みやビズ

2019年11月12日(火)
アナライズ

実はアナログが大事 辻利則さん(宮崎公立大学人文学部教授)

2016/08/12
宮崎公立大学人文学部教授 辻利則さん「実はアナログが大事」

人の心育てる教育を


つじ・としのり 1993年、宮崎公立大学助手。講師、准教授を経て2008年から同大学教授。1999年宮崎大学大学院工学研究科博士後期課程修了。工学博士。専門は情報科学と災害情報。えびの市出身。

つじ・としのり 1993年、宮崎公立大学助手。講師、准教授を経て2008年から同大学教授。1999年宮崎大学大学院工学研究科博士後期課程修了。工学博士。専門は情報科学と災害情報。えびの市出身。

 文部科学省の有識者会議が6月、小学校段階におけるプログラミング教育のあり方について議論をまとめた。導入の狙いを一部紹介すると、こうある。

 「これからの時代を生きていく子供たちには、ますます身近となる情報技術を効果的に活用しながら、複雑な文脈の中から読み解いた情報を基に論理的・創造的に考え、解決すべき課題や解決の方向性を自ら見いだし、多様な他者と協働して新たな価値を創造していくための力が求められる」

 つまり、小学生のコンピューターや各種メディアに対する情報リテラシーを向上させ、情報化社会に対応できる人材やイノベーション(技術革新)の担い手を育てようということだ。

 よい考えだとは思うが、実際に導入されれば誤解も生むだろう。例えば「小さいうちにプログラミング言語を覚えないと、子供が将来苦労する」といった保護者心理を過熱させる可能性がある。その例が英語。昔から「マスターすれば、これからの国際社会で困らない」とよく言われたものだ。

 本当にそうだろうか。宮崎公立大で英語を教えている私の同僚は「国語(母国語)以上に英語(第2外国語)は上達しない」と断言する。必要なのはしっかりした思考力や理解力、コミュニケーション力。言い換えれば、英単語をいくつ覚えても、実際に話したり、書いたりできなければ、その価値は半減する。

 基礎部分が足りず、英語は「難しい」「覚えられない」という負のスパイラルに落ちた人も多いのでは。まず鍛えるべきは国語や数学といった基礎学力。さらには、さまざまな体験とコミュニケーション能力だ。

 朝日が美しいと感動する心。野山を駆け回った思い出。草花や動物とふれ合って得る予想外の感覚や記憶。多感な時期のさまざまな体験は人の感性を豊かにする。同時に人はそれを他者に伝えたい、共有したいと考える。

 ポケモンGOを含めLINE(ライン)、フェイスブック、ツイッターなど、世界的なイノベーションの根元にあるのはコミュニケーション。部屋に閉じこもり、社会体験の乏しい人からは生まれてこない発想だ。

 一斉にプログラミング教育を始めると、おちこぼれを生む可能性や指導する教師への負担増も心配。小学校では基礎学力の習得や、心を育てる教育に専念する方がいいのではないかと思う。

アクセスランキング

ピックアップ