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2018年4月23日(月)
フォーカス

IoTの導入と活用

2017/08/03

企業によって可能性は千差万別


 あらゆるものをネットワークでつなぐ「モノのインターネット(IoT)」。人手不足の打開策として、さらには付加価値の創出や向上につながるとして注目され、企業の導入を国も後押しする。しかし、中小企業は導入しようにも専門的な知識がなくて二の足を踏んだり、導入効果をイメージできなかったりするケースも多いようだ。県内の企業でも導入が進んでおらず、これから検討していこうという段階にある。

可視化データから発想


デンサンの「IoT トライアル・キット」で可視化された騒音や照度などのデータ(同社提供)

デンサンの「IoT トライアル・キット」で可視化された騒音や照度などのデータ(同社提供)

 IoTの活用はさまざまな分野に広がっている。全国の事例をみると、製造業では生産設備からのデータ収集やネットワーク化、製造工程の可視化などによって、生産性の向上や予知保全、省エネ化を図る動きが見られる。農業でもIoTの活用が始まっており、例えば、畜産では親牛を温度センサーで監視。分娩(ぶんべん)前や破水時を検知し、メール通知することで事故防止や農家の負担軽減につなげるシステムもある。


 全く新しいビジネスを構築した事例もある。大手警備会社は道路の老朽化が社会問題となる中、パトロールカーにスマートフォンとカメラを設置し、国や自治体といった道路管理者向けのサービスを開始した。走行時にスマホに内蔵された加速度センサーで路面の劣化箇所を検知し、地理情報システム(GIS)上に表示。劣化箇所はカメラで撮影した画像でも確認できる。これらの情報を基に効率的な舗装修繕計画を策定するサービスであり、パトロールカーという既存資源や、これまでお金を生まなかった移動時間を有効活用するという視点は大いに参考になる。

 IoTを導入すれば、自社にどのようなメリットが、どの程度期待できるのか。これは最初から明確に分かるものではない。自社のさまざまなデータを可視化し、そこから何を発想できるかがIoTの第一歩。IoTに力を入れるデンサン(宮崎市)ビジネス営業部の橋口義史部長は「IoTの可能性は、企業によって千差万別。どんな情報を取得し、何と掛け合わせると、どんなものが生まれるか。これはデータを可視化することで見えてくるものだ。お客さまと一緒にIoTで『できること』を探していくのが私たちの仕事」と語る。

まずは「スモールスタート」


 ただ、費用対効果が担保されない中、IoTへ投資するのはリスクがあると企業が考えるのは当然。そこで、デンサンではIoTの第1ステップとして、まずは「こんなことができるのではないか」という仮説を立てるためのデータ取得と可視化を行う「スモールスタート」を推奨している。センサーから各種データをクラウドサーバーに飛ばし、それをメーターやグラフなどで可視化しスマホやタブレットで閲覧できるようにする。どこに、どんなセンサーを設置するかは企業次第だ。データはサーバーに蓄積し、カレンダーに落とし込むなどさまざまな見方ができる。

 6月に販売を開始したトライアル・キットは温度・湿度・騒音・照度・気圧・紫外線(UV)を測定できるセンサー3個、通信に必要なIoTゲートウェイ1個、サーバー利用料と回線使用料が各1年分付いて20万円。センサーは衝撃、加速度、開閉など要望に応じて変更可能。工場や倉庫、病室、屋外、ビニールハウスなど、さまざまな環境を「見える化」できる。

 そこから「できること」の仮説を立てる。しかし、あくまでスモールスタート。一気にやるのではなく、IoTの対象とする業務や機械を絞り込み、「できること」の実現に向けてシステムを開発・調達する。成果が確認された後に対象を拡大していくわけだが、「対象範囲を横に広げるのか、深掘りするのかは企業の選択」(橋口部長)という。

 システムの開発・調達に当たっては、企業ごとにIoTで「できること」が異なるため、それぞれに合致する分野を得意とする供給元を選ぶ必要がある。同社は特定企業の特約店ではなく、国内を代表する総合ITベンダーや大手メーカーなどと連携するマルチベンダーであり、ニーズに適した供給元との間を橋渡しできるのが強みという。もちろん、自社でシステムを開発することもできる。

宮銀は産学官連携スキーム


 一方、宮崎銀行は企業のIoT導入を無料で支援する産学官連携によるスキームを構築した。企業が専門的な知識や具体的なIoT活用策を持っていなくても、経営課題を示せば、関係機関が連携し最適な活用策を提示するものだ。同行の営業店が企業のニーズや課題を聞き取り、同行本部の担当部門に支援を依頼。連携する県産業振興機構がIoT導入の可能性や費用対効果の評価、最適と思われるITベンダーの選定などを行う。必要に応じ、県の研究機関や大学などが参加する「みやざき新産業創出研究会」ICT利活用促進分科会に協力を求める。

 同行では「製造工程を可視化して無駄を省きたい」「介護ベッドにセンサーを設置し、徘徊(はいかい)を防止したい」「センサーで駐車場の空き状況を管理・配信したい」といった幅広いニーズを想定している。

 導入に伴う資金調達では、同行が補助金申請や各種ファンド、ファイナンスなどの活用をサポートする。同行地方創生部は「このスキームを使えば、ベンダーと対等に話せる人材が自社にいなくても、どういう要求をすればいいのか、開発過程でどういう改善を求めればいいのかなどで悩まずに済む。まずは気軽に問い合わせてほしい」としている。
(小川祐司)

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