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2018年10月23日(火)
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地域経済の循環

2017/11/29
 地方創生関連法の成立から丸3年が経過したが、地方では人口減少に歯止めがかからない。人口減少に伴う県内市場の先細りを見据え、県外・海外の市場で売り上げを伸ばす「外貨獲得」と、外貨と県内市場で得た資金を可能な限り県外へ出さない「地域経済の循環」の重要性が増している。今回は経済循環のうち、企業間取引の県内調達を進める上での課題やヒントを探る。

県内調達を進めるには


木下水産が県内調達に切り替えた洗浄機と木下豊一社長

木下水産が県内調達に切り替えた洗浄機と木下豊一社長

 地方創生関連法の成立から丸3年が経過したが、地方では人口減少に歯止めがかからない。人口減少に伴う県内市場の先細りを見据え、県外・海外の市場で売り上げを伸ばす「外貨獲得」と、外貨と県内市場で得た資金を可能な限り県外へ出さない「地域経済の循環」の重要性が増している。今回は経済循環のうち、企業間取引の県内調達を進める上での課題やヒントを探る。

発注側に届く情報発信を


 延岡市島浦町の養殖業「木下水産」は昨年5月、タイの養殖に使う網の洗浄機を市内の池上鉄工所に発注した。以前使っていた洗浄機は滋賀県のメーカー製。一方、池上鉄工所にとっては未経験分野。発注した木下豊一社長は「池上鉄工所がビールの醸造タンクを初挑戦で見事に製造したという新聞記事を読み、洗浄機も同じステンレス製の円筒形なので造れるのではないかと考えた」と振り返る。

 3カ月ほどで納品され、期待通りの完成度。木下社長は「設置後に『扉を頑丈にして』とか、細かな要望にもすぐに応じてくれる。以前のメーカーなら必要だった出張費も不要」と話し、地元調達の時間的、コスト的なメリットを挙げる。

 木下水産は自社ブランド「しまうら真鯛」が主力商品で、出荷量の95%は県外。木下社長は「うちは外貨を稼ぐ企業。価格と品質に納得できれば、地元企業に設備を発注し、外貨を落としたい」と考えており、「池上鉄工所の技術力を知り、いろいろな水産関連の設備を造れるのではと感じた」と語る。ただ、「県内企業がどんな技術を持っているのかを私たちが知るのは難しい。もし新聞記事を読んでいなかったら、洗浄機は滋賀県のメーカーに発注していた」と明かす。

「仕事を創る」意識必要


 食肉加工機械や醸造機械の製造を主力とする日向中島鉄工所(日向市)。機械加工や塗装、メッキなどの外注業務があり、島原俊英社長は県内企業との取引について「わが社のことを理解し、いろいろな状況に対応できる企業と付き合いたい。長く付き合えることが重要」と語る。長く付き合える企業とは「価格以外の価値提案ができる企業。わが社が抱える問題や課題を一緒に考え、製品やサービスの価値を高めていくパートナー」と言う。

 県中小企業家同友会の代表理事も務める島原社長は、発注側の企業が自社商品の差別化を強く意識するようになれば県内調達も増えると考える。「県外から既存の機械・設備を入れていては、既存商品と似たような物しかつくれない」と指摘。「商品の差別化を図るには、今までにはない機械や設備が必要。地元メーカーと一緒に開発し、改良し、使い込む…。手間もコストもかかるが、他社と違う商品を生み出さないと付加価値が上がらず、価格競争から抜け出せない」と話す。

 受注側の中小企業にも「大手の下につき、価格で競争し、中小企業同士が仕事を奪い合うという形では、いずれ限界がくる。特に、遠隔地に所在し、輸送費の負担が大きい地方の中小企業にとっては、大企業の下請けではなく、地域経済の循環の中で、自分たちで仕事を創ることが求められている」と発想の転換を促す。

 受注側でもある同社は2012年、地元企業と一緒に野菜工場を立ち上げた。機械メーカーとして、実際に農業を経営することで、現場で必要とされる装置や、機械化によって改善や効率化ができる部分を探るためだ。これが島原社長の言う「自分たちで仕事をつくる」だ。これまでにレタス苗の移植や定植を行うロボットやバイオマスボイラーを開発。現在は、輸送時の鮮度保持に向けた低温調湿貯蔵装置などの開発に取り組む。「商品の生産プロセスを受注側が変えていく、地域経済循環の仕組みを新たに創っていくという意識を受注側は持つべき」と説く。

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