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2020年2月22日(土)
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働く女子たちの今(1)

2013/03/05

 企業の環境づくり  「ノー残業」や託児施設で働きやすく


 「女性が元気」という声を耳にする機会が増えた。少子高齢化が進む国内で、女性のパワーを新たな戦力として経済再生に生かそうという動きも出始めている。国も社会や職場の意識を変え、女性の活躍の場を広げることにより、社会経済の活力アップを目指そうと2012年6月、「働く『なでしこ』大作戦」と題した行動計画を策定。県内でも女性を生かすための環境づくりに企業も取り組みつつある。そんな中で子育てしながら働き続けたり、自ら起業して道を切り開いたりなど、県内で働く女子たちの今を追う。


会社のイメージアップ
着ぐるみの制作に追われるKIGURUMI.BIZのスタッフたち。見渡すと働いているのはすべて女性だ

着ぐるみの制作に追われるKIGURUMI.BIZのスタッフたち。見渡すと働いているのはすべて女性だ

 空前の“ゆるキャラ”ブームで事業を拡大している着ぐるみ制作会社「KIGURUMI.BIZ(キグルミビズ)」(宮崎市、加納雄一社長)。全国から注文が舞い込む同社を支える社員30人はすべて女性だ。加納社長が妻の加納ひろみ工場長と創業し、従業員を雇い始めたのは05年。器用さやかわいらしい感覚が求められたりという仕事の性質上、自然に女性のスタッフが増えたという。

 女性が働き続けられるような環境づくりを心掛けてきた同社が目標として掲げるのが「残業ゼロ」。昼休憩1時間を除く午前9時から午後5時までが就業時間。残業は申告し、後日なぜ就業時間内に終えられなかったかを検討し、その後の仕事に反映させる。

 「アフターファイブは遊びでも勉強でも何かを吸収するために使い、それを仕事に反映させるというのが社長の方針」(加納工場長)で、「ノー残業デー」には社長が強制的に事務所内の照明を消して帰らせるという。

 独身や子育て中の社員ら4、5人で「職場意識改善チーム」をつくり、「残業ゼロ」や「有休取得率アップ」などを進めるために取り組みなども話し合っている。経営的にも受注が多く残業が多い月より、受注が少なく残業時間が少なかった月の方が会社の利益は多かったという。加納工場長は「製作は力仕事。長く働いても能率は落ち残業代だけが増えていく」と説明する。

入社4年目で縫製を担当する下山さん。3人目の子供を妊娠中で「出産後も仕事を続けたい」と話す

入社4年目で縫製を担当する下山さん。3人目の子供を妊娠中で「出産後も仕事を続けたい」と話す

 5月に3人目の子供を出産予定の入社4年目の下山直子さん(32)=宮崎市清武町船引=は「周りのスタッフもサポートしてくれて仕事がとてもしやすい」と話す。リーダーを務める縫製チームの就業時間は現在、午前8時半~午後4時半。幼児を育てるママさん社員が多いため、就業時間を早くすることで保育園の迎えも渋滞に巻き込まれずに行くことができるという。下山さんは「職探しをしている友人の中には『2人目を妊娠したら辞めてもらいたい』と言われた話も聞く。恵まれた環境で仕事ができているので、産後も復帰して続けたい」と意欲的だ。

 口コミで聞いたのか、「女性が働きやすい職場と聞いた」という就職希望者が来たり、女性が多く丁寧な仕事を期待して注文が来る場合もあり、会社のイメージアップにもつながっているという。「職場環境だけは他社にも負けないという自信を持っている」と加納工場長。2012年法人化した同社は現在、社会保険労務士の指導を受けながら人事制度や評価制度などの整備も急いでいる。

人材確保にも効果
宮崎市の住宅型有料老人ホーム「いちごの里柳丸」。この1階にスタッフ用の託児施設を設けている

宮崎市の住宅型有料老人ホーム「いちごの里柳丸」。この1階にスタッフ用の託児施設を設けている

 12年4月、宮崎市新城町にオープンした住宅型有料老人ホーム「いちごの里柳丸」には保育室(広さ約25平方メートル)が設けられている。ここに預けられているのは同施設で働く社員の子供たちだ。ホームを経営する「いちごの里」(宮崎市、曽我保社長)は10年に不動産業界から介護事業に参入し、介護施設4カ所(定員92人)やデイサービス事業などを展開。正社員やパートを含めたスタッフ約80人が高齢者の介護に従事している。その7割は女性だ。

 「一番頑張ってくれる世代が子供がいて働けないというのはもったいない。1、2人でも利用してもらえばいいかなと思った」と託児施設を設けた理由を説明する江口綾子部長。実際に3カ所目となる新城町の施設をオープンするに当たり、スタッフの7、8人は1歳未満の子供がいたという。

いちごの里柳丸に設けられた託児施設。デイサービスの部屋や事務所に隣接し、子供たちの元気な声が聞こえてくる

いちごの里柳丸に設けられた託児施設。デイサービスの部屋や事務所に隣接し、子供たちの元気な声が聞こえてくる

 託児施設の利用時間は午前7時から午後10時までで、利用料は1回昼食付きで500円(昼食なしは400円)、昼・夕食付きで600円。現在、4人の保育士を雇っており1日平均6、7人の幼児が預けられているという。女性スタッフだけでなく、共働きの男性スタッフも利用している。親が働く施設に幼児を送迎したり、時には親の買い物のために預かったりなど、融通をきかせ運営しているという。

 実は最初、保育士は2人で託児時間も午前8時半から午後8時までだったというが、スタッフの研修や会議などが夜間に及ぶこともあったという。このため「保育室を設けることで、スタッフの勉強会への参加率が高まり、現場の実力も上がる」(江口部長)という効果を重視し、保育士を増員して託児時間も充実。4カ所目となる桜新町の施設にも託児施設(32平方メートル)を設置し、保育士を新たに3人配置する。
デイサービススタッフの橋口さん(右)は長女歩叶ちゃん(左)を託児施設に預けて働く。仕事の合間に顔を見に来ることもでき、「安心できる」と橋口さん

デイサービススタッフの橋口さん(右)は長女歩叶ちゃん(左)を託児施設に預けて働く。仕事の合間に顔を見に来ることもでき、「安心できる」と橋口さん

 デイサービススタッフ橋口加奈子さん(34)=同市清武町加納=も託児施設利用者の一人。長女の歩叶ちゃん(1歳)を預けて働いており、「子供もすぐ目の届く所にいるので安心だし、仕事の合間に様子を見に行ける」と満足している様子だ。現在は2人目を妊娠中で「出産したら、すぐ復帰して働きたい」と仕事への意欲も旺盛だ。

 人材不足が叫ばれる介護現場にあって、「スタッフのつなぎ止めにも効果があり、採用希望者も比較的多い」と江口部長。託児施設があって働きやすいと聞き面接に来る応募者もいるという。介護施設の見学者には「子供がいるからにぎやかでいい」と好印象を持つ人も少なくないなど、思わぬ副産物も生み出しているようだ。 
 
経営者の考え方次第
 これらの企業のように女性たちが働き続ける環境づくりは進んでいるように見えるが、宮崎労働局雇用均等室の福手啓介室長は県内企業の状況を「まだまだ遅れている」と分析する。県労働条件等実態調査結果(11年度)によると、回答した616事業所のうち、育児休業制度を就業規則で規定している事業所の割合は67.7%。さらに仕事と家庭の両立支援のための各種制度の導入状況については、「所定外労働(残業等)の免除」が41.6%、「短時間勤務制度」は39.8%、「始業・就業時刻の繰り上げ・繰り下げ」が31.3%、事業所内託児所は1.8%にとどまっている。

 同室にも妊娠等による解雇や不利益などに関する相談が12年度には29件寄せられている。福手室長は「規模が大きい企業の方が人手に余裕があり取り組みやすいのは確かだが、一番は経営者の考え方次第」としている。
(経済部・高森千絵)
=次回は3月12日掲載=

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