みやビズ

2017年3月27日(月)
記者コラム / 巣山貴行

JR一部「ワンマン化」に思う

2017/02/17
 夏休みや冬休みになると、当時国鉄だった宮崎駅から列車に乗り、祖父の待つ日向駅まで1人で行くことが楽しみだった。就学前ながら宮崎-日向間の駅名をすべて覚えており、車掌が停車駅をアナウンスする前に車掌風のアナウンスを披露するほどのマニアだった。

特急の一部が「ワンマン化」するJR日豊線の宮崎駅

特急の一部が「ワンマン化」するJR日豊線の宮崎駅

 何度も思い出すのが寝台特急「富士」に乗った時のことだ。寝台の客車には降り口が1カ所しかない造りだったため、日向駅を乗り過ごしてしまった。原因は宿題だった算数のドリルをリュックサックに詰めるのに手間取ったことだったとしっかり覚えている。

 締まったドア越しに改札の外で待つ祖父の姿が見えた。列車は走り出し、どんどん加速していった。ついに涙がこぼれたところで、ほかの乗客が車掌を呼んでくれた。車掌は日向駅と連絡を取ってくれて、そこにいた祖父に次の停車駅の延岡駅に来るように伝えてくれた。さらには、同駅で降りるという旭化成社員の男性が「一緒に降りよう」と声を掛けてくれて、当時宮崎市に出店したばかりのミスタードーナツの土産袋を開けて食べさせてくれた。

 同駅で無事降ろしてもらい、祖父と涙の再会を果たしたが、楽しみにしていた花火大会には間に合わなかった。しかし、車掌が手際よく連絡してくれたことや不安をぬぐってくれた男性への感謝の気持ちは30年以上たったいまもずっと熱いまま胸に残っている。

 さて、3月からJR九州は県内日豊線の特急の一部で「ワンマン運転」を実施する。乗客の乗降は運転士が1人で目視し、目が届かない場所はモニターやカメラで確認するという。車内には防犯カメラも設置する。同社は赤字路線の効率化の中で最大限の手厚い対応をしたのだと思う。

 しかし、幼いころの記者が体験したような人との触れ合いやドラマはもう起こらないだろう。それに大人になったいま、防犯カメラに終始見守られて過ごすのはどうも居心地が悪い。1997年に富士は本県路線から消え、2014年9月には特急の車内販売もなくなった。投入されている列車の古さらから、本県路線は一部で「列車の墓場」と呼ばれているらしい。

 「利用が少ないから効率化するしかない」とか「利便性が低いから利用しない」とか、立場によって意見はいろいろある。同社も株式上場でより高い採算性を求めるべき立場になった。感情は抜きにして、県内鉄道の将来は相当厳しいことだけは確かなようだ。
(巣山貴行)

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