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2019年6月17日(月)
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鹿児島銀行の農業参入

2016/10/06

基幹産業再生に積極関与

 九州フィナンシャルグループ(FG、熊本市)傘下の鹿児島銀行(鹿児島市)は、農業法人「春一番」(鹿児島県日置市)を地元企業などと共同設立した。

 
鹿児島銀行の農業参入の意義を語る上村基宏頭取=9月29日、鹿児島銀行本店

鹿児島銀行の農業参入の意義を語る上村基宏頭取=9月29日、鹿児島銀行本店

 上村基宏頭取は「農業を成功に導く手順を示したい」と意気込みを述べた。地銀の農業参入は異例。南九州の基幹産業の農業にどうてこ入れしていくのか。注目が高まっている。

■“南の食糧倉庫”前面に
 同行が農業参入を決めた背景には、農業を基幹産業とする南九州経済の特性がある。鹿児島県の2014年の農業産出額4263億円で全国3位。本県は5位3326億円、そして熊本が6位3283億円。九州FGが地元とする南九州3県の合計額は、全国トップの北海道の1兆1110億円に匹敵する金額。上村頭取は「食糧倉庫たる位置付けを確固たるものにしたい」とする。

 同行は2003年から農畜産、水産業を中心とした農業関連群(アグリクラスター)への融資を積極的に実施する。「農業の衰退は、地域経済の衰退」という理念に基づいてのことだ。自前の肥育・繁殖牛の動産担保融資(ABL)管理システムは、担保の評価、管理が難しい畜産業への融資を可能にした先進的取り組みとして評価が高い。

 とはいえ、同行が直接農業の現場に参入するのは初の挑戦。上村頭取は「農畜産業には10年以上取り組んできた」と自信をのぞかせる。全国でも1次産業を積極的に関与してきた地銀としてのプライドは高い。また「地銀が地域経済のトップ企業だと言うのなら、(1次産業の維持のために)果たすべき義務と使命がある」と意義を語り、あらためて地域経済での農業の重みを強調する。

■現役支店長が社長
農業法人「春一番」を地元企業などと設立した鹿児島銀行。現役支店長を社長に就任させ、同行の経営責任を明確化した

農業法人「春一番」を地元企業などと設立した鹿児島銀行。現役支店長を社長に就任させ、同行の経営責任を明確化した

 春一番の経営責任を明確化するため、社長に現役の支店長を就任させ、行員2人を出向させた。支店長としての経験や営業力を発揮してもらうための抜てきだという。農業に熟知した人材よりも、農業に新たな風を吹かせる人材を選らんだとみられる。そして、上村頭取は「農業で直接利益を得ようとは思っていない。どうやったら活性化できるかを試す」と説明する。
 
 農業のIT化にも取り組む。同行が中心となって設立したIT・システム関連会社のサザンウィッシュ(鹿児島市)が情報通信技術(ICT)の研究開発を行う。温湿度、二酸化炭素量、施肥量などをシステム化することが狙いだ。そして次のステップを「仕組みをつくって地元の農業従事者に渡すこと」(上村頭取)と位置付ける。その先には東南アジアへの農業輸出も掲げる。

 農家などの指導を受けながら、今秋にはタマネギを植え、来春に極わせタマネギとして収穫する。さらに来夏にはオクラを収穫する。同時に耕作放棄地にはオリーブを植樹する方針。上村頭取は「われわれはニューカマー(新規参入者)だから全然違った発想で農業に取り組める。自分たちがもうかるためではなく、地域活性化につなげなければいけない」と強調した。

■販路を確保して作る
 記者会見での上村頭取への一問一答は次の通り。

 -農業に参入した背景は。

 鹿児島、宮崎、熊本では基幹産業が農業。耕作放棄地や農地法、後継者不足の問題がある。そして農業が収益事業となっていない。地銀の使命として、農業の形を変えて収益事業にしたい。福利厚生や休みが取れる形にして、後継者が安心して継げるようにしたい。農業従事者が収益を上げて、生活できるようにしなければ意味がない。
 
 -どのように収益事業とするのか。

 春一番の設立で最初に話し合った相手は青果会社。どの時期にどの作物を作れば売れるかを聞いた。そして販路を確保してから作物を決めた。売ることから考えないと、売れないということ。ここに既存の農業との違いがある。旬の作物であれば、色や形についてそこまで求められないし、高値で売れる。極わせタマネギやオクラの早期栽培、出荷は南九州の温暖な気候を生かせる。

 -地銀として果たすべき役割は。

 銀行には人、物、金、時間、情報がある。農業は収益を上げるまで耐える時間が必要だが、われわれは資本が盤石だから耐える時間も持っている。そして、農業参入は急ぐべきだと考えた。耕作放棄地がどんどん増えて、農業が再生できなくなるからだ。地元経済のトップ企業であるわれわれには産業を守る義務がある。
(巣山貴行)


 春一番 鹿児島銀行、北九州青果、鹿児島中央青果などの地元企業が共同出資して9月30日に設立。日置市に農地を確保し、3000平方メートルで野菜栽培、耕作放棄地4万平方メートルにオリーブを植樹する。事業規模に合わせ農業大学校や農業高校からの雇用も予定する。

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