「政左経右」の習近平体制

中国共産党の第18期中央委員会第3回総会で演説する習近平国家主席=北京(新華社=共同)
波乱要因をなくすための環境づくりも進められた。重慶市で中国共産党の原点である毛沢東主義に戻ろうという運動を展開しながら、妻の英国人殺害事件に絡んで失脚した薄熙来・元重慶市共産党書記。いまだに支持者の多い薄元書記の上訴は、会議を前に早々と退けられて、無期懲役の判決が確定。党を揺るがした大事件の幕が引かれた。
ところが、会議の開幕直前に反政府的な事件が相次いだ。10月28日にはウイグル族の男らが北京・天安門に車で突入・炎上して死亡した。13億5000万人の中国人口の92%を占める漢民族に対し、ウイグル族は少数の1万1000人。今回の事件はウイグル独立につながる動きであり、ウイグルやチベット、台湾の「独立阻止」を絶対譲ることができない「核心的利益」とする中国政府への挑戦でもあった。
11月6日には、山東省太原市の共産党委員会ビル周辺で連続爆発事件が起こり、会議の開幕前日に容疑者が逮捕された。犯行動機は「社会への報復」とされるが、背景には中国の土地収用の実態がある。土地の私有が認められていない中国では、地方政府が農民の土地を簡単に取りあげ、高値で転売する手法が横行している。今回の事件も、土地を奪われた容疑者の強い抗議行動だったともいわれる。
会議開幕日の11月9日には、薄元書記の支持者が政党の設立を宣言した。政党設立が国家政権転覆罪に問われる中国で、「中国至憲党」を名乗る政党は元書記を「終身主席」とする。実態はともかく、「共に豊かになろう」という毛沢東主義を掲げて、保守派(左派)を支持。「先に豊かになれるところから豊かに」という「先富論」の鄧小平路線を推進する改革派(右派)に反対している。
「改革開放」路線への転換と「社会主義市場経済」の採用で、いまや世界第2位の経済大国になった中国。2008年のリーマンショックの際も、4兆元〈64兆円〉にのぼる大型景気対策で経済成長のV字回復を実現した。だが、それは生産過剰、環境破壊、不動産バブル、シャドーバンキング(影の銀行)の蔓延という副作用をもたらした。
中国社会のひずみが広がり、都市と農村、貧富の格差は拡大、汚職がはびこる。国民の間に共産党への不満が渦巻いており、それを力で抑え込もうという1党独裁の支配体制は、綻びを隠し切れなくなってきた。習指導部は経済改革で高成長を持続させ、その果実を分配することで国内の不満を和らげようとしている。
3中全会のコミュニケでは「改革の全面深化に向けた新しい歴史の出発点にしよう」と、59回も「改革」に言及。「経済資源の配分で市場に決定的な役割を果たさせる」と、これまでより踏み込んだ表現で、市場重視の改革を進める方針を示した。金利を自由化し、自由貿易区をふやすとしているが、「国有企業中心」というこれまでの方針は変えなかった。
経済で改革を進める一方で、政治では保守的な統制を強める。コミュニケによると、「社会矛盾の発生を有効に予防し、国家の安全を確保するため」、国家安全員会を新設することが決まった。地方の党幹部が司法に介入するのを防ぐ司法改革も盛り込まれたが、民主化につながる政治改革には踏み込まなかった。
総書記に就任以来、かつての栄光ある「中華民族の偉大な復興」という夢を実現しようとする習近平氏。経済では現実路線を進めながら、政治ではあくまで原則的な立場を崩そうとしない。国内では経済成長で不満を和らげ、統制強化で不満を抑え込む。愛国心を高揚し、国外に不満のはけ口を求める。東シナ海や南シナ海も「核心的利益」に加えており、日本や東南アジア各国との領土問題の解決はますます遠のくばかりだ。












