創業支援 松井斎さん(日本政策金融公庫宮崎支店長兼国民生活事業統轄)
連携強化でサポート充実を

まつい・ひとし 1989年、国民金融公庫(現日本政策金融公庫国民生活事業)に入庫。初任地は宮崎支店。伊勢支店長などを経て2016年4月から現職。熊本県荒尾市出身、51歳
日本公庫が2015年度に実施した創業支援融資は、全国で約2万6000社に上り、過去10年間で最多となった。日本公庫総合研究所の新規開業実態調査によると、創業時における平均従業員数は3.6人。大多数は創業者だけか2人程度だが、単純に約9万5000人の雇用が生まれた計算となる。創業がいかに地域の活性化に大きな役割を果たしているか分かるだろう。
創業意欲はあるが、思いとどまらせる理由はさまざまだ。最大のものが自己資金不足。十分な運転資金が手元にないと、事業を回していけるか不安になるのは当然だ。事業に失敗した時のリスクや、十分な収入を見込めないなどといったものもある。
新規創業の企業は、事業実績や財務データがなく、金融機関との取引実績もない。信用情報も得られず、金融機関にとって融資の是非を判断するのが難しい。しかし、経営者としての能力やビジネスプランの的確性に重点を置き、地域の未来へ投資するという意味でも融資していく姿勢は必要だ。
宮崎に赴任して間もなく半年。行政や商工会議所といった公的機関だけでなく、ベンチャー企業家などがつくる「宮崎スタートアップバレー」や、宮崎市役所職員らでつくる「ミヤザキベースキャンプ」など民間団体も創業支援を熱心に行っている。人口減に対する危機感や、創業の機運の高まりをチャンスととらえているのだろう。他にはない一体的な取り組みに期待している。
日本公庫も宮崎市をはじめとする5市と創業支援ネットワークを構築している。例えば宮崎市の場合、宮崎商工会議所や市内の5商工会、県産業振興機構などと連携。これまで創業相談や助成・融資や販路開拓などをそれぞれ行っていたのを、ワンストップで対応できるようにした。創業したいが「最初にどこへ何を相談していいか分からない」という人は多く、専門機関へスムーズにつないでいる。
このようなネットワークは構築して終わりではいけない。創業を考えている人にあまり知られていないだけに、いかに連携を強化し活性化させられるかが鍵。新たなチャレンジに向けて一歩踏み出した人を地域が一丸となってサポートし、新たな風を宮崎に吹かせてほしい。
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