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2018年7月16日(月)
クロストーク

働き方を変える 拓新産業(福岡市)・藤河次宏社長

2017/02/24

「社員満足」優先し強い会社に


 政府の「働き方改革」推進の方針を受け、大企業を中心に長時間労働などが見直されている。これら大企業の取り組みに先んじて、約30年前から働き方の改革を実践してきた中小企業が福岡にある。建設機材レンタル・リースの拓新産業(福岡市)は「完全週休2日」「有給休暇完全消化」「残業ゼロ」を実現。「社員満足」を最優先する方針を貫きながら、黒字経営を続けてきた同社の取り組みにあらためて注目が集まっている。

ふじかわ・つぎひろ 福岡大学卒。建材を扱う商社に勤務後、現会社を創業。足場材の販売を行っていたが、10年後にレンタル・リースに転換。昨年、設立40周年を迎えた。働きやすい職場環境の取り組みで、「ワーク・ライフ・バランス大賞」優秀賞、「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」審査委員会特別賞などを受賞。2017年版の九州経済白書「人材枯渇時代を生き抜く地域戦略」でも紹介されている。福岡市出身。71歳。

ふじかわ・つぎひろ 福岡大学卒。建材を扱う商社に勤務後、現会社を創業。足場材の販売を行っていたが、10年後にレンタル・リースに転換。昨年、設立40周年を迎えた。働きやすい職場環境の取り組みで、「ワーク・ライフ・バランス大賞」優秀賞、「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」審査委員会特別賞などを受賞。2017年版の九州経済白書「人材枯渇時代を生き抜く地域戦略」でも紹介されている。福岡市出身。71歳。

 -働き方の見直しはどう取り組んだ。

 1976(昭和51)年の創業から約10年たち、新卒採用のため合同説明会に参加したところ、学生が誰も来てくれなかった。中小企業が小手先の改善をしたくらいでは目を向けてもらえない。本気で職場環境を変えて魅力ある企業にしようと考え、社内に宣言して始めた。

 顧客との兼ね合いもあるので、完全週休2日は社内で年間ローテーションを組んで月1回ずつ交代で出てもらい、出た人はその週に必ず休むという形で実践してきた。有給休暇の消化は、3カ月おきに消化できていない社員の名前を挙げてもらい、朝礼で私が「きちんと取るように」と呼び掛けた。経営者の本気度を知ってもらうために意識的に取り組み、それでも浸透するのに3年近くかかった。そして20年ほど前から「残業ゼロ」、15年ほど前から産休・育休、介護休業も導入した。

 -現実的には仕事のやり方を変えないと、実現できないのでは。

 いつでも休めるように仕組みを変えた。社員それぞれが一つの仕事に専念する方式をやめて、できるだけ複数の業務に関わってもらうように変更した。専門性があれば効率は良いが、その人がいないと誰も仕事が分からず休めなくなる。事務が営業に出るというわけではないが、似た仕事で多少色分けがあるので、複数の業務に関わって互いにサポートできるような体制にした。

 さらに、上司が帰らないと部下は帰らない、逆に部下が帰るまで上司が帰らない、といった互いに拘束してだらだら残るという悪い慣習をやめさせた。仕事も優先度を付けてやらないと、必要もないのに残業したりする。悪い慣習や前例があると互いに遠慮したり、動きづらかったりするので、トップダウンで声を掛け慣習を取り払った。ちなみに一昨年は1人当たりの残業時間が年間2時間だった。

 -取引先との関係に影響はなかったか。

 売上比率が高いほど、頼まれたら断りにくくなるので、1社当たりの売り上げを減らし、代わりに取引先を増やした。売り上げが十数パーセントあった会社も今は1社当たり1、2パーセント。これなら仮に取引がなくなっても全体でカバーできる。下請けのような関係になると、要求された通りにやらないといけない。結局、休日出勤で残業をさせられて、割増賃金も発生する。そんな関係を排除するのは会社にとってもプラス。「社員満足」を優先して、「顧客満足」を捨てるという会社の考えをきちんと主張できる関係にした。

 ただ、強く言うわけでなくお願いする。営業は面と向かって言いづらいので、営業以外の社員が月1回、工事現場に出向いて会社の考え方などを説明する。営業は嫌みを言われたり、同業他社と比較されたり、不利な面もあるようだが、それで顧客が離れるのは仕方がない。営業も今の職場環境を維持するため、と理解しているので、元に戻してほしいとは言わない。

福岡市早良区にある拓新産業の本社には多くの女性が働いている

福岡市早良区にある拓新産業の本社には多くの女性が働いている

 -働き方を変えると業績が悪化すると考える経営者もいる。

 職場環境の改善に対する経営姿勢を社員も理解してくれて、モチベーションも高い。「社員満足」のために、顧客を100パーセント満足させることができない分、コスト削減をお願いしたら社員も協力してくれる。割増賃金も発生せず損益分岐点も下がるので、デフレで売り上げは上がっていないものの、コスト削減で十分に利益は出ている。

 創業以来、赤字になったことはなく、過去10年は決算賞与を出すこともできた。最近は建設業界も少し好転してきて、ここ3年は最高益を更新している。結果的にだが、社員の労働生産性が上がった。誰もが言うように「企業は人」。人材確保、育成に真正面から取り組み、強い会社になった。

 -新卒は毎年、採用しているのか。

 15年ほど前の超氷河期の頃は、こんな田舎の会社でも説明会に約400人が来てくれた。採用は毎年2人前後だが、今でも200人前後の学生が来てくれる。就職情報サイトなどを使わず、会社のホームページに説明会の日程を入れるだけでこれほど集まってくれるのを目の当たりにすると、取り組んできたことが間違いなかったと思える。女性も毎年の新卒採用で増やしてきた。社員約70人のうち、3分の1が女性。今は3人が産休、育休に入っているが、社員数に余裕を持たせているので週休2日や有休消化ができている。

 長い目で見れば人材が確保、育成できれば、企業は生き残ることができる。経営者が売り上げを増やすことしか頭になければ、幹部はそれに応えようとして社員に無理をさせ、それが今問題になっている。「顧客満足」で売り上げを伸ばすことも大事だが、組織の中には人がいる。「社員満足」を優先するのも一つの選択肢ではないか。
(聞き手 福岡支社・高森千絵)

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