みやビズ

2019年8月21日(水)
アナライズ

「こだま」の効果 宮交ホールディングス社長 菊池克頼さん

2016/09/16

本県を「あいさつ県」に

きくち・かつより 1974(昭和49)年、全日本空輸入社。上席執行役員東京支店長、スカイビルサービス社長などを経て2012年6月から現職。宮崎市観光協会会長も務める。西都市出身。

きくち・かつより 1974(昭和49)年、全日本空輸入社。上席執行役員東京支店長、スカイビルサービス社長などを経て2012年6月から現職。宮崎市観光協会会長も務める。西都市出身。

 この夏、西米良村の「やまびこ花火大会」を初めて観賞した。ことしで43回目となる村民総出の夏祭りで、県内外から約1万人以上が訪れる村の一大イベントだ。九州山地の中心部に位置する同村は、面積の約96パーセントが山林。祭り会場は村内を流れる一ツ瀬川の河川敷で、観客は山に囲まれた河原に寝転んで花火を見る。市街地の花火大会と異なるのは「ドン」という大音響が山肌にこだまし、胸のあたりに「ズシン」と返ってきて、美しい余韻を残す点だ。

 人口約1200人の西米良村は、人口減少や過疎化に対してさまざまな取り組みを行い、中山間地域活性化のモデルとして多方面から注目を集めている。

 例えば、自立した集落経営モデル事業の「おがわ作小屋村」では、地元のおばちゃん(おばあちゃん)たちが、集落内で生産した季節の食材を使って「四季御膳」を作り、提供している。また、総務省が地方移住促進へ本年度から本格的に取り組む国内版「ワーキングホリデー」制度を、全国に先駆けて1998年にスタート。参加者は村内の農家でユズやホオズキ、カラーピーマンの栽培や収穫を手伝う。

 1950年代に人口のピークを迎え、その後は地域活性化や定住促進、子育て支援に地道に取り組んできた成果だろう。95年の予測で、村の人口は2010年に700人ほどになると言われていた。それが村のホームページによると、ことし8月末で1210人となっている。

 黒木定蔵村長は「生涯現役で社会に参加し、村民自身が楽しむことが重要」と話す。都市部に住む多くの人間は、少子高齢化や人口減少社会の課題について、これまであまり意識してこなかったが、西米良村の取り組みに学ぶ点は多い。

 村内を歩いていると、見知らぬ私にも小中学生が大きな声で「こんにちは」とあいさつしてくれる。車で移動していても会釈してくれる。ワーキングホリデーで来村した人もおそらく驚いただろう。

 西米良中学校は「あいさつ日本一」運動を実施しているという。「日本一」とは目標やゴールではなく、徹底してやるということだと思う。村のさまざまな取り組みが脚光を浴びているが、実はこれらの取り組みを支えるこのような「風土づくり」にも目を凝らす必要がある。

 本県へ帰郷した5年前、何度も感心したことがある。それは訪問先の企業で社員の方々が一斉に仕事の手を休め、起立し、大きな声で「いらっしゃいませ」と頭を下げることが多かったのだ。東京ではオフィスと応接室が独立しているところが多く、このような対応をする会社は少ない。県内には西米良村以外でも小中学生が元気にあいさつしてくれる地域はあるが、西米良村を訪れて、あらためてコミュニケーションの糸口となる「あいさつ」の大切さを再認識した。

 本県では「未来みやざき創造プラン」と題して、時代の潮流に挑戦し、課題解決のためのさまざまな政策が実行されている。そこで提案だが、これらの取り組みを支える風土づくりとして、全県的なあいさつ運動を実施し、県外に発信してはどうだろう。本県の強みである「ホスピタリティー」を生かすことになり、観光のリピーター確保にもつながるのではないか。

 渓谷に響いた花火の音と同じように、西米良の中学生たちの元気なあいさつは私の胸にこだまし、すがすがしさを与えてくれた。彼らはやがて高校生となり、村を離れるだろう。その時、どこに暮らしても照れずにあいさつができる宮崎県をつくれたらと思う。

アクセスランキング

ピックアップ