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2018年10月21日(日)
フォーカス

海外展開(3)

2012/10/16

工業製品 海外展示会で独自の技術PR


 食料品などに比べ、海外展示会への出展など輸出の取り組みが遅れてきた県内の工業製品分野。そんな中、11月に中国・上海市で行われる国際工業博覧会に県内から初めて2社1団体が出展する。ものづくりに携わってきた県内の中小企業も、独自の技術で海外に売り込みを図ろうとしている。

 県内のものづくり産業に携わる中小企業は海外への販路開拓をどう考えているのか-。県が2011年度、県工業会に委託して実施した意識調査(136社回答)によると、国際化への取り組み状況の項目で、「具体的な事業展開をしている」が24%、「将来的な取り組みを検討中」もしくは「具体的にはないが取り組みを勉強中」という回答が40.6%と関心の高さがうかがえる。

旭化成テクノシステムが上海の展示会に出品する油漏れ検知器「エポラームC」。タンクヤードなどで水面に浮かべて油を検知させる(同社提供)

旭化成テクノシステムが上海の展示会に出品する油漏れ検知器「エポラームC」。タンクヤードなどで水面に浮かべて油を検知させる(同社提供)

 この調査結果を受けた県は12年度、海外販路開拓支援事業を県工業会に委託。同工業会の呼び掛けに手を挙げた延岡鉄工団地協同組合(延岡市)、旭化成テクノシステム(東京)、テクノマート(宮崎市佐土原町)が11月6~10日に中国・上海で行われる中国最大級の国際工業博覧会で技術を展示する。

ニッチながら3万台以上販売
 「他社に先駆けて早めに商品をPRし、市場を確保しておきたい」。こう話し、中国本土での展示会初出店に期待をかけるのは、旭化成テクノシステム(上田幸弘社長)延岡事業所の松本史朗所長だ。延岡市に工場を置く同社は今回、油類を大量に備蓄しているタンクヤードなどで使われる油漏れ検知器を出品する。

 1976(昭和51)年に同社が発売した油漏れ検知器「エポラームC」は、水面に浮かべる円盤状の検知器と、油に接した検知器の電極の変化を検出して信号を送る変換器で構成される。国内では油の流出事故を未然に防止するため77(同52)年に消防法が改正され、1万キロリットル以上を備蓄するオイルタンクへの漏油検知器の設置が義務付けられた。この流れを受け、同社はこれまでに国内の石油、電力メーカーなどを中心に3万台以上を販売してきた。製品の平均寿命は5~8年ほどで、一度導入した企業の大半が取引を継続しており、売り上げの8割は機器更新に関する収益が占めるという。

 国内における同社のシェアは6~7割に上る。背景には、国内に同種の機器を販売するメーカーが数社しかなく、激しい競争にさらされにくいという事情もある。

 販路拡大を見据えた海外展開は20年以上前にスタート。台湾は台北と高雄2カ所に販売店を開設しており、韓国には日本の代理店を通して販売。価格は日本とほぼ同額ながら、累計1000台以上を売り上げてきた。松本所長は「大手メーカーが参入するほど大きな市場はない上、商品自体の技術競争力が強く、価格を下げなくても大丈夫だった」と、適度に“ニッチ”な市場であるがゆえに生き残ってこられたという認識を示す。国内外で高いシェアを維持してきた同社だが、日本企業が生産拠点を海外に移す動きに歯止めがかからず、今後の国内での販売に関して「現状維持が精いっぱいで、拡大は見込めない」(松本所長)という。

 他方、著しい経済発展を記録してきた中国では、これまで環境面への配慮という視点は見過ごされてきたという。日本のような油漏れ事故への対策を定めた基準などは現段階ではないというものの、同社は今後環境保護の動きが強まり、需要も高まると見込んでいる。それだけに、松本所長は「どれほどのニーズがあるかを実感し、販売店になってくれるところを探したい」と海外展示会出展の目的を明確化。今後は中国に限らず、タイやインドネシアなどの東南アジアへの展開も視野に入れているという。

テクノマートが導入している3次元のCAD/CAM。パソコン画面にデータを入力し、金型の加工プログラムを作成する

テクノマートが導入している3次元のCAD/CAM。パソコン画面にデータを入力し、金型の加工プログラムを作成する

コストダウンと納期短縮
 一方、3次元モデリングによる加工部品の設計・制作を行うテクノマート(鮫島亘社長)は、金型製作技術を展示会で紹介する。売りは「従来品と比べ半分のコストと3分の1の納期」を実現した技術だ。同社は3次元のCAD/CAM(コンピューター利用設計、製造システム)を導入し、製作工程をデジタル化。パソコンの画面にデータを入力、処理するだけで金型に沿った加工プログラムを作成し、そのデータがマシニングセンターに送られて金型が製作される。

 この技術により、図面作成や金型加工の手間や時間を大幅にカット。さらに金型の原材料も従来の鉄ではなく、アルミと鉄を混ぜた“ハイブリッド素材”を採用して、コストを安く抑えたという。

 「少量多品種」の受注も受け付けており、各企業の試作品、製品開発に関わる金型の注文も多い。企業の新商品開発では何度も試作を繰り返し、微調整を加えていく作業が必要になる。ただ試作品自体は少量でじゅうぶんな場合が多く、安くで多品種の試作品を製作できるのが理想的だ。「企業としても設備的に大きな資金をつぎ込みたくないという事情がある。少量生産の場合はコストが高く付く-という常識があるが、うちの場合はそこをできるだけ抑えようと考えた」という。この考えが奏功し、これまで医療機器や自動車部品メーカーの試作品などのための金型も手掛けてきた。

テクノマートが手掛けた金型で作られた製品。自動車や医療機器メーカーなどからの受注もある

テクノマートが手掛けた金型で作られた製品。自動車や医療機器メーカーなどからの受注もある

 「国内でもまだ、技術を知ってもらう努力が必要」と展示会などに出展を続ける同社だが、国内だけでは開発部門のコスト削減などで、決して楽観できる状況ではない。鮫島社長は「中国では研究、開発などはまだこれからの段階だと思うが、まずはコストやスピードで中国に勝てるかどうか、デジタル加工技術がどう通用するか肌で感じたい」と話している。

 このほか、延岡鉄工団地協同組合(22社)は3社が代表して出展し、金属加工などの技術を紹介するという。

=次回は10月23日掲載=
(経済部・高森千絵)

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