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2018年6月25日(月)
クロストーク

活発な企業誘致 日南市長 﨑田恭平さん

2016/11/11

武器は「スピード感と柔軟性」


 日南市の企業誘致が活発だ。特に県外IT企業の集積が進み、オフィスの並ぶ油津商店街にはにぎわいが復活。全国から視察が相次ぐ。なぜ日南市の企業誘致は次々と成功しているのか。

さきた・きょうへい 2004年県庁入り。西都土木事務所や厚生労働省派遣、医療薬務課などを経て12年8月退職。13年4月に日南市長に初当選。宮崎第一高-九大工学部卒。日南市出身。37歳。

さきた・きょうへい 2004年県庁入り。西都土木事務所や厚生労働省派遣、医療薬務課などを経て12年8月退職。13年4月に日南市長に初当選。宮崎第一高-九大工学部卒。日南市出身。37歳。

 --市長に就任してからの立地企業数は17社。このうち県外IT企業は今年1月の第1号を皮切りに7社も進出している。

 日南市は若者や女性に人気がある「事務職」の求人倍率が低い。だからといって彼らは人手不足に悩む介護や土木の仕事を選ばず、市外へ出て行く。それが人口減少の一因となっている。以前から日南市の強みと企業のリソース(資源)をうまく組み合わせて、地域の課題を解決したいと考えていた。ITは現代の事務職。自治体とIT企業の双方にメリットがある関係を築き、いつかは企業に進出してもらいたいという構想を持っていた。

 企業を引き付けるため、まずは「日南市にはスピード感と柔軟性がある」というブランディングに取り組んだ。情報発信に力を入れ、3年前はまだはしりだった「クラウドファンディング」や「クラウドソーシング」を推進した。他に取り組んでいる自治体がほとんどなく、テレビなどで取り上げられた。するとIT企業から問い合わせが来始めた。

 「クラウド-」に取り組んだのは単純に課題解決のため。アメリカであるギフトショーに特産の飫肥杉の商品を出品しようと、クラウドファンディングで費用を募った。税金を使うと批判もあるからだ。子育て中のお母さんたちの収入を上げるため、企業がインターネット経由で仕事を発注するクラウドソーシングに注目。世帯収入が上がれば2人目、3人目と子どもを産んでもらえるかもしれないと考えた。

 --進出企業はそろって日南市の「スピード感」に驚いている。

 IT企業が重視するのは役所とのコミュニケーション手段。役所へ電子メールを送ったのに担当者が出張中で、開封は2日後だった-という例は少なくない。日南市の場合、フェイスブックの無料通信アプリ「メッセンジャー」を使う。時間や場所を選ばずメッセージを送受信できるから、先方との情報交換が圧倒的に速い。クラウドファンディングなどを通じ、職員は「このスピード感でやらないとIT企業は相手にしてくれない」という“準備運動”がしっかりできていた。だから企業誘致を始めた時にうまく動けた。

 マーケティング専門官の田鹿倫基氏の存在も大きい。民間出身でアンテナの感度がすごくいい。企業の信用度や将来性、社長の人物像などがすぐに分かる。専門官はこちら側の人間。先方の売り込みを、行政がけがをしないようチェックしてくれる。専門官が企業を見いだし、職員が人間関係を築き、最後は私が相手のトップを直接口説く。若い市長で気軽に話せて、価値観を共有しやすいのも強みだと思う。

 --なぜIT企業なのか。

 最初からIT企業を誘致しようと思っていたわけではない。さまざまなデータや求人状況を分析する中で事務職の必要性が見えてきた。地理的に物流拠点となるような企業は呼べないが、ITは場所を選ばない。高速ブロードバンド環境を整備して、過疎地域へのIT企業誘致に成功している徳島県神山町を視察したのも大きかった。若者の受け皿づくりに取り組む中で見えてきたのがITだった。

 --ITは設備投資額が小さく、地元企業との取引や地域経済を潤す効果も限定的。条件次第でよそへ移る可能性もあるのでは。

 市外へ流出するはずだった若者が残って生活しているのだから、経済波及効果が全然ないとは言えない。企業にとって最も重要なのは人材で、その育成にはコストがかかる。日南市では宮崎労働局と雇用対策協定を結んだり、進出企業が職業訓練校に講師を派遣したりして、官民が一体となって人材育成事業に取り組んでいる。お金を積んで来てもらったわけではなく、行政のリアクションの速さや柔軟性を評価してもらっている。企業側も人材確保を第一に進出してきているのだから大丈夫だと思う。

 --雇用創出の第1段階は成功した。次の仕掛けは。

 地場企業の育成支援を考えている。名称は「日南市ローカルベンチャー支援事業」。(1)新規創業を増やす(2)事業承継のマッチング(3)右腕人材育成-が大きな柱だ。首都圏の学生に地方の中小企業での長期インターンシップ(就業体験)を進める制度を活用する。インターン生が事業の重要な役割を果たし、そのまま就職するケースもあるだろう。経営者にとって貴重な右腕になったり、事業承継したりする人がいるかもしれない。地方で挑戦したい人を取り込みたい。近く事務局を立ち上げる。
(聞き手 経済部・久保野剛)

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