みやビズ

2017年11月22日(水)
記者コラム / 小川祐司

信金合併に思う

2017/03/31
10年ほど前、高鍋支局に赴任して間もない頃、高鍋信用金庫の不祥事が発覚した。その前から不祥事が続いていたので「さすがに混乱が起きるかもしれない」と考え、本店の様子を見に行った。出てきた客をつかまえ、「高信さんは不祥事が続いていますが、取引を見直そうとは思わないですか」と尋ねると、「考えたこともない。高信さんは地元に貢献しているから当然でしょ」という答えが返ってきた。新鮮な驚きを覚えながら、念のために3人ほど続けて同じ質問をしたが、答えは似たり寄ったりだった。
大勢の報道陣が集まった宮崎信用金庫と都城信用金庫の合併に関する記者会見=3月17日午後、宮崎市

大勢の報道陣が集まった宮崎信用金庫と都城信用金庫の合併に関する記者会見=3月17日午後、宮崎市

 10年ほど前、高鍋支局に赴任して間もない頃、高鍋信用金庫の不祥事が発覚した。その前から不祥事が続いていたので「さすがに混乱が起きるかもしれない」と考え、本店の様子を見に行った。出てきた客をつかまえ、「高信さんは不祥事が続いていますが、取引を見直そうとは思わないですか」と尋ねると、「考えたこともない。高信さんは地元に貢献しているから当然でしょ」という答えが返ってきた。新鮮な驚きを覚えながら、念のために3人ほど続けて同じ質問をしたが、答えは似たり寄ったりだった。

 この一件で、地域もしくは地域経済における信金の立ち位置を知った気がする。あれから約10年、金融機関、とりわけ信金の経営環境は厳しさを増した。そして3月17日、宮崎信金と都城信金が来年1月の合併に向けて基本合意したと発表した。

 人口減少や低金利、地銀間の競争激化を背景に、県内では地銀が収益性の低下を貸し出しボリュームで補おうと信金の領域を侵食している。地銀がかつては目を向けなかった規模の事業所や、信金が大事に育てた取引先、地縁を生かした住宅ローンなどが奪われており、信金と地銀との境界線が消えつつある。

 県内5信金のうち規模的には宮崎信金は2番手、都城信金は5番手。合併後の自己資本比率は7.98パーセントで、残る3金庫は2桁だ。合わせた職員数は186人で、店舗数は20。合併後も職員数、店舗数は維持するという。こうした事実を前に、部外者の記者にはどのような合併効果が導き出されるのか想像できず、その行方を注目している。

 先述したように、信金と地銀の境界が薄れている。そんな状況にあって、つい頭に浮かぶのは「信金は本当に必要なのだろうか」という大変失礼な疑問だ。一方で、「そんなことはない。信金にしかできない貢献があるはずだ」と高鍋信金のことを思い出す。

 地銀と同じセールスポイントで競っても仕方がない。問われるのは、地元活性化への強い使命感の下、小回りの利くサービスなど「信金ならでは」をいくつ持てるかだ。例えば、同じソリューション営業でも、長い付き合いの中でその企業の文化やストロングポイントの成り立ちを知り、経営者の思いを深く理解した上での提案は金利や手数料に勝る価値を持つはず。そうした強みの発揮、それを可能にする人材育成などが大事になる。今回間違いなく期待できる合併効果とは、「信金ならでは」を突き詰め、磨きを掛ける時間的猶予や人的余裕を得たことではないだろうか。

(小川祐司)

アクセスランキング

ピックアップ