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2018年9月22日(土)
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創業都市、福岡市の強み

2018/03/01
 福岡市は創業が盛んなまちとして知られる。同市によると、2015年度の開業率(※1)は7.04で、全国21の大都市で1位。2位のさいたま市(6.92)、3位の川崎市(6.71)を引き離す。福岡市の強みはどこにあるのか。

 福岡市は創業が盛んなまちとして知られる。同市によると、2015年度の開業率(※1)は7.04で、全国21の大都市で1位。2位のさいたま市(6.92)、3位の川崎市(6.71)を引き離す。福岡市の強みはどこにあるのか。その強みをさらに伸ばそうとする施策と合わせて取材した。

■適した環境、立地


スタートアップの拠点となっているグロースネクスト。歴史的な建造物でもある旧大名小の校舎は、福岡市の政策と民間企業のノウハウで生まれ変わった

スタートアップの拠点となっているグロースネクスト。歴史的な建造物でもある旧大名小の校舎は、福岡市の政策と民間企業のノウハウで生まれ変わった

 同市創業・大学連携課は「創業に適したいくつもの要素を持っている」と説明する。まず挙げたのは人口増加率だ。日本中が人口減少の課題に直面する中、同市の推計人口は昨年12月に157万人を超え、2035年まで増加を続ける見込みという。また、若者(15~29歳)の人口比率は政令市中ナンバーワンの19.2%。イノベーションの源泉となる先端学術研究や成長産業が集積し、優秀な人材を輩出する大学が多いことも強みとなっている。

 また、東京や大阪に比べてオフィス賃料が低い。月・一坪当たりの平均募集賃料(16年)は、東京都の1万6616円、大阪市の1万1163円に対し、福岡市は9217円。ビジネスコストに関しても優位性を持つ。

 さらに通勤・通学に要する時間は、7大都市圏(※2)の中で1位の34.5分。関東大都市圏の49分、近畿大都市圏41.5分と比べて短く、移動のストレスが少ないとされている。同課は「これらの評価に加え、成長著しいアジア市場との歴史的、地理的な近接性も、創業意欲を高めている」と分析する。

■人材流出を防ぐ役割


閉校した小学校校舎を活用した官民共同型のスタートアップ支援施設「グロースネクスト」内のスタートアップカフェ。年末年始以外、年中無休で使いやすく、多くの利用がある

閉校した小学校校舎を活用した官民共同型のスタートアップ支援施設「グロースネクスト」内のスタートアップカフェ。年末年始以外、年中無休で使いやすく、多くの利用がある

 市はこれらの強みをさらに伸ばそうと、創業者支援にも力を入れる。2000年にはインキュベート(創業者育成)施設を開設し、12年に「スタートアップ都市・ふくおか」宣言、14年には創業と雇用の創出を目指す国家戦略特区の指定を受けた。

 さらに昨年4月、官民共同型のスタートアップ支援施設「グロースネクスト」を開所した。児童数減で閉校となった旧大名小の校舎を活用した施設で同市内に点在していたインキュベート2施設やスタートアップカフェなどを集約。運営委員会は市と民間3社で構成。実績のある企業から常駐スタッフを送り込み、行政による制度上の支援と合わせて、入居企業や利用者を手厚くバックアップしている。

 グロースネクストには、もう一つ大きな役割が期待されている。それは、九州から関東、関西への人材流出を防ぐ役割だ。同課によると、人口増加が続く同市でも、地元の学生の約半数が東京圏などに流出している課題があるという。九州全体の人口が転出超過にある中、福岡がその流出を食い止める意義は大きい。富田政志同課長は「福岡は九州各県に支えられている。福岡市がビジネス拠点としてさらに成長し、九州全体の活力維持に寄与したい」と先を見据える。

 同市の成長を一極集中に終わらせないためにも「九州各県で活発化する新規創業、第二創業支援の動きとの連携が求められている」と富田課長。実際に、宮崎市高岡町の旧穆佐小校舎を活用した創業者の交流拠点「MUKASA-HUB(ムカサハブ)」などとの連携も模索しているという。人口減少に直面する市町村が、福岡市と同じ創業支援を展開することは難しい。ならば行政の枠を越え、各地域の拠点を生かし、創業者同士がコミュニティーを築ける基礎をつくることが創業支援の次なるステップとなりそうだ。
(福岡支社・鬼束功一)

(※1)開業率=ある特定の期間において「(1)新規に開設された事業所(または企業)を年平均にならした数」の「(2)期首において既に存在していた事業所(または企業)」に対する割合であり、(1)/(2)で求める

(※2)人口100万人以上の都市を含む関東、近畿、中京、札幌、広島、仙台、福岡・北九州の大都市圏

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