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福岡(1)

2012/08/07
 九州最大の都市・福岡がにわかに関心を集めている。宮崎-福岡の航空路線が7月から3社乗り入れ体制となり、双方を結ぶ交通手段が増加。ビジネスでは大都市での商機拡大を狙い、福岡に進出する企業が少なくない。また、全線開通から1年以上が経過した九州新幹線などを利用する観光客らを呼び込み、交流を促進しようという地道な取り組みも続いている。これら福岡に関する動きを4回にわたって紹介する。1回目は交通アクセスの現状。(経済部・鳥越真也)

アクセス 航空2社参入で活況化

2011年3月から運行が始まった「B&Sみやざき」で、宮崎駅から新八代駅まで向かうバス。新幹線を含めた博多駅までの所要時間は「最速2時間59分」だ

2011年3月から運行が始まった「B&Sみやざき」で、宮崎駅から新八代駅まで向かうバス。新幹線を含めた博多駅までの所要時間は「最速2時間59分」だ

 JR宮崎駅前の高速バス乗り場。長かった梅雨がようやく明けた7月下旬、午前中とはいえ強い日差しが降り注いでいる。待つこと数分、「TSUBAME」と書かれたJRのバスがやってきた。バスに乗り込むと、ビジネスマンや学生らしき男性2人連れのほか、夏休みに入ったからか女児を連れた母親の姿も。バスはしばらく宮崎市内を走り、宮崎自動車道へ。2時間余りで目的地のJR新八代駅に到着。ここで九州新幹線「つばめ」に乗り換えると、車窓からの眺めをゆっくり楽しむ間もなく50分弱で博多駅に滑り込む。久しぶりに訪れる福岡へ向かうため初めて利用した「B&Sみやざき」の旅は、3時間ほどで終了した。

新幹線効果狙うB&S
 B&Sは、2011年3月の九州新幹線全線開通に合わせ、ジェイアール九州バス(福岡市)や宮崎交通(宮崎市)などが共同で運行を開始。宮崎-新八代は高速バス、新八代駅-博多駅は新幹線を利用するプランで、新幹線効果を呼び込む狙いがある。大人片道運賃6800円(一部「早割」あり)で現在1日16往復しており、「航空路線が増えたからといって、影響はない」と言い切るのはJR九州宮崎総合鉄道事業部の川原淳一部長。川原部長が挙げる航空路線とは、B&S運行開始から1年後に全日本空輸(ANA)、さらに新規航空会社のアイベックスエアラインズ(IBEX)が相次いで就航させた宮崎-福岡線のことだ。

宮崎空港に到着したIBEX機。ボンバルディアCRJ-700型の新造機で、70人が空の旅を楽しめる

宮崎空港に到着したIBEX機。ボンバルディアCRJ-700型の新造機で、70人が空の旅を楽しめる

 本県からビジネス、観光などで訪れる人が多い福岡までのアクセス手段は、ここしばらく陸路がマイカーや鉄道、高速バス、ツアーバス、空路は日本(JAL)グループの日本エアコミューターの航空機で安定していた。ここに11年、B&Sが加わり、さらに12年3月25日にANA、7月1日にはIBEXが参入。一挙に活況化の様相を呈している。9年ぶりに福岡路線を「再開」したANAは、ここ数年のJALの利用実績から需要はあると判断。IBEXは「宮崎では空のニーズが今後も続く」(服部浩行社長)として参入を決めた。

 7月からJALが9、ANAは2、IBEXが3往復(すべてANAとの共同運航便)を飛ばし、トリプルトラッキング化で過去最多の14往復となった福岡路線。選択肢が増えたことによる利便性向上に加え、大人片道が最安5000円で並ぶなど低運賃化が実現している。では、どれほどの利用があるのだろうか。

マイレージなどで強いJAL
 「予想よりも伸びていない」と話すのはANA宮崎支店の飯田寛之前支店長(現ANAセールス執行役員CS推進室長)。利用率は4月が28.5%、5月は34.2%で4割に届いていない。提供座席がJALの74席に対し133席と、8割程度多いことを差し引いても利用が少ないことを率直に認める。プロペラ機を飛ばすJALとは異なり、ANAはジェット機の投入をポスターなどでアピールするが、飯田前支店長は「マイレージでも実績があるからか、思ったほどJALから乗り換える人が少ない」と分析。このため、6月には搭乗前日まで予約、購入できる片道1万円の新たな割引料金を設定しててこ入れし、その効果か、同月の利用率は37%余りに向上した。飯田前支店長は「高速、ツアーバスは競合相手ではない。時間を重視しているだろうB&Sの利用者の取り込みも狙い、早い段階で5割の利用率を目指す」

 新規参入のIBEX。大手2社が55日前までの予約、購入で5000円の最安運賃を提供しているのに対して、45日前でも5000円を設定。運賃面では優位に立つとも言える。就航月の7月の利用率は55%前後といい、同社企経営企画課の大貫慎一郎さんは「就航したばかりで比較する材料がなく、何とも言えない」と評価を保留した上で、「福岡-宮崎線の利便性向上に寄与している自負はある。今後、ダイヤを含めて認知度が向上していくのではないか」と利用者増に期待。さらに「ビジネス利用以外の休前日の利用は多い。平日のビジネス客にIBEXを認知していただく努力をし、利用を促したい」と話す。

 迎え撃つ形となったJALは4月56.0%(前年同月比4.2ポイント減)、5月58.7%(同2.8ポイント減)、6月62.2%(同6.5ポイント減)の利用率で推移。JAL宮崎支店の外山孝文支店長は「6月は若干下がっているが、想定の範囲内」と、ANA、IBEX就航の影響は少ないという認識を示す。その要因に関し、外山支店長は「やはり航空路線はダイヤやネットワークが重要。ANAの5往復に対し、私どもは9往復を持つ強みがある」と利用者の使い勝手の良さや、長年飛ばしてきた実績への信頼を挙げる。さらにANAを競合会社と強く意識して運賃も合わせるほか、ANA便搭乗者がボーディングブリッジを利用できるのに対し、自社便搭乗者のために雨天時に飛行機までバスを走らせるなどしていることを含め、「福岡線利用者にもJALカードホルダーなど、JALファンの方々は多い。場合によっては今後も便数を増やすなど、ニーズに合わせて利便性向上を図る」との姿勢だ。

価格訴求する高速バス利用者
福岡などに向かう高速バスの窓口業務を行う宮崎交通の宮崎駅バスセンター。連日、多くの人が同社のバスを利用し福岡へ向かっている

福岡などに向かう高速バスの窓口業務を行う宮崎交通の宮崎駅バスセンター。連日、多くの人が同社のバスを利用し福岡へ向かっている

 航空関係者が「取り込める」「競合相手ではない」と、さまざまな見方でとらえる高速、ツアーバス。宮崎交通乗合業務課の田代景三課長は「航空2社参入の影響はない」ときっぱり。高速バスは現在、同社をはじめ4社が共同で28便(夜行1便を除く)を運行している。IBEXが就航した7月(29日まで)には、前年より5%程度利用者が増えたことを紹介し、「バス利用者は所用時間より低運賃を求めている」と、片道4時間30分程度のバスと40分ほどの飛行機それぞれの、客層の違いをあらためて指摘する。

 運賃に関しては11年4月、宮崎駅-天神バスセンターの大人普通運賃4500円に対し、座席限定割引サービス「席割」で最安2500円を提供。この4月からはジェイアール九州バスが1年ぶりに共同運行に復帰したことで、席割設定座席数が1日の総座席数の5割弱の888席に達したことなども実績を支えているとみる。

 ただ、県内4社が最安1700円で13往復(金-日曜は14往復)するツアーバスを競合視し、7月末に国交省が示した「新高速乗合バス」のガイドラインが、その日の予約状況を踏まえた割引運賃の設定などを可能にする方向性を示したことを前向きにとらえ、「高速バスには価格訴求力があるので、ターゲットを明確にし、そのお客さまに喜んでいただける料金、サービスを提供するよう努める」と、田代課長は自社が参画するB&Sの利用客も見据えて施策を展開する姿勢を見せている。
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 福岡からの帰りは、就航したばかりのIBEXを選択した。猛暑が続いた前日から一転、昼すぎの福岡空港周辺はシャワーのような雨が降っている。搭乗口からは傘を差して航空機まで向かい、機内へ。グレーを基調にした人工皮革のシートなどの内装は、新造機らしく真新しさが印象的だ。上空に達すると、気流が安定しているからか、ほとんど揺れはない。ANAが就航した3月以降、JALを合わせた航空路線利用者は前年より3割程度増えているという。「3社乗り入れ」「最安は5000円」などと報じられ、福岡への関心が高まっているのか-と考えていると、40分ほどで宮崎空港に到着した。旅行などに多いマイカーユーザーを含め、交通機関が互いの利用者をどう取り込むのか、せめぎ合いは今後も続くのだろう-とも思いながら、空港を後にした。
=次回は8月14日掲載=
         

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