みやビズ

2018年4月23日(月)
クロストーク

食と農の安全を考える 早川農苑(綾町)代表 早川ゆりさん

2017/03/10

 国内外で食の安全に対する関心が高まっている。食の根幹を成す農業には、この潮流に対応することが求められており、それは農業の持続的な発展にも不可避と言える。約25年前から自然生態系農業に取り組む早川農苑(綾町)はこの時代のトップランナーと呼べる存在。代表の早川ゆりさんに信条や今後の展望を聞いた。

人々の健康や環境のために


はやかわ・ゆり 1994年2月に農業生産法人シードカルチャーを設立し、早川農苑を運営。一般社団法人・県農業法人経営者協会理事を務め、県農業経営指導士としても活躍する。愛知県出身。写真は自社栽培のカモミールと

はやかわ・ゆり 1994年2月に農業生産法人シードカルチャーを設立し、早川農苑を運営。一般社団法人・県農業法人経営者協会理事を務め、県農業経営指導士としても活躍する。愛知県出身。写真は自社栽培のカモミールと

 国内外で食の安全に対する関心が高まっている。食の根幹を成す農業には、この潮流に対応することが求められており、それは農業の持続的な発展にも不可避と言える。約25年前から自然生態系農業に取り組む早川農苑(綾町)はこの時代のトップランナーと呼べる存在。代表の早川ゆりさんに信条や今後の展望を聞いた。

 --完全無農薬、無化学肥料で取り組む自然生態系農業。大変な苦労もあるのだろう。

 現在、4.5ヘクタールの農地で、パートを含めた12人で野菜や雑穀類を年間60種類以上栽培している。完全無農薬、無化学肥料の自然生態系農業は農地の管理に多くの人手が必要で、収益の面から見れば効率は悪い。しかし、それ以上の喜びがある。環境のため、食べた人の健康のためになるような農作物を育てる農園を目指している。これまでの取り組みで、土自体が本当に豊かに変わってきた。そこから取れる野菜は自然環境が与えてくれるご褒美だ。

 --自然生態系農業を始めたきっかけは。

 農薬管理指導士の資格を取り、父から農業資材会社を引き継いで、多くの農業の現場を訪れた。その中で目にしたのが農薬の管理をおろそかにして、健康を害する農家の姿。指導する立場から罪悪感を抱くようになっていたときに、ある農家が自宅の裏庭で自然に育てた、見た目は悪いが味の良い野菜を食べた。野菜の評価が見た目や大きさで評価され、味や栄養価が後回しにされる農業に対するクエスチョンマークが頭から離れなくなっていった。

 農業はこれでいいのかという疑問、おいしい野菜を食べたいという欲求に加え、高校生だった次女が農業に関心を持っていたことも後押しとなり、1992年、家族の反対を押し切って農業を始めた。綾町の山間地に農地を借り、宮崎市内の自宅から「通い農業」をしたときには、収穫直前にイノシシに食べられて作物が全滅し、あまりの現実にぼうぜんとなったことも。それでも「これが自然。人は生態系の中で生きている」と思い、踏みとどまった。93年には同町へ移住し、軌道に乗るまで時間はかかったが、少しずつ自分の思い描く農業を形にしてきた。

 --家族の反対を押し切っての挑戦に思いの強さを感じる。地域の反応はどうだったのか。

 「有機農業なんて誰が喜ぶの」といった声も聞こえてきて、つらいときもあった。しかし、理解者の協力を得てホテルやスーパーなどの前で野菜を売り、おいしさをアピールしていくうちに、自然生態系農業の苦労に対する理解と消費者の食の安全に対する意識も高まっていき、全国に購入する人が増えていった。スタッフやお得意さま、支援してくれる皆さまのおかげと感謝している。

 --自然生態系農業で栽培した農作物は、加工品の材料としても価値が高い。加工分野の取り組みは。また今後一番の課題を教えてほしい。

 ごまかしのないやり方にとことんこだわって離乳食や介護食などに加工し、少しでも売り上げを伸ばせる分野として育てていきたい。食は健康の基礎となる大事なエネルギー。加工は、誇りを持って栽培している農作物の付加価値を高めることにもなる。「すぐに収益にはつながらなくても、後から結果はついてくる」という考え方をただの理想にすぎないと言う人もいるが、そうは思わない。消費者が求める「おいしさ」や「安全」という価値に対する評価は、いつかは対価に反映されると思う。こういった取り組みを少しずつ前へ進めながら、後継者をしっかり育てていくことが私の役割だ。
(聞き手 経済部・鬼束功一)

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