社の法人化などさらに大きなステージに上がる選択をする女性もいる。そこには、経営者として思い描く目標を達成するために人を育成し、事業を通じた社会貢献を目指す姿があった。

スタッフが働きやすい職場に
スタッフから報告を受ける「リトルフェニックス」の猪﨑社長(中央)。スタッフとのコミュニケーションを大事にし、働きやすい職場を目指している

スタッフから報告を受ける「リトルフェニックス」の猪﨑社長(中央)。スタッフとのコミュニケーションを大事にし、働きやすい職場を目指している

 障害児向けの放課後等デイサービス事業所を運営する「リトルフェニックス」(宮崎市)の猪﨑美紀社長(37)が会社を設立したのは2011年3月。当初は、児童クラブの開設を検討していた。小学校に入学する長女が、定員に空きがなく児童クラブに入れなかったためだが、周囲に話を聞く中で「障害児を放課後預かる場所が少ない」という母親たちの声が切実で、「そちらが先」と障害児対象の放課後等デイサービス事業所立ち上げを決めた。福祉の経験はなかったものの、「働く母親としてお母さんたちの気持ちもよく分かった」という。

 元々、23歳から宮崎市で生命保険代理店の仕事を13年間続けてきた猪﨑社長。27歳ごろからマネジャーとして約10人のスタッフを抱えていただけに、自ら会社を設立して人を雇う事に対してはそれほど壁は感じなかったという。「一番大変だった」という事業資金も、保険代理店の仕事を続けていたからこそ確保できた。

「スマイルシード」では、創作活動や農業体験などさまざまな療育プログラムを提供している(リトルフェニックス提供)

「スマイルシード」では、創作活動や農業体験などさまざまな療育プログラムを提供している(リトルフェニックス提供)

 現在、宮崎市に「スマイルシード」という名称で3事業所を開設。最初、4人だった従業員も16人まで増やして約100人の子どもたちを預かり、農業体験や創作活動などさまざまな療育プログラムを提供している。

 「スタッフが生き生きと働くことができる職場を目指したい」という猪﨑社長が大事にしているのは、スタッフとのコミュニケーション。毎日のように打ち合わせを行い、各事業所の責任者と細かな意思疎通も図っている。事業内容に関しても、スタッフから挙がってきた活動案を取り入れている。「スタッフあっての会社」と話す猪﨑社長。福祉分野では珍しく、補助金も一切受けない株式会社という形態を選んだのも、スタッフの成長に合わせて事業で得た利益を給料に反映させたいとの思いからだ。

 今後の新たな事業展開として、預かっている子どもたちの就労の場づくりも考えている猪﨑社長。「高校を卒業しても子どもたちが就労できる場が少ない。事業所で作った野菜の袋詰めなど何かそういう仕事が提供できたら」と新たな構想に意欲を燃やしている。

寝食忘れ自分の限界超える
 
 帝国データバンク(東京)の全国社長分析によると、全社長に占める女性社長の比率は2000年の5.56%から11年は5.94%と微増。ただ、実数で比較すると、11年は7万3225人で00年から約1万人増加しており、女性の社会進出が進んでいる傾向がうかがえる。本県でも同社宮崎支店(宮崎市)の社長分析(12年3月)で、県内の女性社長数は807人(個人経営の代表者も含む)。全社長数(1万2930人)に占める割合は6.24%で全国平均(5.94%)を上回っている。

 ただ、中には個人経営も含まれており、実際に法人化して従業員を抱える会社の女性経営者は、全体的にはまだ多くはない。宮崎商工会議所の新地正宏主事(経営指導員)は「個人開業の場合は趣味の延長という意識の人も少なくない。そこで意識を変え、覚悟を決めて一歩を踏み出せるかどうか」と指摘する。 

スタッフとイベント企画などについて打ち合わせする「芙蓉香」の緒方社長(中央)

スタッフとイベント企画などについて打ち合わせする「芙蓉香」の緒方社長(中央)

 そんな覚悟を決めて一歩を踏み出した一人が、リラクゼーションサロンなどを経営する芙蓉香(宮崎市)の緒方芙美子社長(43)だ。「寝食も忘れて自分の限界を超えて仕事したような経験がある人。人を雇って経営していくには、それくらいの覚悟が必要」と経営者としての厳しさを口にする。

 緒方社長は、結婚とともに幼稚園教諭を辞めて専業主婦として2人の娘を育てている時、食や環境など自然療法的な育児を学ぶサークルを立ち上げた。祖父母が小林市で自然療法を主にした治療院を開いており、幼いころから病気になっても薬に頼らない治療を受けて育った。それだけに、子育てする中で周囲の母親たちが安易に子どもに薬を飲ませる現状に危機感を持ったという。サークルでは納得できず、「アロマ、ハーブなどを勉強して世の中に自分たちが受けてきた自然療法を伝えたい」と、28歳で資格を取得。02年、妹と2人で宮崎市恒久にアロマ&ハーブショップを創業した。

 ただ、当時はアロマと言っても一般的ではなく、外見を美しくする痩身(そうしん)などのエステと同一視される程度。創業資金などの融資を受けようと金融機関に行っても「うさん臭く見られ、商売になるはずがない、となかなか理解してもらえなかった」。マッサージやスクール開催などの事業計画説明のために金融機関に何度も足を運び、ようやく創業にこぎ着けたという。 

新たな意識生まれ法人化
芙蓉香が宮崎市高千穂通に開く直営サロン「ラヴ・ビューティー高千穂店」。店内ではアロマやハーブを使った各種マッサージが受けられるほか、アロマ商品なども販売されている

芙蓉香が宮崎市高千穂通に開く直営サロン「ラヴ・ビューティー高千穂店」。店内ではアロマやハーブを使った各種マッサージが受けられるほか、アロマ商品なども販売されている

 最初の店は、宮崎市恒久の子ども向け店舗が並ぶ一角に設けたため、親子連れなどの客も多く、イベントで体験やサービスなどを積極的に実施し、徐々に顧客を獲得。並行してアロマコーディネーター、ベビーマッサージ養成講座などのスクールも開講し、2年間は子どもを実家に預け「寝食忘れて働いた」という。体調を崩すほど仕事に没頭しながら、店舗を同市中心部のファッションビルや病院施設などに順調に拡大していった。

 株式化したのは創業から6年目の08年。その理由を、緒方社長は「個人レベルでは自然療法を浸透させたいという思いを実現するには限界があると感じた」と話す。商工会議所が創業間もない経営者や創業希望者らを対象に開催している創業塾などで経営を勉強したり、ほかの経営者らと交流したりする中で視野も広がり「個人で成功するというだけではなく、企業は社会の一員として貢献すべきという意識も芽生え法人化を決心した」という。

 起業から11年目、法人化から5年が経過した現在は、サロン1店、スクール1校を開設する。スクールの卒業生は延べ約1350人に上り、現在雇っているスタッフ8人もスクールの卒業生だ。近年は、ビルのテナントから路面店に設置場所を切り替えている。今後は、さらに広く自然豊かな癒やされる環境で、さまざまなセラピーを組み合わせたスパをオープンする計画だ。オリジナルの商品開発やアロマの知識などを普及するセミナー開催にも力を注ぐ。

 緒方社長は「子育てなどとバランスを取りながら会社を経営するのは大変だが、続けることで見えることもある。自分の思いを実現するために死ぬ気で働いたような経験がある人でなければ、『社会のために』と思えないのかもしれない」と指摘する。その社会貢献につながる一つの活動として挙げられるのが、病院や福祉施設で実施しているマッサージのボランティアだ。普及はまだこれからだが、緒方社長は「もっと医療、福祉の現場で提供できたら」と目標を掲げ前に進んでいる。
(経済部・高森千絵)
=次回は3月26日掲載=

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