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2018年6月23日(土)
クロストーク

ふるさと納税で官民に変化

2017/09/01
都城市総合政策部長 吉永利広さん 2016年度のふるさと納税で都城市が約73億3000万円を集め、2年連続で日本一となった。かつての寄付額は年間1000万円に届かない水準。

都城市総合政策部長 吉永利広さん


よしなが・としひろ 鹿児島大法文学部卒。1984年入庁。中心市街地の活性化に長年従事。その後、市町村合併や企画業務を経験し、医師会病院移転やインター工業団地整備を柱とする「サブシティ構想」を担当した。都市計画課副課長、総合政策課長を経て今年4月から現職。都城市出身。56歳。

よしなが・としひろ 鹿児島大法文学部卒。1984年入庁。中心市街地の活性化に長年従事。その後、市町村合併や企画業務を経験し、医師会病院移転やインター工業団地整備を柱とする「サブシティ構想」を担当した。都市計画課副課長、総合政策課長を経て今年4月から現職。都城市出身。56歳。

 2016年度のふるさと納税で都城市が約73億3000万円を集め、2年連続で日本一となった。かつての寄付額は年間1000万円に届かない水準。14年度から本腰を入れ、肉と焼酎に特化した独自路線や高い還元率、工夫を凝らしたPR戦略によって一躍、全国トップに躍り出た。都城ブランドの浸透、地場産業の振興といった目に見える成果とは別に、市職員の意識や地域経済にどのような変化があったのか。所管する市総合政策部の吉永利広部長に聞いた。

 -ふるさと納税の返礼品を提供している地場の事業者から「市職員に『稼ぐ』という意識が生まれた。歓迎すべきことだ」という声が聞かれる。

 行政サービスというのは成果が見えづらいが、ふるさと納税は寄付の件数、金額が毎日出てくる。イベントや広告などの効果を検証し、必要な改善を行うという努力や工夫の結果が数字に表れる。これは行政職員にとって新鮮であり、苦しくもあったと思う。担当職員が熱を持って数字を追い続けてくれたおかげで、連続日本一を達成できた。

 当市ではふるさと納税の業務を外部に委託せず、“直営”で行っている。寄付のリピーターを増やすには、電子メールや電話で寄せられるお客さまの多様なニーズに迅速・的確に対応しなければならない。こうした経験を通じ、「お客さまから支持されるにはどうしたらいいのか」という顧客最優先の意識や企業的な感覚が芽生え、磨かれてきた。

 -返礼品を提供する事業者と市役所の距離が縮まり、互いに刺激を受けたのでは。

 これまでは民間から要望を受けて、行政が応えるという関係だった。ふるさと納税は官民協働で互いの利益を上げていく。そういう観点で取り組んだ事業。どうしたらお客さまに選ばれるか、リピーターになっていただけるかということを互いに勉強し、工夫し、実践してきた。その過程で距離が縮まった。

 昨年度、返礼品を提供している64事業者(現在は84事業者)を対象にしたアンケート調査(回答63事業者)では、実に65%(41事業者)が「社員の意識・会社の雰囲気が変わった」と答えた。具体的には「商品や社名を対外的にPRでき、社員のモチベーションが上がった」「売り上げ、資材管理に敏感になった」「検品を入念に行うようになった」といった回答が寄せられている。入念な検品などは私たちが繰り返しお願いしてきたことであり、距離を縮め、頑張ってきた成果だと思う。

 自発的に返礼品の箱に市のロゴを入れたり、メッセージを付けたり、お客さまの声を拾うための返信用はがきを入れたりする事業者がおり、顧客最優先の姿勢を学ばせていただいた。一方、寄付者からクレームが寄せられた事業者には改善を求め、改善報告書を提出してもらっている。必要であれば現場にも足を運ぶ。徹底して対応しないと、その事業者はもちろん、都城市全体の評判を落とすことになるからだ。このように、私たちは意識の高い事業者からは学び、それを踏まえながら、小売りや通販の経験が乏しい事業者にはレベルアップを働き掛けることで全体の底上げを図っている。

 -返礼品を提供する全事業者で組織された「都城市ふるさと納税振興協議会」では、会員が運営費を出し合い、ふるさと納税の振興やまちづくりに役立てていると聞く。

 運営費でネット戦略、新聞・雑誌広告、大手通販とのタイアップ企画、都市圏でのイベントなどを協働でやる仕組みができた。取り組みの後は必ず分析を行い、改善につなげる。官民でPDCAサイクルを回している感じだ。これとは別に、まちづくり活動に取り組むNPO法人などの支援も行っている。

 また、協議会ではふるさと納税が仮になくなっても、蓄積されたスキルは生きるので、そこをしっかり学び合おうという意識が芽生えている。年3回の研修会では意見交換を行い、クレーム対応やパッケージの改善、事務処理の効率化などのノウハウやアイデア、経営意識などを共有。会員同士のコラボ商品も誕生している。

 -地方においては、自治体の施策が商工業や地域経済の振興に大きな役割を担う。これを踏まえ、ふるさと納税の収穫を総括してほしい。

 最大の収穫は、市が積極的に取り組んでいる「対外的なPR」を事業者と共に展開できたことだ。対外的PRが自分たちにもプラスとなって跳ね返ってくることを認識してもらえた。また、1社単独ではなく、地場の事業者がスクラムを組んで動く重要性を理解してもらえたことで対外的PRも効果的に打てるようになった。事業者が都市圏へ営業に行くと、「ふるさと納税の都城ね」「肉と焼酎の都城ね」などと先方の反応がよく、商談が前に進むそうだ。

 市政全般で民間とのパートナーシップの構築、官民協働の環境整備を進める上で、大きなターニングポイントになった。雇用促進や移住・UIJターンの促進、婚活、子育て支援など企業とのタイアップを必要とする施策は多い。ふるさと納税をきっかけに、行政が企業に飛び込んでいくときの垣根が低くなり、企業側にも協力的な姿勢が広がった。

 「手法の確立」も収穫だ。池田宜永市長は職員に「とがった政策を。政策の焦点をぼかしても効果が見えにくい。(返礼品を肉と焼酎に特化したように)突破口を一点に絞ってやり抜けば、成果が出るし、次のステージが開ける」と常に言っている。それをふるさと納税で実践、証明できた。この手法は多くの施策に使える。以上のような収穫を継続すれば、必ず地域経済にプラスになる。
(聞き手・小川祐司)

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