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2018年6月22日(金)
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ここにも人口流出の暗い影

2017/04/20
 「金の卵」時代から本県のような地方では、都市部への若者流出が続いてきた。その結果、地方で暮らす親の遺産を都市部に住む子どもが相続するという状況が増えている。フィデリティ退職・投資教育研究所(東京)の調査によると、地方銀行・第二地方銀行に預けられた資産の6割近くが、相続時に都市銀行やゆうちょ銀行といった別の金融機関に移されていることが分かった。

相続時に地銀の預金流出


 「金の卵」時代から本県のような地方では、都市部への若者流出が続いてきた。その結果、地方で暮らす親の遺産を都市部に住む子どもが相続するという状況が増えている。フィデリティ退職・投資教育研究所(東京)の調査によると、地方銀行・第二地方銀行に預けられた資産の6割近くが、相続時に都市銀行やゆうちょ銀行といった別の金融機関に移されていることが分かった。本県の場合、宮崎銀行、宮崎太陽銀行とも預金残高全体は伸びているが、看過できない問題。こうした流れが加速すれば経営基盤が弱体化しかねず、それに伴う地域経済への影響も懸念される。

相続資産4分の1が県外へ


 調査は「相続人5000人アンケート」と題し、昨年11~12月、過去5年以内に遺産相続(生前贈与除く)を受けた20歳以上を対象にインターネットで実施。全国5578人から回答を得て、今年1月に結果を公表した。

 それによると、地銀・第二地銀に預けられた相続資産のうち、地銀・第二地銀にとどまったのは42.4パーセント。全国に店舗網を持つ都銀、ゆうちょ銀にそれぞれ12パーセント超が流れる。信用金庫・信用組合も流出率が62.4パーセントと高い。逆に都銀は24.5パーセント、ゆうちょ銀は36.4パーセントの流出だった。

 相続資産がどの程度、その都道府県にとどまったかを見ると、本県は75.5パーセントで全国12位。隣県の鹿児島60.7パーセントを大きく上回るが、それでも24.5パーセントの県外流出は痛い。

 宮崎銀では一定期間、一定金額以上の相続案件を調べたところ、相続人に1人でも県外在住者が含まれるケースが6割に達した。また、全相続人の3分の1が県外在住者だという。同行は「相続預金の流出は今後も増えると想定しており、地方銀行にとって大きな問題」と危機感を強める。

相続人の口座開設に努力


 宮崎銀では県外への人口流出を防ぐこと以外に抜本的な解決策はないという認識であり、地方創生の推進に力を入れる。具体的には、地域経済をけん引する企業や、そうなることが期待される企業を手厚く支援するプロジェクトを昨年4月にスタート。今月には学生や女性の起業を支援するファンドを創設するなど雇用創出への種まきに努める。

 一方で、インターネット上での口座開設や振替、住所変更など「ネットを通じてできることは何でもやろう」という姿勢で研究を進める。自宅のパソコンやスマートフォンを使い気軽にサービスを受けられる環境を整備することで、県外相続人の口座開設を促す。

 宮崎太陽銀は20年以上前から、こうした状況を懸念。高齢者を囲い込むため、営業店に年金アドバイザーを置くようになった。受給手続きをはじめ、年金に関する各種相談に乗っており、現在40店舗に配置する。全員が女性パート従業員で平均年齢は49歳。面倒見の良さや気安さが受け、年金の振込件数、金額とも順調に伸びている。

 営業企画推進部の河野一郎部長代理は「年金アドバイザーは当行の強み。お誕生日にご自宅を訪問するなど、お客さまとのつながりを深める中で、相続に関する相談もいただき、担当行員につないでいる。相続預金の流出対策になっている」と話す。

 両行は商品やサービスによる対策も講じる。宮崎太陽銀は定期預金の金利で優遇。例えば1年満期の金利は通常0.025パーセントだが、相続した資金を預ける場合は0.2パーセントに跳ね上がる。宮崎銀は相続関連サービスの充実に注力。遺言信託や成年後見制度取次サービスを通じて、将来相続人となる親族と接点をつくり、相続資金の振込口座の開設などを提案している。

 フィデリティ退職・投資教育研究所の野尻哲史所長は、相続資産の流出対策について「相続人に事前に口座開設を促すことは効果がありそうだ。被相続人との友好な関係をいかに相続人にまで広げられるかが課題」などとしている。
(小川祐司)

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