みやビズ

2018年5月22日(火)
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海外展開(2)

2012/10/09

農畜産物 直接取引で輸出拡大へ


 国内消費の先細りと市場のグローバル化の中で、本県の農業分野でも海外に農畜産物の販路を模索する動きが出始めている。JAグループ宮崎は巨大な人口を抱える中国への入り口と位置付ける香港に拠点を設け、販路拡大を狙っている。

8月中旬に香港で開かれたティーフェアで初出展した宮崎経済連直販のブース。次々とバイヤーが訪れていた

8月中旬に香港で開かれたティーフェアで初出展した宮崎経済連直販のブース。次々とバイヤーが訪れていた

 「中国はお茶の本場なので、あまり期待していなかったが、結構反応がいいようだ。ここからどう関係をつなげていけるかが勝負」。JA宮崎経済連(羽田正治会長)香港事務所の押川雄三所長は8月中旬、香港会議展覧センターで開かれた「インターナショナルティー・フェア」(香港貿易発展局主催)の会場で、そう話した。フェアに初出展した関連会社、宮崎経済連直販(山﨑政志社長)のブース運営を手伝うために来場していたのだ。

 フェアは日本や中国、韓国など12の国と地域から茶に関係する約300業者が出展。会場の一角で、宮崎経済連直販は福岡県の八女茶を扱う業者2社と共同でブースを構えた。釜炒(かまい)り茶や煎茶などの「みやざき茶」をPRし、試飲では全国茶審査技術協議大会で最高位の十段を取得した同経済連直販職員の関谷祥嗣さんが茶を振る舞うと、ブースには絶え間なくバイヤーが訪れた。様子を見守っていた県担当者も「思った以上の好印象」と反応の良さに少々興奮気味。フェア期間中、同経済連直販には高級ホテルなどから1日20件程度の取引の話が寄せられたという。

店の定番化目指す

香港のスーパーで販売されている宮崎産の甘藷

香港のスーパーで販売されている宮崎産の甘藷

 今回のみやざき茶ブースの初出展は、県産農産物の海外での販路拡大を模索していこうという同JAグループにとって、市場調査を兼ねた試みの一つだった。同経済連によると、青果物の海外輸出は2005年、キンカンやイチゴなどからスタート。その後、香港を中心に炊飯器などに入れて蒸すことができる規格外の小さな甘藷(かんしょ)の需要が増大し、以来、香港やシンガポールなどで本県産甘藷が定着。11年度の甘藷売上高は2473万円(109トン)で、輸出青果物全体の86%を占めた。ピーマンやカボチャ、サトイモ、ミカンなども輸出こそしているが、量は限定的だ。

 青果物に先駆けて輸出を始めたのが畜産物で、その大半は付加価値の高い牛肉だ。ミヤチク(都城市高崎町)が1990年から米国向けに牛肉輸出をスタートし、その後、香港やシンガポールへも取引を拡大。BSE(牛海綿状脳症)などによる一時中断を挟んで、再開後の2010年度は約47トン(1139頭分)を輸出。その後も、口蹄疫や東日本大震災による影響で中断が続いていた米国へは、12年9月中旬に輸出を再開した。米国輸出はピーク時の09年度に30トン(685頭)に上っており、同経済連企画広報室は「09年度の水準まで戻したい」と当面の目標を設定している。

JA宮崎経済連の香港事務所。金融機関や日本企業の支店などが事務所を構える香港の中心地にある

JA宮崎経済連の香港事務所。金融機関や日本企業の支店などが事務所を構える香港の中心地にある

 同経済連は12年2月、企画広報室内に「海外事業推進班」を設置。今や牛肉の輸出量トップで中国本土への入り口と位置付ける香港に6月に事務所も開設し、現在、押川所長を含め職員2人が常駐している。開設の狙いは直接取引の増大。これまで行ってきた輸出では、物流段階で輸出業者や仲卸など複数の業者が介在。中間コストも掛かり、消費者に提供する出口部分の情報も把握できていなかった。そこで、流通過程を極力簡素化して直接取引を増やし中間コストを削り、小売り、飲食店の要望などの情報も速やかに把握することを目指している。

 直接取引の拡大へ飲食店などを中心に販路開拓を目指す同事務所。9月中旬には現地で開催された「レストラン&バー香港2012」に出展し、宮崎牛や加工品などをホテルやレストランのシェフ、マネジャーにPRした。押川所長は「肉のほか、日向夏ミカンのジュースや茶は反応が良かった。商談につながるものもあった」と手応えを感じたようだ。 

 現地に常駐することで得られる情報も輸出品目などの戦略を練る上で貴重だ。「甘藷のようにこちらが全く考えていない品目に実は需要がある場合も少なくない。現地で生活して初めて気づくこともある」と同経済連企画広報室の長埜憲敏課長。「大きなロットで出せる店との定期的な取引が最終的な目標。香港を窓口に中国の胃袋をつかむチャンスを少しでもうかがいたい」と期待を寄せる。

卵の生食文化浸透へ

香川ランチが海外に輸出している鶏卵商品と、今後輸出を目指す「鮮々生々」

香川ランチが海外に輸出している鶏卵商品と、今後輸出を目指す「鮮々生々」

 「少子高齢化で国内の食は細ってきている。他社に先駆けて海外向けを考えておかなければ遅れを取ってしまう」。鶏卵や卵加工品を生産、販売する香川ランチグループ(川南町)の香川憲一代表が海外を意識し始めたのは5年ほど前だ。卵の鮮度を持続させる業界初の技術の開発が契機となった。「特許を取得したこの技術で、世界に日本の卵の生食文化を伝えたいと思った」と香川代表。

 以降、貿易会社を探し、輸出先は一番近くて輸出しやすい香港に決めた。不定期ながら約3年前から商品の輸出を開始。1年後には月1回と定期的な取引となり、現在は隔週で商品を輸出するまでになっている。1カ月当たり約2000パックを日系スーパーのジャスコやイオンに卸している。

 輸出しているのは当初計画していた商品ではなく、通常の生食用鶏卵。特許を使った商品は包装や資材で割高になるため、香港サイドから「まずは安い商品を」という要望があった。というのも、卵を生で食べない食文化の違いもあり、香港の場合は卵の鮮度にこだわりが少ないという。安定的な取引ルートを香港で確立しつつあるものの、現在の売り上げは250万円ほどで全体の1%にも満たない。

 ただ、香川代表が現段階で目指しているのは売り上げ増ではなく、「海外の人に新鮮な生卵を食べてもらうこと」。背景には養鶏業界の疲弊に対する危機感がある。15年前に国内で30万戸だった養鶏業者は、最近では3000戸と100分の1に減少。生卵の需要も確実に減少している。生食文化を世界に広めることで、市場の開拓、拡大につながると信じる香川代表は毎年、市場調査などのために香港を訪問。先日もバイヤー向けに特許商品の試食会を開き、卵の鮮度の良さをPRした。「とにかく今は生食の文化を伝えたい」。香川代表の夢はまだ道半ばだ。
=次回は10月16日掲載=
(経済部・高森千絵)

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