みやビズ

2018年7月21日(土)
クロストーク

オール宮崎での航路存続が最善

2017/12/08
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宮崎カーフェリー(宮崎市)社長 黒木政典さん 宮崎港と神戸港をつなぐ本県唯一の長距離カーフェリー航路を維持するため、政府系ファンド「地域経済活性化支援機構」や県、県内経済界などでつくる「地元連合」が来年3月に新会社を設立し、宮崎カーフェリー(宮崎市)の事業を引き継ぐことになった。長年、本県航路を守ってきた同社の黒木政典社長に、地元連合への事業承継や航路存続の意義について聞いた。

宮崎カーフェリー(宮崎市)社長 黒木政典さん


くろき・まさのり 中央大法学部卒。大学時代に古里の日向市細島と川崎市を結ぶ京浜航路の開設計画を知る。「大都会と宮崎が隣県になる」と胸を躍らせ、1970(昭和45)年に日本カーフェリー入社。後身のマリンエキスプレスでは2003年、火中の栗を拾う形で社長就任。04年、宮崎カーフェリーを設立し社長に就いた。71歳。

 くろき・まさのり 中央大法学部卒。大学時代に古里の日向市細島と川崎市を結ぶ京浜航路の開設計画を知る。「大都会と宮崎が隣県になる」と胸を躍らせ、1970(昭和45)年に日本カーフェリー入社。後身のマリンエキスプレスでは2003年、火中の栗を拾う形で社長就任。04年、宮崎カーフェリーを設立し社長に就いた。71歳。

 宮崎港と神戸港をつなぐ本県唯一の長距離カーフェリー航路を維持するため、政府系ファンド「地域経済活性化支援機構」や県、県内経済界などでつくる「地元連合」が来年3月に新会社を設立し、宮崎カーフェリー(宮崎市)の事業を引き継ぐことになった。長年、本県航路を守ってきた同社の黒木政典社長に、地元連合への事業承継や航路存続の意義について聞いた。
(聞き手 小川祐司)

 -県外の同業他社に引き継ぐという選択もあった。なぜ、地元連合だったのか。

 カーフェリー事業は本県と県民への影響が大きく、「宮崎県のために、宮崎県民のために」という経営判断、立ち位置が求められる。もし、県外の会社と合併などしたら、その立ち位置が守られるとは限らない。本県航路から撤退するリスクもある。そうした意味で、オール宮崎の皆さんで航路の存続を図る体制が最善だと判断した。

 -新会社には県と宮崎市も出資する。新船への更新でも公的支援の可能性がある。事業の公益性をどのように考えるか。

 当社は本県の物流、人流に携わっており、これまで社員には「公共輸送機関だと自覚してほしい」と求めてきた。安価で安定的に大量輸送できるのがカーフェリー。旅客・乗用車はビジネスから修学旅行、観光、帰省まで多様なニーズがある。貨物も基幹産業である農産物をはじめ、生活物資から工業製品までさまざまな物を運んでいる。いろいろな人々の生活や産業と密着し、幅広いニーズに応えられるのが一番の公益性だと考える。公的資金の投入や公的支援に対し、皆さんに十分お返しできる事業になり得る。

 -現在使用する2隻は就航から20年以上が経過している。新会社が2022年をめどに新船を建造する計画だが、これによって新たな公益的価値が生まれる可能性はあるか。

 現在の船は個室が少なく、外国人旅行者から敬遠されている。香港の旅行代理店からは「リプレイス(新船建造)をするなら個室を増やしてほしい。そしたら、すぐにでもお客さまを送る」と言われている。リプレイスすれば、本県へのインバウンド(訪日外国人)の流れをつくっていけるだろう。また、新船はトラックの積載台数が増えるので、これまで乗せきれなかったトラックの受け入れが可能になる。

 細島-川崎航路の開設をはじめ、50年近く本県航路を見てきて思うのは、カーフェリーによって「それまでなかったもの」が本県に生まれたということ。「フェリーがあるから宮崎に進出した」という企業立地、関東地区からの修学旅行などがそうだ。これからも安価な大量輸送手段を持ち続けることが、企業進出をはじめとするチャンスを本県にもたらすであろうし、リプレイスによる船の大型化によってそのチャンスは広がると思う。

 -新会社への移行でカーフェリー事業の持続可能性が高まった。本県トラック業界も深刻化する人手不足対策の設備投資に踏み切れる。

 荷物を積んだシャーシ(タイヤ付きの荷台)だけを船で運ぶ「無人航送」というものがある。出発地でトレーラーが乗船し、シャーシを切り離して船内に残し、運転席の付いたヘッド(トレーラーの頭部分)は下船。到着した港では現地のヘッドが乗船してシャーシをつなぎ、下船後に陸送を行うものだ。ドライバーが乗船する必要がなく、ドライバーの負担は大きく軽減される。

 この無人化は、ドライバー不足に苦しむトラック業界にとっては画期的な対策だが、当社が運ぶ台数のうち無人は4割で、まだ6割は有人だ。シャーシを増やすための設備投資は高額であり、当社が新船建造の計画をしっかり示さなかったことで、トラック会社が躊躇(ちゅうちょ)してきた部分がある。ところが、新会社への移行が発表され、新船建造も明確になったことでトラック会社の投資意欲が高まっている。今後、本県でも無人化が大きく進むだろう。

 -神戸航路の成長可能性をどう考えるか。また、本県から運ぶ上り便の貨物に対し、本県に向けて運ぶ下り便の貨物が少ない。

 大阪南港から神戸港に移転し、旅客・乗用車は期待通りの右肩上がり。宮崎、関西地区にある観光地の売り込み方次第でまだ伸ばせる。貨物は大阪南港と同程度と見込んでいたが、新規の取り扱いが出始めている。

 課題となっている下り便の貨物についても需要はある。ただ、「利用してもいいが、宮崎からの上り便にも乗せてほしい」というニーズが多い。上り便は秋から春にかけ、県内で生産された農産物や工業製品の輸送で満船。新船建造で積載台数が増えるので、県内のニーズに応えた上で、関西地区やその周辺の新規開拓にも取り組める。

 -神戸港に移転して3期連続の黒字決算。なぜ、このタイミングでの事業承継なのか。

 経営的には黒字を出せる体制が整った。しかし、トラック業界からは人手不足で悲痛な声が上がっている。そうした状況がなければ、急いで新船を造るということは考えなかっただろう。トラック業界とは共存共栄の関係であり、今の船を使いながらフェリー事業を続けるのではなく、トラック業界が安心できる次の形に早くリセットしなければならない。できるだけ早く新船を建造することが、人手不足の緩和につながる。現在の経営状況で新体制に引き継げば、速やかに新船建造にたどり着けると判断した。

 -新会社の設立後、どのような役割を果たしていくのか。

 どういう立場であれ、新船が走りだし、安定するまではフォローしていきたい。この業界は特殊だ。新船建造を一つ取っても、エンジンや客室、パブリックスペースなど実にさまざまなタイプの船がある。長年携わった経験から、よりよい船を造る役に立ちたい。また、景気や燃油価格の変動といった経営課題が生じた場合、影響の規模や、影響が継続する期間の見通し、講じるべき対策などについても助言できると思う。

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