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2019年7月18日(木)
フォーカス

「福岡・ベンチャーを生かす」(下)

2016/06/30
【フォーカス】スタートアップカフェで新商品について話す丸太耕輔代表(右)と上野敬之(中央)、藤見哲郎さん

 スタートアップカフェ  60社起業、機能さらに充実

 2014年に起業と雇用の創出を目指す国家戦略特区に指定された福岡市。その拠点施設として開設されたのが「スタートアップカフェ」だ。起業支援に精通した専門家による応談や、先輩起業家によるセミナー等を実施。開設から約1年半でITなどを中心に60社ほどが起業した。外国人の起業支援や人材マッチングにも対応するなど、その機能を充実させている。

人とつながり世界広がる

スタートアップカフェで新商品について話す丸太耕輔代表(右)と上野敬之(中央)、藤見哲郎さん

スタートアップカフェで新商品について話す丸太耕輔代表(右)と上野敬之(中央)、藤見哲郎さん

 同市中央区の書店3階にあるスタートアップカフェ。今月21日、蜂蜜加工品を製造・販売するヴァンベールフーズ(福岡市)で商品開発と販路開拓を担当する上野敬之さん(42)が新商品の打ち合わせのために訪れていた。同社は、博多湾に浮かぶ能古島で養蜂を営む農業生産法人が6次産業化を目指して昨年1月に設立。6次化支援ファンドからも出資を受け、福岡市内のホテル日航福岡や食のセレクトショップなど福岡県内の約30店舗を中心に商品を販売している。

 上野さんと打ち合わせをしていたのは、農産物販売などを手掛ける青山リバティハウス(熊本県宇城市)の丸太耕輔代表(30)。宇城市で生産されるショウガのブランド化に向け、能古島の蜂蜜とコラボしたジャムの商品化を検討している。

 同カフェで起業の相談などを受けるエグゼクティブコンシェルジュの藤見哲郎さん(38)が2人を引き合わせた仕掛け人。「販路拡大のために人を雇いたい」と相談に訪れた丸太代表に「人を雇うと固定費がかかるので、まずは福岡で売り先をつくる方が先」と新商品の開発を提案。6次化の相談に来ていた上野さんを紹介した。2人は「いろんな人とつながって、どんどん世界が広がる」と口をそろえる。

毎週行われている弁護士や行政書士などによる個別相談会

毎週行われている弁護士や行政書士などによる個別相談会

 同カフェは14年10月にオープン。「TSUTAYA(ツタヤ)」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(大阪市)に運営を委託している。一般的な公的施設とは違い、誰でも気軽に立ち寄って相談、交流できる雰囲気が特徴だ。開設から今年3月までの相談件数は約2000件に上る。

 「コンシェルジュ」と呼ばれる投資ファンド運営会社社員やコンサルタントなどの専門家ら11人が交代で常駐。官民の起業支援メニューを教えたり、自身のネットワークを活用して支援者を紹介したりする。弁護士や税理士、行政書士、金融機関など、起業の手続きに必要な専門家による個別相談会(要予約)も開き、起業に関するあらゆる相談にワンストップで対応できる体制を整えている。

 また、実践的な助言や交流ができる場として、起業家や専門家によるセミナーやイベントも頻繁に開催。今年3月までに500回ほど開催し、約1万2000人が参加した。

外国人の起業もサポート

 福岡市は昨年12月中旬から国家戦略特区の特例を活用し、「スタートアップビザ」制度を創設した。外国人が日本で新たに事業を始めるために必要な在留資格取得の要件を緩和。通常は「事業所の開設」「常勤雇用者が2人以上」「資本金や出資が500万円以上」などの要件が必要だが、事業計画を同市に提出し、将来性などが確認されれば、半年間の在留資格が認められる。

 6月中旬までに10人ほどが申請。市はビザ取得に必要な証明書を7人に発行し、これまでにフランス人2人が共同で起業している。英語にも対応しているスタートアップカフェでは起業を目指す外国人からの相談も増加しており、藤見さんは「外国人にとっての課題を改善しながらワンストップで対応できる環境を整えていければ」と話す。

 市は、3月にスタートアップ人材マッチングセンターも開設。事業に必要な人材を確保したい起業者とスタートアップで働きたい人をつないでいる。市創業・大学連携課の富田雅志課長は「行政では対応できない多様な課題を考えれば、まだまだいろんな事業が出てくるはず。チャレンジしたい人がチャレンジできる環境を整え、福岡市が盛り上がっていけばいい」と語る。
(高森千絵)

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