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商標を守れ(上)

2014/09/18
宮田本店の看板商品「日南娘」。日南市と旧細田町が合併した1971(昭和46)年に発売された

 対応  常にアンテナを高くして


 特許権や実用新案権といった知的財産(知財)は、企業経営に高い効果をもたらす。中でも商品などのマークである商標権は中小企業にとって身近な知財であり、自社のブランドを認知させる上でも強力なツールの一つといえる。ただ、県内経営者の商標権への認識はそう高くないのが実情で、自社の経営を脅かすケースもみられる。県内企業の事例を交えながら、商標権を取り巻く現状を探る。

軽く考えていた


宮田本店の看板商品「日南娘」。日南市と旧細田町が合併した1971(昭和46)年に発売された

宮田本店の看板商品「日南娘」。日南市と旧細田町が合併した1971(昭和46)年に発売された

 日南市大堂津にある宮田本店(宮田千賀子社長)。芋焼酎「日南娘(ひなむすめ)」を看板商品にしている県内でも小規模の焼酎メーカーで、宮田社長は8代目となる。

 昨年、取引先の佐賀県の小売店から連絡が入った。「石川県の個人が日南娘の商標を申請している。(日南娘の)商標は大丈夫か」。小売店は特許庁が保有する商標、特許などに関する情報を閲覧できるウェブサイト(特許電子図書館)からその動きが分かった。宮田社長は驚き、慌てた。「今まで通りに日南娘を売れなくなるかもしれない」

 宮田本店は江戸時代の1804(文化元)年に創業。酢の醸造に始まり、1921(大正10)年から焼酎を手掛けた。日南娘を売り出したのは71(昭和46)年。優しい芋(黄金千貫)の香りとしっかりした味わいが人気で、全国に販路を持っている。ほかの銘柄の焼酎もあるが、「日南娘のおかげで今がある」と宮田社長は話す。

 しかし、商標登録への配慮が足りなかった。12年前に商標を出願したものの、特許庁は登録に適さないと拒絶。その2年後、福岡県内の焼酎メーカーが類似の名前で商標登録していることが判明。商標が出願される前から使い、広く認識されている場合に引き続き使用が認められる権利(先使用権)で対抗することを決め、多くの古い資料を集めた。ただ、それで終わっていた。

 今回は商標を登録することにし、再度申請したが拒絶された。このため、石川県の男性の申請が拒絶されるのを待って、意見書とともに長年にわたる日南娘の販売実績などを示す資料を出したところ、登録が認められた。宮田社長は「商標を軽く考えていた。最悪のケースを考えれば、日南娘が使えなくなったかもしれない」と振り返る。

出願件数は商標トップ


 商標は企業や商品の顔。長く使い続けることでブランドとして消費者に認知され、信用や価値を高めることになる。特許、実用新案、意匠は保護期間が決まっているが、商標は保護期間(10年)後も更新が認められていて、半永久的に保有することが可能になっている。

先使用権を主張するため集めた資料。雑誌や新聞記事などがある

先使用権を主張するため集めた資料。雑誌や新聞記事などがある

 九州知的財産戦略会議(福岡市)のまとめでは、2012年の本県の知的財産出願件数トップは商標の275件。次いで特許182件、意匠42件、実用新案32件が続く。商品を売るには企業イメージも大切であることを考えれば、企業イメージを表す商標はマーケティング戦略上、非常に重要だ。売れ行きが好調でも、商標を登録しておかなければ先に登録した企業から使用差し止めを求められる場合もある。その点でも早めの登録が不可欠だが、宮崎市の弁理士小木智彦さんは「まだまだ経営者の意識は低い」と指摘する。

 日本を代表する佐賀県有田町の伝統工芸品「有田焼」の商標が今春、中国で登録された。中国での有田焼の商標をめぐっては、中国人の男性が2004年に登録。10年に上海市で佐賀県産品展を開催した際、この事実が分かり、有田焼を使用できなかった。ただ、中国の商標法では3年間使われなかった商標は取り消しを申請できるため、取り消しを求める一方で新たに商標登録を申請していた。

 佐賀県陶磁器工業協同組合の百武龍太郎専務理事は「ようやく中国国内でも有田焼として売り出せるようになった。販路拡大に向けた環境が整った」とし、今後有田焼のブランドを守るため監視体制を強化するという。

 日本で取得した商標は日本国内でしか効力を発揮できない。有田焼の事例を踏まえ、小木さんは「宮崎でも同じことが起こっているかもしれない。有名な商標が外国で勝手に登録されているのを気付いていないだけではないか。常にアンテナを高くして」と警告している。
(経済部・杉尾守)

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