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2018年5月20日(日)
フォーカス

商店街振興へ新たな仕掛け

2017/06/15

福岡市の商店街活性化事業 外部の人材で知恵を創出


 空き店舗対策の補助金や起業支援など、全国の各自治体による商店街振興施策は多岐にわたる。このうち、福岡市が2015年度にスタートした「商店街活性化パートナー発掘事業」は先進的だ。商店街を一つの事業体と捉え、別の事業体や企業とマッチングさせることにより新たな魅力づくりを目指すもので、市民からアイデアを募る仕組みも注目度が高い。

■お互いの刺激に


農業生産法人と連携することで集客力向上を目指す名島商工連合会の「なじまの楽市」

農業生産法人と連携することで集客力向上を目指す名島商工連合会の「なじまの楽市」

 同市東区にある1952(昭和27)年設立の名島商工連合会(阿部直哉会長)。国道3号沿いの好立地にある店舗の敷地を活用し、6年ほど前から毎月第3土曜日に合同の売り出しイベント「なじまの楽市」を開催している。このイベントが同事業第1号の一つだ。イベントでは、パートナー企業となっている久留米市の農業生産法人「産」が産地直送の無農薬野菜を販売。約1年で固定ファンが生まれ、早速集客効果が表れている。

 同連合会の加盟店舗数は最も多いときで100を超えていたが、今や44店舗まで減少。客足をつなぎ止めようと、なじまの楽市開催に加え、地区内にある黒田勘兵衛ゆかりの旧跡を活用したイベントを実施。高齢者宅への宅配事業なども積極的に企画したが思うほどの結果は出なかったという。そこで次なる一手として同事業へ応募した形だ。同連合会の橋本秀之副会長は「他の商店街や企業・団体との接点は大きな刺激となっている」と実感を込める。

 「産」のメリットも大きい。人口が増加傾向にある名島地区とつながりができることは、地元の久留米市だけで事業を展開するより将来性が大きい。高山裕子企画・デザイン部長は「多くの人に産地へ目を向けてもらうきっかけにもなる。将来的には消費者の収穫体験など交流の幅を広げたい」と意欲的だ。

■違う視点から


「なじまの楽市」会場に常設した名島商工連合会加盟店の情報発信スペース。将来的には「産」による料理教室なども開催したい考え

「なじまの楽市」会場に常設した名島商工連合会加盟店の情報発信スペース。将来的には「産」による料理教室なども開催したい考え

 福岡市は2013年度、市内全153商店街を対象に実態調査を実施した。浮かび上がった課題は「活性化のために必要な人材やアイデアの枯渇」だった。そこで、商店街の外部へマンパワーを求めようと乗り出したのが同事業だった。市地域産業支援課の村上哲也主査は「商店街だけの取り組みには限界もある。商店街を一つの企業と捉え、課題解決へ外部の力を借りる方策が必要だと考えた」と説く。

 同事業において、産学官民連携組織の「福岡地域戦略推進協議会」が商店街を外部と効果的につなぐ役割を持つ。同協議会が運営するイノベーションスタジオ福岡では、デザイナーやNPO法人、大学生、近隣住民などの多様な人材が市民目線を生かし、企業などと共に新しいビジネスの創出に取り組む。

 このスキームに商店街を当てはめた。商店街の関係者にとっては、例えば、大学生の「そもそも土日に開けていないショッピングセンターなどない」といった意見が大きな刺激になったという。村上主査は「違う視点から見えることは改革への第一歩となり得る」と話す。

 同事業は現在、3カ年目の実施商店街を募集している。商店街振興へ熱意を持ちながら、効果的な手段を持たない関係者からの注目は年々高まっているという。名島商工連合会の吉村竜介副会長は「他にない魅力を発揮できれば、商店街は“古い”ではなく“新しい”ものとして受け入れられるはず。外部と連携することで可能性を追い求めていきたい」と話していた。
(福岡支社・鬼束功一)

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