みやビズ

2018年5月20日(日)
フォーカス

人とビジネスの新潮流

2017/07/13

MUKASA-HUB(宮崎市高岡町)


ローカルビジネスの聖地へ


 宮崎市高岡町の旧穆佐小校舎を活用した起業家の交流拠点「MUKASA-HUB(ムカサハブ)」は人とビジネスの結節点として注目を集めている。県外から大勢の視察が訪れ、入居者間の交流から新たな入居者や利用者を呼び込む動きが生まれている。

全国から視察殺到


「起業家が増えることがムカサハブの成功の指標」と意気込む一平の村岡浩司社長。各種イベント開催や新たなオフィス増設などで起業家の卵を育てるつもりだ

「起業家が増えることがムカサハブの成功の指標」と意気込む一平の村岡浩司社長。各種イベント開催や新たなオフィス増設などで起業家の卵を育てるつもりだ

 ムカサハブは「九州パンケーキミックス」を販売する一平(宮崎市、村岡浩司社長)が1億2000万円で整備し、5月21日にオープンさせた。学校の雰囲気を残しつつ、1階をコワーキングスペースやクッキングスタジオなどに改装。2階にはベンチャー企業向けのレンタルオフィス6室と個人がスペースをシェアして利用する共同スペース1室がある。

 レンタルオフィスには写真スタジオや農業ITベンチャー企業、イベント企画会社などが入居し既に満室。コワーキングスペースは起業や働き方改革などに関するイベント、講演会だけでなく、地域にも開放し、料理教室や成人式の会場などにも活用していくという。

 開設以降、県外でベンチャー企業向けの共同スペースを運営する団体や金融機関、行政などの視察依頼が殺到しているという。村岡社長は「福岡などの都市部ではムカサハブのような起業家を支援する施設はある。しかし、それを地方で、かつ一民間企業がやるということの意義を知りたくて視察に来ているようだ」と話す。

「街中でもう一度働く」


 村岡社長が狙うのは、同市中心市街地から車で30分ほど離れた郊外から中心市街地や、県外の都市部に進出できる企業が生まれることだ。「シリコンバレーからサンフランシスコ中心部に自社ビルを建てられるほど成長した企業がいるように、ムカサハブでもそんな企業や世界を目指す企業が生まれる素地はある」と強調する。

 入居する経営者にも同様の思いがあるようだ。「中心市街地から離れざるを得なかった悔しさが頑張る原動力」。共同スペースに入居するウェブ制作会社「FUJI FACTORY」取締役の岩城望さん(34)は明かす。実家は同市橘通西3丁目にあった老舗の「富士屋呉服店」。その4代目だった。

 しかし、店舗は昨年末に閉店。その1年ほど前に亡くなった父は「呉服店にこだわらなくてもいいから、会社だけは残してほしい」と会社の再興を岩城さんに託していた。

 そんな岩城さんは再スタートの地にムカサハブを選んだ。理由について、岩城さんは「入居企業の業種が幅広いのが魅力。同業者とばかりいると発想が行き詰まるが、ここなら自分になかったアイデアがもらえそうだから」と話す。

 実際にプロジェクトも動きだした。共同スペースに入居するライターとカメラマンとともに入居者を紹介する小冊子作りを始めた。創刊号は今月末にも発刊する見通しだ。「入居している起業家のことを知れば『ムカサハブに行けば、あの人に相談ができそうだ』などと思い浮かべて、多くの人が足を運ぶきっかけになればいい」とも。

 ゆくゆくは雇用を生み、再び街中で働くことが夢。そのためにはウェブ制作だけでなく、IoT(モノのインターネット化)に関する事業なども手がけていきたいという。「事業の広がりが雇用を生む。再び中心市街地で働くために、今は基盤整備の時期」と力を込めた。

起業家数が成功の指標


ウェブ制作会社の「FUJI FACTORY」の岩城望さん。「いつかまた宮崎市中心部で働けるよう、今は基盤整備を頑張りたい」と話す

ウェブ制作会社の「FUJI FACTORY」の岩城望さん。「いつかまた宮崎市中心部で働けるよう、今は基盤整備を頑張りたい」と話す

 村岡社長によると、岩城さんらの小冊子作り以外にも入居企業同士のマッチングが数例成立しているという。「いつでも顔を突き合わせて話せる環境にあるので実現に向けたスピード感はあり、頼もしい限り。あえてマッチングの内容に口は挟まず、展開を見守るだけ」

 新たな展開として、気軽に立ち寄れるコワーキングスペースの特徴を生かし、都市部に集中しがちなクリエーティブ人材をムカサハブに呼び寄せることも視野に入れる。例えば、影響力のある人材が1週間だけでも滞在するとすれば「他の入居者やムカサハブ以外で活動している人も勉強しにくるはず。そこで得た知識をどう宮崎の発展のために磨き上げてサービスとして提供できるかが大事」と村岡社長は強調する。

 また、新たなオフィス建設を目指す。敷地内にコンテナハウスを設置し、「3年後には30社300人働くベンチャータウンをつくる」という目標を掲げている。入居する企業はITや活版印刷、ピザ屋さんなど、すべてのジャンルに間口を広げている。

 成功の指標について、村岡社長は「いろんな業種が混在することから新たな発想は生まれる。どれだけ起業家が増え、宮崎のために貢献してくれる人材が育ったか」と明かす。穆佐を「ローカルビジネスの聖地」と評されるほどのビジネスタウンに育てるため、歩み始めたばかりだ。

(西村公美)

アクセスランキング

ピックアップ