みやビズ

2019年10月15日(火)
アナライズ

内部留保課税 久島満洋さん(山田FAS取締役)

2016/09/02
久島満洋さん(山田FAS取締役)「内部留保課税」

裏舞台にヘッジファンドあり


きゅうしま・みつひろ 1974(昭和49)年1月、宮崎市生まれ。宮崎西高から一橋大卒。宮崎銀行を経て2007年に山田FAS取締役就任。公認会計士

きゅうしま・みつひろ 1974(昭和49)年1月、宮崎市生まれ。宮崎西高から一橋大卒。宮崎銀行を経て2007年に山田FAS取締役就任。公認会計士

 財務省が企業の内部留保への課税を検討している。2016年度の与党税制改正大綱にある「企業の意識や行動を変革していく方策も検討を行う」という文章が、この案を指しているとのことだ。内部留保への課税により、設備投資や賃上げを促すことが狙いだというが、果たして本当に実効性があるのだろうか。

 アベノミクスは、減税して企業に稼いでもらう代わりに設備投資や賃上げをしてもらい、景気をよくしようという考えがベースだ。だから法人税の実効税率をアベノミクス前の39.54パーセントから29.97パーセントまで引き下げた。しかし16年4~6月期の設備投資は1~3月期に比べ0.4パーセント減、名目雇用者報酬も前期比0.1パーセント増(どちらも1次速報値)とほぼ変わらない。一方、企業の内部留保は約350兆円となり過去最高水準。内部留保とは企業の稼いだ利益がたまったものなので、財務省は「企業は利益をため込んでばかりでけしからん」と考えているのだろう。だが、内部留保への課税が打開策となるのだろうか。

 まず、設備投資の中身だが、統計には表れない投資があることを理解しておきたい。統計でカウントされる設備投資とは、土地や工場、機械、ソフトウエアなどへの投資。企業はそれ以外に企業の合併・買収(M&A)や海外進出に投資しており、それはかなりの額に上る。

 次に、内部留保の意義について考えよう。内部留保は、株主への配当原資でもあるが、大きな損が生じたときにも事業を安定的に継続するために欠くことができない。08年のリーマンショック以降、経済の不安定さが増したと感じている経営者は多い。そのため内部留保を以前より大きくしたいと考えており、従業員にとっても一定の内部留保は雇用の維持安定のために必要なことだ。

 ところで内部留保は赤字決算の場合、配当や自社株買いをしない限り、基本的には減らない。設備投資をしても資産上、現金が機械や工場に置き換わるだけで損が出るわけではない。このため設備投資をする、しないは、内部留保に直接影響を与えない。それから賃上げは費用、すなわち損になることだから、賃上げをすれば確かに内部留保は減りそうなものだが、企業は赤字になるほど賃上げをするわけがない。つまり内部留保は設備投資や賃上げに直接的な関連はないのだ。

 では、内部留保への課税を導入したい本当の理由を解説したい。実は課税を政権幹部に提案したのは海外の大手ヘッジファンドの幹部だという。前述した通り、内部留保を減らす手段は配当や自社株買いだ。大手ヘッジファンドは、課税を導入すれば、企業が税金を支払うこと嫌がり配当や自社株買いを増やすことを期待している。そうすると株価が上がるため、そのタイミングで株を売ってもうけることを狙っているのではないか。

 行き過ぎた内部留保は問題だと思うが、本当の理由を知らずに課税の導入を検討すべきではないだろう。企業の利益をどのように配分すべきか議論して決めるべきではないか。

アクセスランキング

ピックアップ