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アナライズ

若者はなぜ出て行くのか 水永正憲さん(日向市キャリア教育支援センター長)

2016/08/19
水永正憲さん(日向市キャリア教育支援センター長)「失敗を恐れない学校教育を」

産業人材育成に力を入れて


みずなが・まさのり 1949(昭和24)年2月、都農町生まれ。高鍋高から九州大卒。元旭化成延岡支社長で、現在は日向市キャリア教育支援センター長。

みずなが・まさのり 1949(昭和24)年2月、都農町生まれ。高鍋高から九州大卒。元旭化成延岡支社長で、現在は日向市キャリア教育支援センター長。

 8月5日の宮崎日日新聞にショッキングな記事が載った。文部科学省が公表した学校基本調査(速報値)で、今春卒業した本県高校生の県内就職率は54.8パーセントにとどまり、前年度に続き全国最下位だったという。若者の流出は地方の活力を低下させる看過できない課題だ。早急に対策が必要だが、まずはなぜ若者が出て行くのか、考えなければならない。

 一つは、若者が「地方はつまらない」と感じていることに関係していると思う。なぜつまらないのか。考えられる理由がいくつかあるが、ある人は「偶然の出会いがないから」だと言う。都会に行けば出会いがあるというのも幻想ではあるのだが、出会いに対する期待が都会への憧れになっていることは確かだろう。

 高校や大学を卒業した後、都会に出ることは悪いことではない。武者修行になるし、都会の現実を知り、翻って宮崎を離れた目で見ることも良い経験となる。ただ、その経験をもとに宮崎に帰ってきてほしいと思う。若者たちが「戻ってきたい」「宮崎で頑張りたい」と思えるようにするためには、宮崎を魅力的で面白い、“つまらなくない街”にしなければならない。

 地方における面白いまちづくりの好例がある。それがアートによるまちづくりで、温泉で有名な兵庫県豊岡市の城之崎では、古い建物を改築してアートセンターをつくり、演劇などをつくる人たちに無料で開放している。演出家や役者、舞台の制作者たちが世界中から集まり、地元の人たちと交流する。いろんな人が集まることで、若者が求める「出会いの場」ができる。こうした例は地方ではまだまだ少ないが、アートという“旗印”のもと、拠点をつくって継続的に取り組むというやり方は、若者にとって刺激的で魅力的なまちづくりにつながると思う。

 なぜ若者は宮崎から出て行くのか。もう一つは「仕事がない」からに他ならない。有効求人倍率は1倍を超えているが、若者は「自分がやりたい仕事がない」という。“雇用の質”がいま問われている。

 企業には、若者にとって魅力的な水準に賃金を上げるため生産革新に取り組み、生産性を飛躍的に向上させることと、働きがいのある職場づくりを進めることが求められている。ただ一方で、最低賃金だけを都会と比較するのでなく、物価や住宅費など実質生計費を反映した可処分所得ベースの水準を、若者たちにもっと分かりやすく伝えることも重要だ。根拠となる係数などを小中学生の頃から目に見える形で伝えることで、「県外の大学に行っても宮崎に帰ってこよう」と思う若者も増えるのではないか。

 学校ではふるさと教育が盛んに行われている。しかし、内容をよく見ると「自然」「文化」「歴史」がほとんどである。しかし、ふるさとで生きていきたいという若者を育てるためには、教育に「産業」と「暮らし」という視点が欠けている。産業とは「雇用」と「仕事」であり、暮らしとは「生活」だ。この産業に関して、地元企業の魅力を経営者が伝えていない。暮らしに関して、地域の大人たちがそこで暮らすことの魅力を伝えていない。

 魅力を伝えることは実は難しい。例えば人を「けなす」「悪口を言う」ことはたやすい。人を「褒める」ことも何とかできる。しかし、自分の魅力を語ることは難しい。気恥ずかしいし、自慢話はすべきではないと思ってしまう。謙虚な宮崎の県民性も影響しているのかもしれない。そこで、自分の仕事と暮らしの魅力を語ることは可能ではないだろうか。「この仕事はこんな楽しさがある」「このまちで暮らすのはこんなに楽しいんだ」といったことを小中学生の頃から伝えることでふるさとへの愛着が芽生えていくに違いないと思う。

 いま行政の商工労働部門が取り組む若者流出抑制のための施策は、ほとんどが高校生、大学生と企業のマッチングだ。「求人情報をもっと早く出そう」とか「インターンシップの期間をもっと長くしよう」というものがほとんどで、それも就職を間近に控えた期間に集中している。そうではなく、小中学生にまで対象を広げた、地元企業や地域の暮らしの魅力を伝える施策が必要なのに、実際の教育現場では「自然」「文化」「歴史」の魅力しか伝えきれていない。商工労働部門とか教育現場という垣根を越え、「産業人材育成」という視点に立った中長期的な施策に今こそ取り組むべきだと思う。

 若者がもっと宮崎で働きたいと思うようにするためには「まちの新たな魅力づくり」と「ふるさとの企業や暮らしの魅力を伝える」ことが必要だ。これこそ、宮崎の大人たちがやるべきことだと思う。魅力を話すことは決して自慢ではない。大人たちが寄ってたかって若者たちに魅力を伝えることができれば、宮崎の未来に明るい展望が開けてくると思う。


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