みやビズ

2017年7月22日(土)
記者コラム / 佐藤友彦

職人の技 後進に継承を

2017/05/19
 「延岡ではできなかった、て言われたくなくてね」。精密機械加工を手掛けるタカオ製作所(延岡市)の石黒隆夫社長(63)の言葉からは、ものづくりに懸ける情熱と技術に裏打ちされたプライドが伝わってきた。
タカオ製作所が生産を復活させた耳用外科手術器具「ギャラハー氏開創器」

タカオ製作所が生産を復活させた耳用外科手術器具「ギャラハー氏開創器」

 「延岡ではできなかった、て言われたくなくてね」。精密機械加工を手掛けるタカオ製作所(延岡市)の石黒隆夫社長(63)の言葉からは、ものづくりに懸ける情熱と技術に裏打ちされたプライドが伝わってきた。

 同社は医療機器製造販売の第一医科(東京)の注文で、技術継承できず県外で生産が途絶えていた耳用外科手術器具を復活させた。ものづくりを中心に発展してきた工業都市・延岡。その面目躍如ともいえる成果だ。小さな工場から医療を支える製品が生み出されるまでのドラマを聞き、思わず胸が熱くなった。

 一方、この依頼がタカオ製作所に寄せられた経緯を聞いて、職人の技術継承の課題も透けて見えた。生産が一時途絶えた理由は、もともと製作していた職人の高齢化が発端。専門医療機器は需要が小口で生産ロットが少ないことから、金型を起こしての大量生産とはいかず、職人の手仕事に頼るところが大きい。ベテラン職人から若手へと技術が伝わらなければ、生産もそこで止まるのだ。

 数値制御の工作機械やデジタル技術の発達で、以前とは比較にならないレベルで、精密な作業ができるようになった。しかし、石黒社長に言わせると「機械を操作するだけならオペレーター。誰でもできる」。機械加工では感覚に頼る面が必ずあり、それを磨くために経験を積み、金属の性質を知り尽くす必要があるという。

 そうした技術力のある人材育成には、まず担い手確保が不可欠。だが、県内の有効求人倍率は高い水準が続き、多くの業界で人材争奪が始まっており、それは今後も続く。「現場で汗をかき、技術を磨いた人が相応の評価を受ける仕組みを作らないと、若い人はこの業界に入ってこない」。ものづくりの行く末を危惧する石黒社長の言葉が重く響いた。
(佐藤友彦)

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