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2018年4月24日(火)
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海外展開(1)

2012/10/02
 人口減に伴う国内市場の縮小を背景に、海外に成長の活路を求める企業が増えつつある。県内からも市場拡大が期待されるアジア、未開拓に等しい欧州などに販路や生産拠点を求める動きも出始めている。食品や農畜産物、工業製品などで海外を目指す県内企業の挑戦を紹介し、海外展開の今後を探る。
(経済部・高森千絵)

 加工品  飲食店などへ地道に販路開拓


山深い旧東米良村銀鏡地区でゆず加工品を製造する「かぐらの里」の事務所と工場。ここから商品が海外に輸出されている

山深い旧東米良村銀鏡地区でゆず加工品を製造する「かぐらの里」の事務所と工場。ここから商品が海外に輸出されている

 8月中旬に訪れた香港。ジャスコ康怡(コーンヒル)店の食品売り場の一角で、本県のゆず加工品メーカー「かぐらの里」(西都市、濵砂修司社長)製造のゆずこしょうを見つけた。同社があるのは海外とは縁もゆかりもなさそうな山深い旧東米良村の銀鏡地区。同市中心部から車でも50分程度はかかる。

 116世帯、人口228人(9月1日現在)というこの小さな集落を支える産業が、ユズ栽培。同社は1978(昭和53)年に「かぐら里食品」として創業し、ゆず加工品の生産、販売を手掛け2012年7月に農業生産法人・かぐらの里に組織変更した。

 従業員10人で100種類以上のゆず加工品を手掛ける同社の年商は1億6000万円。販路の8割は県外向けで、このうち海外での売り上げは約2000万円に上り、全体の12~13%を占める。過去の輸出先は、単発的な取引も含めると九つの国や地域に及んでいる。

 中でも安定的な取引先となっているのが米国だ。現在、年間で5品目約1万5000点を輸出しており、世界で展開する著名な日本食レストラン「ノブ・レストラン」や、同レストランが手掛ける加工品にも同社製品が使われているというほど、同国ではひそかに裾野を広げつつある。きっかけは約15年前。日本で開かれた物産展に出展した際、米国在住の日本人シェフが同社のゆず加工品に目を留めたのが始まりで、「日本の商材を広めたい」という日本人シェフを通じ、米国のレストランなどに取引が拡大。同国での安定した販路獲得につながった。

 ただ、濵砂社長が本格的に海外を販路として意識したのは3年前。日本貿易振興機構(ジェトロ)主催のブラジルでの商談会に参加し、商品に対する良い反応を得た濵砂社長は「試食で現地料理のシュラスコの牛肉にゆずこしょうを付けて出したら好評で、自信を持てた」と日本の味が受け入れられる可能性を見いだし、海外を視野に入れ始めた。

まずはルートをつくる
かぐらの里で製造しているゆず加工品について説明する濱砂社長。「会社成長のためにも海外への販路開拓を目指したい」と話す

かぐらの里で製造しているゆず加工品について説明する濱砂社長。「会社成長のためにも海外への販路開拓を目指したい」と話す

 以来、積極的に海外への販路開拓に取り組み始めた同社。香港で開催される食品展示会「香港フード・エキスポ」(香港貿易発展局主催)に2010年から2年連続で出展。1年ほど前から日本の商社を通じ、ジャスコなど香港向けにゆずこしょうを毎月40~60個輸出している。濵砂社長は「量にはこだわらず、まずは市場の流れをつくることを優先している。ルートをつくった上で、それをどうやって伸ばしていくかを考えたい」と話す。

 香港以外では、海外で高級スーパーを展開して物流網を有する日系企業と取引していることから、同社の海外のネットワークに乗せドイツなどに一度、商品を送ったほか、最近はシンガポールにも輸出。同国での定番化を目指している。ほかにも、県内で欧州に製品を輸出している企業の声掛けで、スイスにも商品を出している。同国では新しい食材を求めるシェフを通してスローフードの展示会でユズが紹介されたり、雑誌で取り上げられたりと注目されているという。「アジアに比べヨーロッパは情報が少ないが、だからと言って待ってはいられない。現地に輸出している地元企業などに情報をもらうなど、細いパイプでも使っている」(濵砂社長)という。 

 海外輸出に当たっては、物流コストや輸送期間などに課題がないわけではない。それでも同社が海外を目指す理由は何か-。「わが社がこの集落の基点にならなければならない。うちが駄目になれば、村も駄目になる」と濵砂社長。同社が操業している旧東米良村は、西都市との合併を経て高齢化など地域の疲弊が進む。同社の成長が集落の存続にも直結すると意識しているからこそ、国内にとどまらず海外への可能性も追求しているという。

 ただ、中小企業が単独で海外を目指すには体力、資金力が必要なのも事実。濵砂社長は「小さな会社が全てゼロからやれば息切れする。少しアンテナを立てて、どんな所でも商品を出しておくとどこかで引っ掛かる。それからできる範囲で走り出せばいい」と話す。今後も海外物産展などへの出展を継続しながら、自社ホームページの英訳など海外展開への体制を地道に整えていく計画だ。

焼酎の認知度アップから
9月に京屋酒造が出展したニューヨークでの試飲会の様子(同社提供)

9月に京屋酒造が出展したニューヨークでの試飲会の様子(同社提供)

 「昨日ニューヨークでの試飲会から帰ってきたばかり」と話すのは京屋酒造(日南市)の渡邊眞一郎代表。同社は県内の焼酎会社でも早くから海外への取り組みを進めてきた。2002年6月、知り合いの清酒メーカーから誘われた英国・ロンドンでの試飲会参加が最初だった。「焼酎も結構、面白い」という現地での評価を得て手応えを感じた渡邊代表は、翌年から大手商社と組んで海外への売り込みを積極的にスタート。04年にはロンドンの焼酎レストランなどに初めて商品が並んだ。

 同社は食文化を世界に発信するニューヨーク、パリ、ロンドンを最重要拠点として位置づける。「アジアに比べると焼酎自体のマーケットはまだ小さいが、文化や経済の世界の流れをつくる拠点。そこで焼酎が認められれば世界に情報が発信される」と渡邊代表は戦略を語る。実際、これまでに和食レストランなど飲食店を中心に販路を開拓している。

海外に多く出している「河童の誘い水」を手にする京屋酒造の渡邊代表。「焼酎の文化を海外にも伝えたい」との思いが強い

海外に多く出している「河童の誘い水」を手にする京屋酒造の渡邊代表。「焼酎の文化を海外にも伝えたい」との思いが強い

 現在12カ国に、芋焼酎「河童の誘い水」など11商品を輸出するが、海外での売り上げが全体に占める割合はまだ数%に満たないのが現状だ。海外では「SAKE(さけ)」として認識されている清酒でさえ、海外の酒類市場に占める割合はごくわずか。「清酒は現地人が飲むが、焼酎は在留日本人や外国を訪れた日本人にしか飲まれていない。認知されていないのに等しい」と渡邊代表は認知度の低さを指摘する。そんな中、国は今春から焼酎と清酒を日本の「国酒」として認定し、海外に売り込んでいこうという「ENJOY JAPANESE KOKUSHU プロジェクト」をスタート。渡邊代表も同プロジェクト推進協議会のメンバーを務め、政府による海外輸出の後押しも始まっている。

 清酒メーカーよりも海外展開が遅れてきた焼酎業界。一時期の国内でのブームも今は落ち着き始めているといい、「5年前までは国内で売れていたが、当時の勢いは今は感じられない。どこのメーカーもそろそろ海外に出て行く時期ではないか」と渡邊代表。同社は11年から九州の焼酎メーカーと連携して米国市場を開拓する挑戦も始めている。「これがうまくいけばかなり大きな量が動く」と期待を寄せる渡邊代表。早ければ今年中に販売ルートを確立できる見込みだ。
=次回は10月9日掲載=
 

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