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2020年2月21日(金)
フォーカス

採用戦線異状あり(下)

2015/06/11
【フォーカス・採用戦線異状あり(下)】対応策 学生のハートをつかめ

 対応策  学生のハートをつかめ

 厚生労働省などの調べでは、今春卒業した大学生の就職率は96.7パーセント。前年同期比2.3ポイント増で、過去最高だったリーマンショック前の2008年春(96.9パーセント)に次ぐ水準だった。業績回復に大手企業の採用意欲は高く、16年卒も学生優位の売り手市場は変わらない。本県のような地方に拠点を置く企業は厳しい採用活動を余儀なくされていて、優秀な人材を獲得するため試行錯誤している。

将来を見据えて採る

都城市内にある屋外の研修施設で、送電工事に使うやぐらづくりの練習に取り組む九南の新入社員たち

都城市内にある屋外の研修施設で、送電工事に使うやぐらづくりの練習に取り組む九南の新入社員たち

 送電や配電、通信など幅広く電気工事を手掛ける九南(都城市)は、今春と同水準の30人の確保を目指す。20年の東京五輪開催に関連した首都圏での業務増や技術者の高齢化に加え、老朽化で今後増えると見られる電気インフラのメンテナンス工事に対応できる人材を育てるためだ。安田伸一郎取締役総務本部長は「ある程度の人数をそろえないと各部署のニーズに応えられないし、技術者を育てるには時間がかかる。将来を見据え、少し無理をしてでも採る」と話す。

 「若い人に見放されないよう給与も福利厚生も見直していく」と、大学卒の技術職の初任給はこの2年間で1万円上がって18万3000円に(地域手当別)。今春には都城市内の独身寮を全てエアコン、ベッド付きに改装し、宮崎市にも独身者用のアパートを新築した。三股町の関連会社の敷地内に新入社員向けの実習棟も整備。菅付浩司総務部長は「学生と話すと向上心を感じる。彼らが企業を選ぶ要素は二つ。給与とどう自分を成長させてくれるかという点。そこに応えるのが大切」と語る。

九南は人材確保のため、都城市内にある独身寮の全ての部屋をエアコンとベッド付きに改装した

九南は人材確保のため、都城市内にある独身寮の全ての部屋をエアコンとベッド付きに改装した

 福利厚生に積極的な投資を行う一方、九南は大手就活サイトを利用していない。「インターネットの時代だが、就活サイトは大手企業向けで広告費も高い。大学や専門学校へ足を運ぶ方が直接学生に訴えかけられる。予算も施設整備などに使った方が効果的だ」

18年ぶりの増額

 県内大学の就職担当者から「インパクトが大きかった」と声が上がったのが、18年ぶりとなる宮崎銀行の初任給引き上げ。15年度から新卒者の初任給は、大学卒の総合職で17万2000円から20万5000円となった。髙田幹生人事部企画役は「非常に重い決断だったが、都市部では20万円超が当たり前。求人条件で見劣りするハンディを解消したかった」と説明する。引き上げは昨季も本格的に検討したが、採用スケジュールの短期化が決定打になったという。

 売り手市場に学生の間では大手志向=安定志向が強まり、本人の想定より「上」の企業から内定をもらって既に就職活動を終えた学生もいる。一方、IT系企業の説明会には、最初から起業意識の高い学生が集まるなど採用戦線は混とんとしている。

 自ら採用活動を行う日向中島鉄工所の島原俊英社長は、県教育委員長も務める。会社説明会では事業内容や福利厚生の説明の前に「何のために働くのか、どういう働き方や生き方を今後していくのか。よく考えてから就活に励んでほしい」と説く。それは「ぼんやりとしたままだと、入社してから必ず『これでいいのか』と悩む。企業は時間と金をかけて若い人材を育てる。2、3年で辞められると双方にとって大きな損失」だからだ。

 採用環境の変化に企業はどう対応すればいいのか。みやぎん経済研究所の杉山智行主任研究員は、学生のインターンシップ担当を10年間務め、これまでに100人を受け入れた経験がある。「学生は10年後、20年後のことなど分からない。企業が明確なビジョンや長期戦略、もしくは『夢』を見せるべきだ。充実した育休制度など今の時代に合った労働環境を整備し、どうスキルアップさせられるのか提示しないと、学生たちは振り向いてくれない」
(経済部・久保野剛)

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