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人手不足へ熟練社員活用を 川越社会保険労務士事務所(宮崎市)所長 川越雄一さん

2017/01/13
景気の持ち直しや労働人口の減少で、企業の人手不足感が強まっている。本県は若者の県外就職率も高い。そこで頼りになるのがベテラン社員。50、60代の人に生き生きと働いてもらうための指南書「ベテラン社員さんがグッとくる“終わった人”にさせない会社」(労働調査会)を昨年10月に出版した社会保険労務士の川越雄一さん(宮崎市)に、60歳を挟んだ定年前後の働き方、働かせ方などを聞いた。

会社が手放せない人材になる


かわごえ・ゆういち 1991年に社会保険労務士として開業し、企業の労務指導に携わる。全国の中小企業に毎月2本配信しているメールマガジン「割烹着社労士川越雄一・労務のかくし味」が好評。2015年10月には「小さくてもパートさんがグッとくる会社」を出版した。宮崎商業高卒。宮崎市生まれ。58歳。

かわごえ・ゆういち 1991年に社会保険労務士として開業し、企業の労務指導に携わる。全国の中小企業に毎月2本配信しているメールマガジン「割烹着社労士川越雄一・労務のかくし味」が好評。2015年10月には「小さくてもパートさんがグッとくる会社」を出版した。宮崎商業高卒。宮崎市生まれ。58歳。

 景気の持ち直しや労働人口の減少で、企業の人手不足感が強まっている。本県は若者の県外就職率も高い。そこで頼りになるのがベテラン社員。50、60代の人に生き生きと働いてもらうための指南書「ベテラン社員さんがグッとくる“終わった人”にさせない会社」(労働調査会)を昨年10月に出版した社会保険労務士の川越雄一さん(宮崎市)に、60歳を挟んだ定年前後の働き方、働かせ方などを聞いた。

 -日銀鹿児島支店が昨年12月に発表した本県と鹿児島県の企業短期経済観測調査によると、製造業の雇用人員判断(先行き)指数はマイナス35と、バブル期の1991年3月のマイナス33を超えた。

 顧問先で人手不足の声を聞き始めたのが3年ほど前。パートタイマー確保のノウハウをまとめた前作「小さくてもパートさんがグッとくる会社」(労働調査会)を書いたときは、ほとんどの企業がパートに有給制度を整備してなかった。それだと今はまず人が集まらない。労働条件改善の視点からみると、現状は許容範囲。人余りだと企業は工夫しない。人手不足で一番困るのは企業。中途半端な対応では将来はなく、その真価が問われている。

 労働力確保へ新卒者やUIJターン者などに目が行きがちだが、新人は労働条件が悪ければすぐに辞めていく。中小企業は事業拡大でもない限り、人が辞めないと新たな採用を行わない。そういう意味でまず大切にすべきは現役の社員。中小企業のよいところは、定年など関係なく、元気なうちはずっと働ける点。何十年も働き「Aさんがいないと駄目だ」という“頼られている感”は、人が働き続ける動機になる。

 優秀な人、有能な人が辞めると、単なる戦力ダウンにとどまらず、自社にとって新たなリスクが生じることになる。小さな企業の事業は少額の設備投資で始められるものが多い。定年と同時に会社を立ち上げ、顧客を引き抜いてライバルになる可能性もあるのだ。中小企業は年齢にとらわれず優秀な人を雇い続けるべきだろう。

 -企業がベテラン社員を輝かせるために必要なことは?

 ポイントは三つ。一つは「経営の視点」。50代のうちか、最低でも定年の1年前に本人と話し合いを持つこと。法律上65歳までは会社側に雇用義務があり、賃金も払う。「60、70代になっても働いてほしいから、今後の仕事に必要なこんな資格を取ってほしい」など、「将来のあるべき姿」を先に示すといい。

 誰もが会社にしがみついていると思ったら大間違い。優秀な人は起業を考えているかもしれないし、同業他社へ引き抜かれるかもしれない。そういうリスクを少しでも減らし、社員の家族を安心させるためにも早い話し合いが必要だ。

 二つ目が「法の視点」。65歳までの雇用継続を援助・促進するため、60歳時点と比較して賃金が75パーセント未満に低下した場合に支給される公的な給付金制度(高年齢雇用継続給付)がある。65歳まで年金は支払われないし、仕事内容も変わらないのに、定年で給料が下がれば社員には不満や不信感が生まれる。そもそも定年後の賃金を引き下げなければならないわけではない。実際の働きぶりに合わせて考えればいい。そのためにも事前の話し合いが大切だ。

 最後は「人の気持ちの視点」。例えば2代目社長なら、ベテラン社員とは微妙な関係で苦労も多いだろう。力で抑えつけるより、尊重して重用する方がうまくいく。小さな企業の場合、20年もいてくれたら立派な会社の財産。永年勤続表彰でもいいし、お礼の手紙を書いてもいい。要はコミュニケーションを取り、気持ち良く働いてもらうことだ。

 -再雇用される側の心構えは。

 まず「雇ってもらって当然」という考えを捨てるべきだ。次に自らの“市場価値”を高める努力が必要。

 若い人と仲良くするためにフェイスブックを始めるなど、常に新しいことに挑戦すること。「自分はアナログ人間だから」という言い訳は駄目。会社の求める人材像は日々変わる。昔はパソコンを使える人が重宝されたが、今や当たり前。総務関係なら個人情報保護法の全面適用に向けて、関連の資格を取るなどの努力をしてほしい。

 法律上の義務はあるが、努力しない人を最低賃金で雇っても違法ではない。一番は「会社が手放せない人」になること。それはどんな人かと言えば、資格を持っている、若手の教育ができる、コミュニケーションの取り方が上手、新しいことに臨機応変に対応できる、体が丈夫、人脈があるなどだ。若いときは一従業員でいいが、年齢を重ねると人脈や交渉能力、調整能力が求められる。そのためには本を読んで勉強し、専門学校に通って資格を取ってもいい。

 公的年金制度の先行きは不透明で、自ら老後の備えを考えなければならない時代。現行制度では年金の受給を65歳から70歳まで繰り下げると1.42倍と大幅な増額になる。仕事をしていれば年金をもらう必要はなく、年金は増え、社会にも貢献できる。60代での急な準備は無理。50代になったら老後に輝くため、自分を磨こう。会社が手放せないような人になれれば、魅力のない会社からの転職も可能。投資(努力)は無駄にならない。
(聞き手 経済部・久保野剛)

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