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2018年9月20日(木)
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切り開けウエディング市場

2016/12/01

価値磨き縮小に歯止め


 本県の2014年婚姻件数は5154件(厚生労働省人口動態調査)。少子化による結婚適齢期人口の減少や、晩婚、未婚化の進行などで年々減少傾向にある。しかも結婚するカップルのうち、約半数は結婚式を挙げない「ナシ婚」を選択しており、ウエディング市場にとって向かい風が強まる。そんな中、県内の結婚式場業界では人生の一大イベントである結婚式に目を向けてもらおうと、施設改修やさまざまなプランの提案、地域一体となった取り組みなどで顧客獲得を目指している。

シェラトン・グランデ・オーシャンリゾートの42階に新設されたバンケットルーム。日向灘を望む絶好の眺望を売りに、契約件数をけん引している

シェラトン・グランデ・オーシャンリゾートの42階に新設されたバンケットルーム。日向灘を望む絶好の眺望を売りに、契約件数をけん引している

提案の幅広げる


 県内でも10年ほど前から、ゲストハウス形式の式場が進出してきた。1日の挙式件数を限定してアットホームな雰囲気で式を挙げられること、美しい庭園やチャペルで特別感が味わえること-などが受けて人気を集めている。特に宮崎市内では、この1年で2施設がチャペルや庭園をリニューアルするなど攻勢を強化している。

 ゲストハウス形式の台頭だけではない。近年の傾向として、カップル1組当たりの結婚式場の見学件数は減少傾向にあり、背景には“式場の値引き合戦”によってカップルが即決するケースの増加があるという。それだけ式場間のパイの奪い合いは熾烈(しれつ)になっている。

 式場に宿泊施設を併せ持つホテル側は、差別化を図ろうと工夫を凝らす。フェニックスリゾートが運営するシェラトン・グランデ・オーシャンリゾート(宮崎市)は42階にあったバンケットを改修、さらにもう一つのバンケットを同階に新設し、10月にグランドオープンした。シーガイアコンベンションセンター内のバンケットやレストランと合わせて「お客さまに提案できる部屋やウエディングスタイルの幅が広がり、選んでもらえる式場として十分なものが整った」と同社ブライダル担当の圓目美穂さんは話す。

 42階のバンケットは、日向灘の雄大な眺望も人気となり、1つのバンケットが先行オープンした7月以降は契約件数が大幅に増加。本年度の契約件数は15年度比で77パーセント増加した。また、来年度の契約件数は、今年11月時点で本年度の約4.5倍となっている。圓目さんは「新しいバンケットの魅力と合わせて、接客や料理などホテルとしての総合力という強みもアピールしていきたい」と強調する。

 宮崎観光ホテル(同市)は、ウエディングプランナーの資質に磨きを掛けた。13年に総合ブライダル会社テイクアンドギヴ・ニーズ(T&G、東京)と約3年間の業務提携を締結。T&Gによる研修や同社から派遣されたスタッフの指導を受け、同社が全国で築いた婚礼に関するノウハウの吸収に努めた。同ホテル婚礼部の清野信一部長代理は「接客時間を増やし、信頼を築いて契約してもらえるよう心を砕いた結果、契約件数は伸びた」と効果を実感する。

 ことし4月には新郎新婦の負担が基本的にない会費制披露宴プラン「ゼロ婚」を発売。ナシ婚層に訴え掛けようと開発した商品で問い合わせも多く、同ホテルは潜在的なニーズを感じている。清野部長代理は「ゼロ婚をベースに相談するうちに、通常の式を挙げる方向に気持ちが変わることもある。金銭的な理由で挙式をあきらめるカップルが前向きになるきっかけになれば」と期待する。

ライバル同士がタッグ


延岡日向ウェディング協議会が6月に開いたプランナーの企画提案力を競う大会。プランナーの資質向上にもつながるため、次年度以降の開催も目指す

延岡日向ウェディング協議会が6月に開いたプランナーの企画提案力を競う大会。プランナーの資質向上にもつながるため、次年度以降の開催も目指す

 施設が充実する宮崎市などへの流出を食い止めようと、延岡・日向地区ではライバル同士がタッグを組む動きも出始めた。同地区のホテルや結婚式場、生花店などが「延岡日向ウェディング協議会」を昨年10月に設立、現在約40の事業者が加盟している。発起人で同協議会の志多充吉理事長(ホテルメリージュ延岡専務)によると、東九州自動車道の延伸など交通網の発達で年間約100件が市外に流出しているという。「婚礼件数の減少は地域に落ちるお金の減少にもつながり、経済的損失は大きい。関連業者の人材も育たず、技能を持った人材が需要が多い都市部に仕事を求めて出て行き、人口流出の引き金になりかねない」と懸念する。

 そこで、同協議会は「まちづくり」と「ひとづくり」を事業の柱に据えて活動をスタート。加盟する4式場のプランナーが企画力を競う大会を開催した。ブライダル系専門学校と共催し、どのような結婚式を企画したいかといったプレゼンテーションも合わせて実施した。
延岡商業高の文化祭で開催したファッションショーも延岡日向ウェディング協議会が協力。高校生らのブライダル業界への憧れ醸成に一役買った(同協議会提供)

延岡商業高の文化祭で開催したファッションショーも延岡日向ウェディング協議会が協力。高校生らのブライダル業界への憧れ醸成に一役買った(同協議会提供)

 また、事情があって結婚式を挙げられなかったカップルに結婚式を丸ごとプレゼントする「夢婚」を、10月に延岡市中心部であったのぼりざるフェスタの会場で開催。来場者からの反響も大きく、志多理事長は「これらの取り組みを地元で結婚式を挙げたいという気持ちや、ブライダル業界の憧れを醸成するきっかけにしたかった」と意図を語る。現在は延岡市とオリジナル婚姻届の制作に向けて協議を進めており「地元愛を育むアイテムとして定着させたい」と意気込む。

 協議会の取り組みは、研修や大会などを通して地域全体の底上げも目指しているが、加盟する事業者それぞれのスキルアップも目的としている。志多理事長は「価格で勝負するのではなく、価値で競うことで互いに刺激し合い、選ばれる式場や業者を目指したい。そうすることで、きっと地域経済に貢献できる存在になれるはずだ」と話している。

(西村公美)

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