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2018年6月22日(金)
クロストーク

「専門職大学」 他地域に先駆け設置を

2017/07/28
宮崎経済同友会代表幹事 小池光一さん 宮崎経済同友会は既存の大学や短大とは別に、農業やITなど成長分野で即戦力の人材育成を目指す「専門職大学」の本県設置を求める意見書を6月末に県と県議会へ提出した。なぜ専門職大学が本県に必要なのか、小池光一代表幹事(宮崎銀行会長)に聞いた。

宮崎経済同友会代表幹事 小池光一さん


こいけ・こういち 元日本銀行理事で2005年に宮崎銀行入り。専務、副頭取、頭取を経て15年6月から会長。同月に宮崎経済同友会の代表幹事に就任した。日本島しょ学会会員。東京大経済学部卒。東京都出身、69歳。

こいけ・こういち 元日本銀行理事で2005年に宮崎銀行入り。専務、副頭取、頭取を経て15年6月から会長。同月に宮崎経済同友会の代表幹事に就任した。日本島しょ学会会員。東京大経済学部卒。東京都出身、69歳。

 宮崎経済同友会は既存の大学や短大とは別に、農業やITなど成長分野で即戦力の人材育成を目指す「専門職大学」の本県設置を求める意見書を6月末に県と県議会へ提出した。なぜ専門職大学が本県に必要なのか、小池光一代表幹事(宮崎銀行会長)に聞いた。

 -専門職大学とは、どのようなものか。大学制度があるのに、なぜ新しい“大学”が必要なのか。

 一口で言えば、就職する時点で一定の専門性を求められる業務を担えるだけの実践的な技能を身に付けた人材を育てる高等教育機関。中教審の答申(2016年5月)は具体的な業種を示していないが、一般的にはITや観光、医療・介護、農業、アニメーションなどの成長分野で即戦力となる人材育成を目指すと言われている。

 若者の職業意識の低さや、目的意識が希薄なまま大学に進学していることなどが近年指摘されている。ただ、しっかりした職業観を身に付けるには今の大学制度では限界がある。大学では教養教育と学術に基づいた専門教育が中心だからだ。

 理由はもう一つある。モノのインターネット(IoT)や第4次産業革命と呼ばれる技術革新、激化する国際競争、生産年齢人口の減少など日本の産業や労働市場の構造が大きく変化している。その変化に対応できる高度な技能を持つ人材の育成は急務で、今の大学制度ではやはり限界がある。

 同じように、社会人が高い技術や知識を身に付けるために学び直す場も必要だ。米国などにはビジネススクールが多数あり、社会人を積極的に受け入れている。このような背景から創設が長期間にわたって議論され、19年春の開学を目指すという答申が出た。

 -同友会が意見書を出すに至った経緯は。

 私が代表幹事になったのが2年前。これまでも会員の経営者が高校で出前授業をするなどしてきたが、もっと同友会の存在を県民に知ってもらいたいと考えた。

 昨年5月に特別委員会を設置し、私が初代委員長に就いた。1年間で成果をまとめる短期と、複数年で取り組む中長期のテーマを決定。中長期は大島(日南市南郷町)の活性化支援をやっている。短期テーマに専門職大学を選び、本県の人口統計や学校制度、就職状況などを分析。専門家を招いて勉強会を開くなど議論を重ね、本県への設置が必要という意見書をまとめた。

 中教審の答申は昨年5月。それを受けた改正学校教育法の成立が今年5月。このタイミングでの提言は、文部科学省が専門職大学の設置基準を現在策定中だから。うまくいけば今秋から設置申請を受け付けるという。

 制度設計の詳細が分からず、提言は時期尚早との声もある。だが本県の場合、専門職大学が必要な一般的な社会背景に加え、高卒者の県内就職率は全国最下位で、県外への大学進学も多い。自然減以上に厳しい人口の社会減がある。専門職大学が他県や都市部にできたら、若者の流出は加速するだろう。地方創生という意味でも、他の地域以上に専門職大学を本県に設置する必要性は高い。それも他の地域に先駆けて開設しなければならないと考えている。

 実現に向け、なるべく早く官民で取り組むことが肝要だ。静岡県は既に手を挙げていると聞く。本県の農業大学校(高鍋町)のようなものがあり、それを専門職大学にしようと動いているそうだ。意見書では、県に本県の産業構造などを踏まえてどの分野の専門職大学を設置するのが適当か具体的な検討と、関連する中央省庁への働き掛け、われわれ経済団体との緊密な連携を申し入れた。

 -経営者として求める人材は。

 高い職業観やコンプライアンス意識、柔軟な発想力を持つ人。それは今後も変わらない。少子化を止めようがない中で企業が今の力を維持・発展していくために、取り組むべきことは二つ。女性や高齢者、外国人など多様な労働力を積極的に活用していくこと。もう一つは生産性を上げることだ。

 生産性の向上には、ビジネスモデルを思いきって見直す方法もある。専門技能を持ち、現場のけん引役になれる人をより多く活用できれば生産性の向上につながる。

 かつての人材育成は、全く白紙の学生を採って自社の色に染め上げていくものだった。それが人口減や業務の複雑化、繁忙化で企業に余裕がなくなり、教育の機会が減ってきている。中小企業がほとんどの宮崎では特にそうだと思う。

 若者の離職率が高いのも無理がない。高校を卒業したばかりの子が会社に入ると、一番若い先輩が40代というケースが当たり前になっている。昔はもっと年齢の近い兄や姉のような先輩がいた。職場内で教育しようにもできなくなってきている。そういった問題を補完するためにも、この新しい高等教育機関が必要だ。

 -企業側も連携へ体制整備が欠かせない。

 制度設計がまだなので推測するしかないが、カリキュラムや学期制の在り方は柔軟なものになると思う。インターンシップ(就業体験)など企業内実習は相当な時間を占めることになるだろうし、社会人の学び直しの場として、企業と大学の間を行き来しやすいように学期を前後期制とするのも一つの選択肢だろう。

 どの専門分野の人を採用するかで企業の対応は異なるだろうが、専門職大学の卒業生を採用する以上は、その技能を十分に活用できる現場環境の整備とジョブローテーションの構築が必要だ。

 カリキュラム編成に当たっては企業サイドのさまざまな要望を反映させるべきだし、編成の時点で企業と大学がコラボレーションするべきだ。答申では企業などで実務経験のある教員を4割以上配置するとしている。実はこれが一番難しいと私は思っている。企業内実習の場の提供や教員の供給など産学連携を従来よりはるかに緊密にしていかなければならない。
(聞き手・久保野剛)

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