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2018年4月23日(月)
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日機装 ものづくりの源流

2016/12/15
困難な課題に挑戦し、社会へ貢献  東証1部上場の精密機器メーカー、日機装(東京)が航空機部品の新工場を宮崎市高岡町の宮崎ハイテク工業団地に建設することになった。投資額は170億円と同社にとって過去最大。将来的には産業用特殊ポンプを生産する工場の建設も検討しており、国内最大の生産拠点として育てる方針だ。航空機部品、産業用ポンプ、さらには血液透析関連製品と異なる分野で高いシェアを誇る「ニッチトップ企業」の源流を探った。

困難な課題に挑戦し、社会へ貢献


 東証1部上場の精密機器メーカー、日機装(東京)が航空機部品の新工場を宮崎市高岡町の宮崎ハイテク工業団地に建設することになった。投資額は170億円と同社にとって過去最大。将来的には産業用特殊ポンプを生産する工場の建設も検討しており、国内最大の生産拠点として育てる方針だ。航空機部品、産業用ポンプ、さらには血液透析関連製品と異なる分野で高いシェアを誇る「ニッチトップ企業」の源流を探った。

量より質

CFRP製カスケードを手にする菅沼保弘工場長

CFRP製カスケードを手にする菅沼保弘工場長

 金沢市にある日機装の金沢製作所。ここには世界シェアが9割を超える、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製ジェットエンジン逆噴射装置用部品「カスケード」を生産する航空宇宙工場と、国内シェア5割超の血液透析装置などを製造するメディカル工場がある。

 メディカル工場の枝村八郎副工場長は、ニッチトップ企業として成長してきた背景には「Not big,but strong(量より質)という理念がある」と語る。

 創業者である音桂二郎(故人)の母方の血縁には、金沢の伝統工芸「加賀象眼」を代々伝えてきた山川家がある。

 装飾技術の一つである象眼は、16世紀末に金沢に伝わったとされる。金属などの表面を彫る時に溝の底の部分を広くしておき、そこに金銀などの紋金(もんがね)を打ち込む。緻密な模様と何よりはがれない高品質が特長の工芸品だ。

 金沢製作所の敷地内には加賀象眼と自社製品の展示施設「宗桂会館」がある。枝村副工場長は刀のつばや器などを見つめながら「加賀象眼の品質を追求する精神は、われわれのものづくりに対する姿勢と共通している」と話した。

国内初

日機装が開発した国内初の人工腎臓装置(左)とダイアライザー

日機装が開発した国内初の人工腎臓装置(左)とダイアライザー

 枝村副工場長は「挑戦こそ日機装の歴史」とも語る。1953(昭和28)年、産業用精密ポンプの輸入販売を目的に創業。すぐにメーカーとしての活動を始め、ポンプの技術を転用して国内初の人工心臓装置を東京大に提供。60(同35)年にポンプを埋め込まれた犬の生存が初めて記録され、医学界に大きな貢献を果たす。

 69年には、国産第1号の人工腎臓装置を開発。電子回路基板も、軽量化素材もない中で完成した機器は総重量170キロもあった。

 CFRP製カスケードが生まれた背景にも挑戦がある。81年に音氏は新たな事業の柱として、当時新素材として脚光を浴び始めた炭素繊維に注目。航空機部品メーカーの誘いで生産に着手した。

(右)日機装が製造している血液透析装置、日機装が製造しているLNG用ポンプ

(右)日機装が製造している血液透析装置、日機装が製造しているLNG用ポンプ

 エンジンメーカーやエンジンの大きさ、設置場所によってカスケードの形状や素材は細かく変わる。数百あるパターンの構造計算、設計、生産、強度検査など全工程を自社で行う。航空宇宙工場の菅沼保弘工場長は「30年間の地道な努力の上に築き上げられた製造ノウハウは、簡単に他社が追い付けるものではない」と言い切る。

 第4の事業の柱として育てているのが深紫外線発光ダイオード(LED)。日本人3人がノーベル物理学賞を受賞して話題となった青色LED以上に環境や医療、工業など幅広い分野での利用が期待される新技術だ。

 宮崎市の新工場は新設される子会社によって運営されるが、同社では「優秀な人材ならば他の生産拠点で働いてもらうことも考えている」と、航空機部品以外の分野でも働ける可能性を示唆する。枝村副工場長は「いろんなことに挑戦して社会の役に立ちたいと思っている若者に、ぜひ日機装の門をたたいてほしい」と話す。
(久保野剛)

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